判例検索β > 昭和30年(う)第6号
医師法違反被告事件
事件番号昭和30(う)6
事件名医師法違反被告事件
裁判年月日昭和31年5月10日
法廷名東京高等裁判所
結果破棄自判
判例集等巻・号・頁第9巻4号386頁
判示事項医業類似行為業者と医師法第一七条の適用
裁判要旨たとい医業類似行為を業としうる者といえども、注射、投薬等の行為を業として行つたときは、医師法第一七条にいわゆる医業をなした者として処罰を免れない。
裁判日:西暦1956-05-10
情報公開日2017-10-13 01:57:42
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主 文
原判決を破棄する
被告人を罰金弐万円に処する
右罰金を完納することができないときは金五百円を壱日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
押収にかかる注射器二本、注射針九本、鉄鉱泉入り瓶一本、投薬用瓶三本、細胞元入り瓶一本及びエルゲン注射液入りアンプル十二本(浦和地方裁判所昭和二九年押第四二号の一及び三乃至七)を没収する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理 由
本件控訴の趣意は弁護人向山義雅提出の控訴趣意書に記載されたとおりであるから、ここにこれを引用しこれに対し次のように判断する。
控訴趣意第一点及び第二点について
原判決挙示の証拠を総合すれば判示事実は全部その証明があつたものと認められ、本件記録を調査し並びに当審における事実の取調の結果に徴するも原判決には所論のような事実誤認又は審理不尽の違法があるとは認められない。また原判決が右認定事実に対し判示法条を適用処断したことは相当であつて、所論のように罪とならない事実を有罪とした違法があるとも認められない。
即ち原判決挙示の証拠によれば被告人は医師の免許を受けていないのに、判示のように多数回に亘り判示自宅等においてA外多数の患者の疾病の治療を目的としてその病状を診断しBは細胞元と称する卵黄より精製した一種の薬品を注射し、或は前記Bは細胞元文は鉄鉱泉と称する第五改正日本薬局方に規定された薬品である硫酸第二鉄等を含有する一種の鉱泉を服用させたことが明らかであつて、右のように疾病治療の目的で反覆して薬品又はこれを含有する鉱泉等を注射しまたは服用させたときは医師法第十七条にいわゆる医業をなした場合に該当するものと云うべきである。尤も被告人が所論のように医業類似行為を業とすることを許されている者であることは本件記録上明らかであるが、右医業類似行為はこれを所轄都道府県知事に届け出た上、届出に係る当該医業類似行為に限りこれを業とすることを許されるものであることはあん摩師はり師きゆう師及び柔道整復師法附則第十九条の規定により明らかである。然るに当審における被告人の供述に徴するも原判示の如き行為は右所定の届出にかかる医業類似行為の範囲内には属しないものと認められるのみならず、右法条によれば医業類似行為を業としうる者に対しても同法第四条の規定が準用され、これらの業者は外科手術を行い又は薬品を投与し若はその指示をすることは許されないこととなつているのである。蓋しこれらの行為は医学上の智識技能を要するものであるから、医師の免許を受けた者でなければ業としてこれを<要旨>なすことを許さないものとした法意であつて、仮令医業類似行為を業としうる者と雖も、右規定に反しこれらの行為を業として行つたときは医師法第十七条にいわゆる医業をなした者として処罰を免れないと解すべきである。しかるに被告人が注射し又は内服させたいわゆるB又は細胞元と称するものは三、四%のレチチンと九六、五%の脂肪を含有し一種の薬品と認められるものであり、またいわゆる鉄鉱泉は硫酸第二鉄の含有量が微量のため局方品として市販には合格しないが第五改正日本薬局方に規定された薬品である硫酸第二鉄その他の成分を含有することは原審鑑定人C作成の鑑定書二通及び公判廷の供述により明らかであるから、被告人がこれらの薬品等を患者に注射し又は服用させたことは右にいわゆる薬品を投与しまたはこれを指示した場合に当り、被告人の所為が医師法第十七条の規定に触れることは叙上の説明によつて自ら明らかであると云うべきである。故に論旨はすべて理由がない。しかし職権により原判決の量刑の当否につき調査すると、本件記録を調査し、並びに当審における事実の取調の結果に徴し、被告人の性行、経歴、従来の業務経験、本件違反行為の態様、その人体に及ぼす危険の有無その程度等諸般の情状を総合して考えると原審が被告人の本件所為について懲役刑を選択処断したことは、その執行を猶予する旨の言渡をした点を考慮してもなおいささか重きに過ぎるものと認められるので、この点において原判決を破棄すべきものと認める。よつて刑事訴訟法第三百九十七条第四百条但書により原判決を破棄し、当裁判所において更に判決をすることとする。
当裁判所の認定した事実並びにこれを認めた証拠は原判決の判示するところと同一であるからここにこれを引用する。
法律に照らすと、被告人の所為は医師法第十七条第三十一条第一項第一号罰金等臨時措置法第二条第一頃に該当するので、前記諸般の情状に鑑み、所定刑中罰金刑
を選択し、その金額の範囲内で被告人を罰金二万円に処し、刑法第十八条により右罰金を完納することができないときは金五百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべく、主文第四項記載の押収品は本件犯行の用に供しようとしたものであるから同法第十九条第一項第二号によりこれを被告人より没収し、訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項本文により全部被告人にこれを負担させることとする。
以上の理由により主文のとおり判決する
(裁判長判事 谷中董 判事 坂間孝司 判事 荒川省三)

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