判例検索β > 昭和36年(ツ)第28号
土地所有権確認請求事件
事件番号昭和36(ツ)28
事件名土地所有権確認請求事件
裁判年月日昭和37年5月22日
法廷名高松高等裁判所
判例集等巻・号・頁第15巻3号214頁
判示事項新民法附則第二五条第二項による相続人が応急措置法施行前に死亡した場合におけるその相続の準拠法
裁判要旨新民法附則第二五条第二項による相続人が応急措置法施行前に死亡した場合には、その相続については旧民法を適用すべきである。
裁判日:西暦1962-05-22
情報公開日2017-10-18 03:32:14
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主 文
本件上告を棄却する
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人提出の本件上告理由は別紙記載のとおりである。
原審が確定した事実によると、本件土地(高知県高岡郡a町b字cd番e、山林一反歩)は、もと訴外Aの所有であつたこと、Aは大正一〇年五月一四日死亡し、その家督相続が開始されたが、法定又は指定の家督相続人がなく、新民法(昭和二二年法律第二二二号)施行時まで家督相続人の選定もなされなかつたこと、A死亡の時には、新民法の規定に基づいて遺産相続人たり得るものは同訴外人の弟訴外Bのみでその他に存在しなかつたこと、右Bも昭和六年六月一二日に死亡し、同訴外人の長男訴外CがBの家督相続をしたというのである。
右の場合、Aの相続については民法附則第二五条第二項本文を適用すべき場合であるが、このように新民法施行前に二個の相続が開始し、前の相続について民法附則第二五条第二項により新法の規定を適用する場合に、その相続に関する後の相続についても同様に新法を適用すべきか(以下新法説という)或は同条第一項に従い旧法を適用すべきであるか(以下旧法説という)の点は一応問題の存するところである。
<要旨>しかしながら、民法附則第二五条第二項の文理上からは、直ちに同項が右新法説のような趣旨の規定と解することはできず、むしろ、同項で規定するその相続に限り新法を適用するものと解するのが自然である。かつ、同条第一項が同附則第四条に規定する新法遡及の一般原則を排除し、応急措置法(昭和二二年法律第七四号)施行前に開始された相続については新法不遡及の原則を規定し、第二項において右相続に関する特例について更に例外の場合を規定しているのであり、以上のような諸規定の趣旨からすれば、応急措置法施行前に開始された相続については、原則として旧法を適用することにより既に開始された相続の状態を尊重し、ただ例外的に応急措置法施行前に開始した家督相続で、家督相続人を選定しなければならないのにこれを選定しないまま新法が施行された場合においては、あらためて旧法に従つて家督相続人を選定する手続をとることなく、その相続に関しては新法の規定に従い遺産相続として処理し、もつて家督相続制度の廃止にともなう過渡期の混乱を防止しようとの趣旨に出たものであつて、同条第二項の相続に関してのみその相続開始原因発生当時にあたかも新法が施行されていたと同様に取扱うことにして処理しようとしたに過ぎないものと解せられる。
新法説は、相続に関して家督相続を廃止し、遺産相続のみとした新法の精神に適合するようにも考えられるが、たまたま前の相続について新法を適用すべき場合であるからといつて、それに続く後の相続についてまでも、法律の規定を拡張解釈して附則第二五条第一項の相続についての新法不遡及の原則の例外を作り出すことは必ずしも適当とはいえず、又、右新法説に従つて、本件のような場合を律すると、Bの死亡に因る被相続財産のうち、B個有の財産についてはCが家督相続により全部承継し、BがAから相続した財産についてはCは他の相続人と共同相続をするという結果になり、包括承継たる相続の性質にそわない不合理を招くことになる。 これを要するに前の相続については、その相続開始原因発生時を基準として新法に従つて相続人を定め、従つて相続開始当時には生存していたが新法施行当時には既に死亡していた者もその当時相続したこととなり、その相続人に対する相続(後の相続)については更に同条第一項第二項の場合に分つて相続人を定めればよいわけである。
本件の場合においては、Aに対する相続については民法附則第二五条第二項本文の規定を適用し、新民法第八八九条第一項第二号の相続人であるBがAの遺産である本件土地を相続により取得し、Bの死亡による相続については附則第二五条第一項によりCが家督相続により本件土地を取得したものというべきである。 なお、所論は民法附則第二五条第二項の規定は、新民法により生じた新しい事態を規定するもので、新法施行の昭和二三年一月一日という時期を区切り、同項で規定するような相続について旧法時に発生していた相続開始事由がその時に発生した場合と考え、その相続については総て新法を適用すべきで、本件土地の相続については総て新法を適用すべきであるというが、相続は相続開始原因の発生より直ちに開始されるものであつて、その時に被相続人に属する権利義務が一切相続人に承継されるものというべきである。この場合、何人が相続人として被相続人の権利義務を承継するかは法律の規定に従うべきで、民法附則第二五条第二項はこの相続人の
定め方を規定したもので、所論のように相続開始原因の発生時そのものを前後しようとする規定であるとは到底解することはできない。所論は採用の限りでない。 以上説示のとおりであつて、原判決には何ら所論のような違法な点はないから、民事訴訟法第四〇一条第九五条第八九条に従い、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官 渡辺進 裁判官 水上東作 裁判官 石井玄)
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