判例検索β > 昭和29年(う)第2668号
覚せい剤取締法違反被告事件
事件番号昭和29(う)2668
事件名覚せい剤取締法違反被告事件
裁判年月日昭和29年12月27日
法廷名東京高等裁判所
結果破棄自判
判例集等巻・号・頁第7巻12号1805頁
判示事項一、 覚せい剤取締法の改正による常習犯処罰規定の新設とその改正の前後にわたる常習性ある同法第四一条第一項違反の処断
二、 右改正後常習として覚せい剤を不法に譲り受けたり製造したりした所為に対する擬律
裁判要旨一、 昭和二九年六月一二日法律第一七七号による覚せい剤取締法の改正により常習として覚せい剤を譲り受ける等の行為が特に常習犯として通常の譲受行為と区別して処罰することとなつた以上、右改正法施行前になした譲受行為も、それが常習としてされたものと認められるかぎり、右改正法施行後の譲受等の行為と包括して一罪として処断すべきものと解するのが相当である。
二、 右改正後の覚せい剤取締法第四一条第四項にいわゆる「常習として第一項の違反行為をした者」とは、同条第一項各号所定の一または数個の行為をする習癖を有する者がその習癖の発現として同条第一項各号所定の罪の一または数個を犯したときもその全部を包括して同条第四項に該当する一罪こして処断すべき法意と解するのを相当とする。
裁判日:西暦1954-12-27
情報公開日2017-10-13 01:58:24
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主 文
原判決を破棄する
被告人を懲役壱年四月及び罰金弍万円に処する
右罰金を完納することができないときは金弐百円を壱日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
押収にかかるピース煙草空箱入粉末薬品(昭和二九年押第九九三号の五)はこれを没収する。
理 由
本件控訴の趣意は弁護人松本栄一提出の控訴趣意書に記載されたとおりであるからここにこれを引用し、これに対し次のように判断する。
(論旨に対する判断省略)
しかしながら職権により原審の法令の適用につき調査するに、原判決は昭和二十九午六月十二日法律第百七十七号(同日施行)による覚せい剤取締法の改正後の行為にかかる原判示第三乃至第五の所為をいずれも被告人が常習としてこれをなしたものと認め、判示第三の譲受行為を同法により改正された覚せい剤取締法第四十一条第一項第四号第四項後段、判示第四、第五の製造行為を各同法により改正された覚せい剤取締法第四十一条第一項第三号第四項後段にあたるものとして、各別に犯罪の成立を認めた上、判示第一、第二の行為(各同法による改正前の覚せい剤取締法第四十一条第一項第四号に該当)と共に刑法第四十五条前段の併合罪の関係にあるものとしているが、判示第四、第五の行為はいずれも常習としてなされたものであるから、これについて刑法第四十五条の併合罪の規定を適用すべきでないことは勿論であり、(大審院大正一一年(れ)第二一一五<要旨第一>号大正一二年四月六日第一刑事部判決参照)また本件のように常習として覚せい剤を譲受ける等の行為が特に常習犯として通常の譲受行為と区別して処罰されることとなつた以上、右改正法施行前になした譲受行為もそれが常習としてなされたものと認められる限りは、右改正法施行後の譲受等の行為と包括して一罪として処断すべきものと解するのが相当である。(連続犯の適条に関する大審院大正一一年(れ)第一九七七号大正一二年<要旨第二>一月二六日第一刑事部判決参照)更に右同法による改正後の覚せい剤取締法第四十一条第四項にいわゆる常習として第一項の違反行為をした者とは、同条第一項各号所定の一又は数個の行為をする習癖を有する者かその習癖即ち常習性の発現として同条第一項各号所定の罪の一又は数種を犯したときもその全部を包括して同条第四項に該当する一罪として処断すべき法意と解せらりれるから(大審院昭和二年(れ)第六五一号同年七月一一日第二刑事部判決参照)ひつきよう本件はその全部を包括一罪として処断すべきものと云うべく、原審が判示のように第一乃至第五の事実につき各別に併合罪として法令を適用したのは、法令の通用を誤つたものであつて、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから原判決はこの点において破棄を免れない。
よつて刑事訴訟法第三百九十七条第四百条但書により原判決を破棄し当裁判所において更に判決をすることとする。
案ずるに
被告人は法定の除外事由がないのに、営利の目的を以て且つ常習として (イ) 昭和二十九年五月上旬頃から同年六月下旬頃までの間三回にわたり千葉県船橋市甲乙番地AことA方又は同市丙丁丁目戊番地被告人自宅において、右Aより、又は同人の妻Bを介し現金引換又は現金後払の約で覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン合計約百七グラムを代金合計一万二千四十円位で譲り受け (ロ) 昭和二十九年六月二十九日頃及び同月三十日頃の二回に亘り前記被告人自宅においていずれも約五百cc入壜に蒸溜水を入れて熱した上これにフエニルメチルアミノプロパン約一、五グラム食塩、アンナカ、カフエンを入れて攪拌溶解しフエニルメチルアミノプロパンを含有する覚せい剤注射液約四百ccを製造し たものである。
(証拠説明省略)
本件起訴状の記載によれば叙上の各譲受及び製造の行為はそれぞれ常習営利譲受及び常習営利製造の罪にあたり併合罪の関係にあるものとして起訴されたものと認められるのであるが、これを叙上のように包括一罪と認定するについては特に訴因の変更手続を要しないものと解する。
法律に照らすと、被告人の所為は包括して覚せい剤取締法(昭和二九年六月一二日法律第一七七号による改正後のもの)第四十一条第四項後段に該当すると認めるので、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年四月及び罰金二万円に処し、
刑法第十八条により右罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべく、主文末項掲記の粉末薬品(覚せい剤)は被告人の所有にかかるものであるから覚せい剤取締法(前記改正後のもの)第四十一条の三によりこれを没収することとする。
以上の理由により主文のとおり判決する。
(裁判長判事 谷中董 判事 坂間孝司 判事 荒川省三)

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