判例検索β > 昭和26年(う)第875号
強要被告事件
事件番号昭和26(う)875
事件名強要被告事件
裁判年月日昭和27年1月26日
法廷名札幌高等裁判所
結果破棄自判
判例集等巻・号・頁第5巻1号31頁
判示事項強要罪における脅迫
裁判要旨強要罪における脅迫の内容は、人をして畏怖の念を生ぜしめる程度に具体的であれば足りるのであつて、「お前を罪におとしてやる」というのは、その意味において、人を畏怖させるに足る具体的事実である。
裁判日:西暦1952-01-26
情報公開日2017-10-13 02:00:28
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主 文
原判決を破棄する
被告人を懲役六月に処する
但し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。 原審における訴訟費用は、被告人の負担とする。
理 由
弁護人板井一治、同竹原五郎三の控訴趣意は、各その作成名義の控訴趣意書に記載したとおりで、これに対する判断は次のとおりである。
(一) 弁護人板井一治の控訴趣意第一乃至第三点について。
<要旨>原判示

云々、お前を罪におとしてやる。

旨の告知は、被害者の身体、自由、名誉又は財産に対し為されたものであるから、刑法第二百二十三条第一項所定の害悪告知の対象と符合するばかりでなく、刑罰は一般に人の恐るるところで、特に裁判検察の実情に通じていない者に対して、原判決摘示のような事実を告知するのは一般的に見て、人をして畏怖の念を生ぜしむるに足り、これを以て害悪の告知というに妨げなく、又強要罪における脅迫の内容は、人をして畏怖の念を生ぜしむる程度に具体的であれば足りるのであつて

云々お前を罪におとしてやる。

というのはかかる意味において、人を畏怖させるに足る具体的事実であるといわねばならないから、論旨はいずれも採容に由ない。
(二) 同第四点及び弁護人竹原五郎三の控訴趣意一について。 なるほど、控訴趣意書摘録の証人Aの供述記載によるとB方で、右Aが被告人と会つてから、被告人方で本件嘆願書を認めるまでには、所論の時間を要していることが認められるけれども、原審第三回公判調書中証人Aの供述記載及び同人に対する証人尋問調書の供述記載によると、右Aは右B方で、被告人から原判示のように脅迫を受け、被告人の要求によつて嘆願書を認める決意をして、被告人のいうとおり被告人方へ行つて、被告人の書いた原稿を見てそれを書いたもので、その時まで右脅迫状態は継続していたことが認められるから、右嘆願書は被告人の脅迫によつて作成したものといわざるを得ない。各論旨も理由がない。
(三) 弁護人板井一治の控訴趣意第五点について。
しかし、Aの検察官に対する供述調書は、その記載を閲すると、その書面の作成された時の情況を考え、相当と認められるので、これを証拠とすることができるわけで、これに基いて事実を認定しても何ら違法のかどはなく、論旨も理由がない。 (四) 同第六点及び弁護人竹原五郎三の控訴趣意二について。 訴訟記録及び原審で取り調べた証拠によつて認めらるる被告人の経歴、本件犯行の態様、被害の程度、その他諸般の事情を綜合して考えると、原判決の量刑は重きに過ぎ不当と思料されるので論旨はいずれも理由があり、原判決は破棄したければならない。
よつて、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十一条により、原判決を破棄し、同法第四百条但し書に従い被告事件について更に判決する。
原判決の不当な点は、刑の量定だけであるから、原判決が確定した事実に法律を適用すると、被告人の原判示所為は、刑法第二百二十三条第一項に該当するので、定められた刑期範囲内で被告人を懲役六月に処し、情状刑の執行を猶予するを相当と認め、同法第二十五条により、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予するものとし、原審における訴訟費用の負担につき、刑事訴訟法第百八十一条第一項を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長判事 藤田和夫 判事 西田賢次郎 判事 長友文士)
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