事件番号 | 昭和30(う)582 |
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事件名 | 印紙犯罪処罰法違反等被告事件 |
裁判年月日 | 昭和30年6月27日 |
法廷名 | 東京高等裁判所 |
結果 | 棄却 |
判例集等巻・号・頁 | 第8巻5号679頁 |
判示事項 | 印紙犯罪処罰法第二条第一項の「印紙の使用」の意味 |
裁判要旨 | 印紙犯罪処罰法第二条第一項前段にいわゆる偽造、変造等にかかる印紙の「使用」とは、必ずしも納税の用に供するため印紙本来の用法に従つて使用する場合にかぎらず、これを債務の担保に供し、または金融のため譲渡する等広く真正の印紙としての効用を発揮させるため情を知らない他人に引き渡し、または呈示する等の行為をも指称するものと解する。 |
裁判日:西暦 | 1955-06-27 |
情報公開日 | 2017-10-13 01:58:06 |
本件各控訴はいずれもこれを棄却する。 被告人Aの当審における未決勾留日数中百二十日を同被告人に対する原判決の刑に算入する。 理 由 本件各控訴の趣意は被告人Bの弁護人福場吉夫提出の控訴趣意書及び控訴趣意訂正申立と題する書面並びに被告人A及びその弁護人守屋勝男提出の各控訴趣意書記載のとおりであるから、これをここに引用する。 被告人Bの控訴趣意について。 原判決挙示の各証拠によれば、被告人BがCに対する建築請負代金債務の担保に供するため、原判示の如く、情を知らない同人に対し、偽造にかかる日本政府発行名義の取引高税印紙を引渡した事実を認めるに十分でありしかも右証拠中原審第九回公判調書中、証人Cの供述記載と当審における同証人尋問の結果によれば、右は所論の如く右Cに有無を言わさず取り上げられたものではなく、被告人Bが進んでこれを担保に供したものであることが窺われ、この点に関する論旨引用の、同被告人の司法警察員及び検<要旨>察官に対する各供述調書中、右認定に反する供述記載部あは措信し難い。しかして印紙犯罪処罰法第二条第一項前段にいわゆる偽造、変造等にかかる印紙の使用とは、必ずしも所論の如く、納税の用に供するため印紙本来の用法に従つてこれを使用する場合に限らず、これを債務の担保に供し、又は金融のため譲渡する等広く真正の印紙としての効用を発揮させるため情を知らない他人に引渡し、又は呈示する等の行為を指称するものと解すべきであるから叙上Cに対する債務の担保に供するため、情を知らない同人に対し偽造印紙を引き渡した被告人Bの所為が同法条にいわゆる偽造印紙使用罪を構成することは多言を要しない。原判示は、その措辞やや曖昧の嫌はあるが、情を知らないCに偽造印紙を交付した旨を判示していることに徴し、所論の如く同被告人の所為をもつて偽造の印紙を行使の目的をもつて情を知つている他人に交付する場合に成立するいわゆる交付罪に問疑したものではなく、叙上偽造印紙使用罪の成立を認めた趣旨であると解し得られるから原判決の事実認定及び法令の適用はいづれも極めて正当であつて何等の過誤はない。 論旨は事実誤認及び法令の適用の誤を主張するがいずれも証拠に基かず且つ法令の解釈に関する独自の見解に出でたものであつて採用することを得ない。論旨は理由がない。 (その他の判決理由は省略する。) (裁判長判事 三宅富士郎 判事 河原徳治 判事 遠藤吉彦) |