判例検索β > 昭和25年(ラ)第306号
登記期間懈怠事件の決定に対する抗告事件
事件番号昭和25(ラ)306
事件名登記期間懈怠事件の決定に対する抗告事件
裁判年月日昭和26年5月31日
法廷名東京高等裁判所
判例集等巻・号・頁第4巻10号331頁
判示事項一、 商工協同組合の法定解散による清算人の就任とその承諾の要否
二、 商工協同組合法第五八条第一項と憲法違反
裁判要旨一、 商工協同組合法によつて設立された商工協同組合が、中小企業等協同組合法施行法第三条第二項の規定によつて解散した場合は、従前組合の理事であつた者は、その承諾の有無にかかわらず法律上当然に組合の清算人となる。
二、 商工協同組合法第五八条第一項は、憲法第一二条及び第一三条に違反しない。
裁判日:西暦1951-05-31
情報公開日2017-10-18 03:50:52
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主 文
抗告人Aを除くその余の抗告人等の抗告はいずれもこれを却下する。 抗告人Aの抗告はこれを棄却する。
抗告費用は抗告人等の負担とする。
理 由
本件抗告理由は別紙記載の通りである
よつて職権を以て抗告人中瀬尚人を除くその余の抗告人等の抗告の適否について按ずるに、右抗告はAが前記抗告人等を代理して申立てたものであるが、Aは弁護士の資格を有しないものであることは記録に徴し明かである。しかるところ、非訟事件手続法による抗告については特に定めたものを除く外、民事訴訟法の抗告に関する規にが準用されるから、本件即時抗告事件においては、代理に関しては民事訟訴法の規定に準拠しなければならないこととなる。而して民事訴訟法第七十九条によると、法令によつて、裁判上の行為をすることができる代理人の外は、弁護士でなければ何人も簡易裁判所以外では訴訟代理人となることができないものであるから、高等裁判所における右即時抗告事件においては、法令上裁判上の行為ができる代理人でもなく、また弁護士でもない右Aは前記抗告人等を代理して抗告を申立て得べき権限を有しないものといわなければならない。従て右抗告人等の本件即時抗告は代理権のない者の申立にかかり不適法であるからこれを却下すべきものとする。
次に抗告人Aの抗告の当否について按ずるに、長野県和傘協同組合は、もと商工組合法によつて設立された施設組合であつたところ、昭和二十一年十二月一日施行された商工協同組合法第七十六条第一項によつて、同法により設立された商工協同組合とみなされたものであるが、昭和二十四年七月一日に至り中小企業等協同組合法の施行に伴い同法施行法第三条第二項の規定によつて、昭和二十五年三月一日解散されたものであること並びに前記組合の解散に伴い中小企業等協同組合法施行法第三条第一項、商工協同組合法施行令第十二条、第二十条第一項の規定に基き、同組合の清算人は解散の日である昭和二十五年三月一日より二週間以内に、主たる事務所(長野県下伊那郡a村b番地)の所在地において、解散登記の申請をしなければならないに拘らず同年十月二十一日に至り漸くその登記申請手続をなしたものであることは、本件記録添付の登記申請者謄本、登記簿謄本及び抗告人等(被審理人等)陳述書に徴し、これを認めることができる。
よつて前記組合の解散に伴い抗告人Aが同組合の清算人となつたものであるか否かについて検討する。
右抗告人が前記組合の解散当時まで同組合の理事であつたことは、前記登記簿謄本によつて明かである。而して商工協同組合法第五十八条第一項によれば、商工協同組合が解散したときは、合併及び破産の場合を除き理事が清算人となるものである。従て従前右組合の理事であつた右抗告人は同組合の解散とともに、その清算人になつたものといわなければならない。
しかるところ右抗告人は、前記法条の規定によつて理事が清算人に就任するについては、当該理事の承諾を要するものであると主張する。
<要旨第一>しかしながら、同法条の趣意を考えるに、法人たる商工協同組合は、解散後も清算の目的の範囲内においては、なお存続するものであり、その機関もまた依然として存続すべきものであつて、解散により理事であつた者が当然解任さるべきものでないから、組合の解散とともに従前理事であつた者が、その理事たる地位の承継として法律上当然に清算人となるものであつて、清算人に就任するについて特にその承諾を要するものでないと解するのが妥当である。右抗告人の援用する商工協同組合法第五十八条第二項の規定は必ずしも右の解釈と牴触するものではない
更に右抗告人は、前記商工協同組合法第五十八条第一項の趣旨が前段において説明した通り、理事であつた者の意思の如何を問わず法律上当然に清算人たるべきことが強制せられ、しかもその義務違背を理由として処罰されることがありとすれば、こは著しく個人の自由意思を束縛するものであつて、憲法において保障されている個人の自由に対する基本的人権を侵害するものであるからかかる商工協同組合法の規定は、憲法の条規に違反し無効であると主張する。
<要旨第二>しかしながら前記法条において、商工協同組合が解散した場合従前理事であつた者が法律上当然に清算人となる旨を規定した所以は、前段に説明した通り、法人たる商工協同組合は解散後もなお清算の目的の範囲内において存続し、その機関もまた依然として存続するものであつて、理事であつた者は解散
により当然解任となるものでないが、ただその執行する事務が清算の目的の範囲内に限定される結果、その執行機関を清算人と名づけるに外ならないから、理事が清算人となることは、畢竟するに理事たる地位がそのまま清算人として承継されるものに過ぎないのであつて、清算人となることが、従前の理事たる地位から全く離れて、新に特別なる地位に就任するものではないと解すべきである。従て理事に就任することを承諾した者が、その理事たるの故を以て、解散とともに清算人となることは、理論上当然の帰結であるから、清算人に就任するととが、その意思に基ずかなかつたとしても、これを目して、個人の自由意思を束縛し、個人の自由に対する基本的人権を侵害するものとなすことはできないしかも商工協同組合法には、右抗告人所論の如く、中小企業等協同組合法第四十二条及び第六十九条において定められているように

組合と理事若しくは清算人との関係について、商法第二百五十四条第二項を準用する

旨の規定はないが、商工協同組合法によつて設立された組合は、その法人たる性格上、組合とその機関たる理事、従てまた清算人との関係については民法の委任に関する規定に準拠して、これを律すべきものと解するのが相当であるから、従前理事であつた者が清算人とたることを快しとしないときは、組合の定款に別段の規定がない限り、その自由なる意思決定に差すき一方的に清算人たることを辞任し得るものと解すべきである(民法第六百五十一条第一項参照)。従てこの点からみるも、前記商工協同組合法の規定が、個人の自由意思を束縛し、自由に対する基本的人権を侵害するものであるとみなすことは妥当ではない。故に右法条を憲法の条規に違反するものとなすことはできない。
しからば叙上抗告人の所論は、いずれも理由がないから、これを採用することはできない。
以上の説述によつて明かな如く、右抗告人は昭和二十五年三月一日前記組合の解散によつて清算人となつたものであるに拘らず、法定期間内に同組合の解散登記手続をしなかつたものであるから、中小企業等協同組合法施行法第三条第一項、第三十四条、商工協同組合法第七十一条の規定に基ずき、右抗告人は五千円以下の過料に処せらるべきものである。
されば原審が諸般の情況を参酌して、右抗告人を過料八百円に処したのは相当であつて、本件抗告は理由がないからこれを棄却すべきものとなる。 よつて非訟事件手続法第二十五条、第二百七条、第二十九条、民事訴訟法第四百十四条、第三百八十三条、第三百八十四条、第九十三条に則り、主文の通り決定する。
(裁判長判事 渡辺葆 判事 浜田潔夫 判事 牛山要)

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