判例検索β > 平成8年(ワ)第1052号
朝日新聞名古屋販売解雇
事件番号平成8(ワ)1052
事件名朝日新聞名古屋販売解雇
裁判年月日平成14年10月18日
裁判所名名古屋地方裁判所
分野労働
裁判日:西暦2002-10-18
情報公開日2017-10-19 21:32:47
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主文
1 原告Aが被告に対し、次の(1)ないし(4)を内容とする雇用契約上の権利を有する地位にあること確認する。
(1) 専業従業員であること
(2) 賃金の固定給が月額27万3000円、うち基本給16万5000円、早朝勤務給1万5000円、住宅手当5万円、業務手当2万5000円であること(3) 定年が満65歳であること
(4) 退職金の加入口数が120口であること
2 被告は原告Aに対し、別紙13賃金計算書A・未払給与額欄記載の各月分の金額及びこれに対する各翌月1日から各支払済まで年6分の割合による金員を支払え。
3 原告Bが被告に対し、次の(1)ないし(4)を内容とする雇用契約上の権利を有する地位にあること確認する。
(1) 専業従業員であること
(2) 賃金が固定給月額10万5000円であること
(3) 定年が満65歳であること
(4) 退職金の加入口数が80口であること
4 被告は原告Bに対し、別紙14賃金計算書B・未払給与額欄記載の各月分の金額及びこれに対する各翌月1日から各支払済まで年6分の割合による金員を支払え。
5 原告Bの被告に対する社宅費の支払義務がないことを確認する。6 被告は原告Bに対し、20万4000円及びこれに対する平成13年12月26日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。
7 原告Aが被告に対し、平成15年7月9日まで別紙4物件目録(2)記載の建物の使用権原を有することを確認する。
8 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
9 訴訟費用は、これを6分し、その5を原告らの、その余を被告の負担とする。事実及び理由
第1 請求
1 原告A
(1) (雇用契約上の地位確認請求)原告Aが被告に対し、次の①ないし③を内容とする雇用契約上の権利を有する地位にあること確認する。
① 主任の役職にあること
② 賃金の固定給が月額42万3500円(内訳、基本給27万5000円、集金給5万円、家族手当1万円、住宅手当3500円、役職手当4万円、配達手当2万円、業務手当2万5000円)であること
③ 主文第1項(3)(4)同旨
(2) (未払賃金請求)被告は原告Aに対し、3812万9687円及びうち別紙1賃金差額計算書(以下別紙1ないし5の各計算書は、その符号で単に計算書1などと表示する)・賃金等差額欄記載の各金額に対する同計算書・支払期日欄記載の各期日の各翌日から支払済まで年6分の割合による金員を支払え。
(3) (付加金請求)被告は原告Aに対し、計算書2・早朝手当欄及び時間外手当欄記載の各金額と同額の金員を支払え。
(4) (賞与等請求)被告は原告Aに対し、308万4500円及びうち計算書3金額欄記載の各金額に対する同計算書・支払期日欄記載の各期日の各翌日から支払済まで年6分の割合による金員を支払え。
(5) (駐車場使用権原の確認請求)原告Aが被告に対し、別紙6物件目録記載(2)の駐車場(以下本件駐車場という)の使用権原を有することを確認する。(6) (駐車場使用不能による損害賠償請求)被告は原告Aに対し、175万5600円及びこれに対する平成13年12月26日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告B
(1) (雇用契約上の地位確認請求)原告Bが被告に対し、次の①②を内容とする雇用契約上の権利を有する地位にあること確認する。
① 主文第3項(1)(3)(4)同旨
② 賃金が基本給月額12万円であること
(2) (未払賃金請求)被告は原告Bに対し、603万3885円及びうち計算書4・賃金等差額欄記載の各金額に対する同・支払期日欄記載の各期日の各翌日から
支払済まで年6分の割合による金員を支払え。
(3) (付加金請求)被告は原告Bに対し、計算書5・早朝手当欄及び時間外手当欄記載の各金額と同額の金員を支払え。
(4) (社宅費の支払義務不存在確認請求)主文第5項同旨
(5) (社宅費の不当利得返還請求)被告は原告Bに対し、25万8000円及びこれに対する平成13年12月26日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告ら
(社宅使用権原の確認請求)原告らが被告に対し、定年まで別紙6物件目録記載(1)の建物(以下本件社宅という)の使用権原を有することを確認する。第2 事案の概要
本件は、下記1(1)②③の雇用関係に関し、原告らが、(a)前示第1、1(1)及び同2(1)の契約上の地位及び契約条件を主張して、同内容の雇用契約上の権利の確認(同)、(b)未払賃金、労基法に基づく早朝・時間外割増賃金、賞与、賞金及び労基法114条所定の付加金の支払(前示第1、1(2)ないし(4)、同2(2)(3))、(c)本件社宅の使用権原の確認(前示第1、3)を被告に請求するとともに、(d)原告Aが本件駐車場の使用権原を主張して、その確認と使用不能による損害賠償を(前示第1、1(5)(6))、(e)原告Bが社宅費の支払義務の不存在を主張して、その確認と過去の支払分に対する不当利得返還(前示第1、2(4)(5))を請求する事案である。
1 争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実
(1) 当事者等
① 被告は、朝日新聞社発行の新聞、出版刊行物及び諸協力新聞の販売等を主たる目的として、平成2年3月8日設立された会社である。
② 原告A(昭和13年7月10日生)は、もと別紙6物件目録記載(3)の店舗(以下布池店という)の所在地にあった建物で新聞販売店を営んでいたが、平成3年2月1日同営業を被告に譲渡し、同時に従業員として採用された者で、平成5年8月1日布池店主任に任命された。同原告には、昭和38年婚姻した妻Cと長男D、長女E、二男Fがある(甲13、甲25、乙20、乙25、原告本人《第1回》)。③ 原告B(昭和16年2月26日生)は、平成3年2月1日被告に採用された者で、布池店3階の本件社宅で原告Aと同居している。
(2) 本件和解の成立等
① 被告は、平成5年2月13日原告Aに対し、同月18日原告Bに対し、同人らを同月25日限り懲戒解雇する旨の意思表示をし、これに対して原告らは、被告を相手方として、名古屋地方裁判所に仮処分(平成5年(ヨ)第1532号、平成6年(ヨ)第149号)を申し立てるとともに、平成6年には訴訟(同年(ワ)第828号)を提起して、(a)雇用契約上の権利を有することの確認、(b)原告Aにつき平成6年2月3日以降の、原告Bにつき同月2日以降の賃金支払、(c)本件社宅の使用権原の確認を請求し、更に原告Aが本件駐車場の使用権原の確認を請求した。② 原告らと被告とは、平成6年6月20日上記訴訟において、要旨、別紙5和解条項記載の内容の和解(以下本件和解という)をした(甲3)。
(3) 被告の就業規則及び給与規定(いずれも本件に関係ない部分を省略する)① 被告は、設立当初の平成2年4月1日から、別紙8ー1・2記載の就業規則及び給与規定を実施した(以下別紙8ないし11の各1・2記載冒頭の就業規則及び給与規定を、頭書の符号で本件就業規則(1)や本件給与規定(1)などといい、これらと付属の規定類と一括して同様に表示することがある。また、別紙8ー1と同8ー2など同時期に実施された就業規則と給与規定を一括して、同様の符号で本件規則・規定(1)などと表示する)(甲1、甲2)。
② 被告は、本件和解前の平成6年4月1日から、本件規則・規定(1)を本件規則・規定(2)のとおりに変更した(以下本件変更Ⅰといい、(a)そのうち給与規定2条(1)A(ハ)所定の勤続給の計算式を、勤続年数×5000円から勤続年数×1000円に変更した部分を本件勤続給変更と、(b)本件給与規定(2)中に、新たに別紙9ー2ー2の基本給内規を定めて、専業従業員、主任等の職務内容を規定した部分を本件職務規定(1)という)(乙2)。
③ また、被告は、平成8年4月1日から、本件規則・規定(2)を本件規則・規定(3)のとおりに変更した(以下本件変更Ⅱといい、そのうち、(ア)従業員の定年年齢を65歳から60歳に引き下げる部分を本件定年変更と、(イ)年齢給、勤続給の廃止等の給与規定の変更を本件給与規定変更という。また、本件給与規定(3)中、
(a)6条(2)で専業従業員、主任等の基本業務を規定した部分を本件職務規定(2)といい、(b)別紙10ー2ー2割増賃金(4)深夜労働割増賃金で、

早朝(午前3時30分から5時まで)割増は、基本給並びに朝刊配達給に含まれています。

と定めた部分を本件早朝割増条項(1)という)(乙1)。
④ 更に、被告は、平成8年10月から、本件給与規定(3)のうち、5条ないし7条、12条を本件給与規定(4)のとおりに変更し、4条及び付属の割増賃金の計算表を削除した(以下本件変更Ⅲといい、本件給与規定(4)のうち、5条②及び6条(2)で、新たに早朝勤務給とその計算方法を定めた部分を本件早朝割増条項(2)という。なお、このとき就業規則も一部変更されたが、本件に直接関係する部分はない)(乙7。変更時期につき弁論の全趣旨)。
(4) 原告らに対する処遇
被告は、本件和解後、原告Aを主任、原告Bを専業従業員として処遇していたが、本件変更Ⅱ後の平成8年4月以降、原告Aを専業従業員、原告佐野を副業職として処遇しており、同月20日その旨の辞令を発令した(原告らに対する4月以降の処遇を一括して、以下本件処遇という)(甲9、甲10)。
(5) 原告Aの就労状況
① 本件和解後、原告Aは、本件給与規定(1)及び(2)中、(a)2条(1)B(イ)の配達手当所定の朝・夕刊共(本紙+協力紙)200部以上又は2時間以上の配達の要件と、(b)2条(1)B(ロ)の集金手当所定の証券枚数200枚以上の要件をそれぞれ満たす内容の配達及び集金業務を行なっていた。
② 一方、被告は、平成8年4月当時、原告Aの休日を毎週日曜日と指定していたが、平成9年1月以降、これを毎週火曜日に変更した。
③ また、原告Aは、満60歳に達した翌月の平成10年8月1日以降、被告では就労していない(以下本件不就労という)。
(6) 原告Aの給与
① 原告らの給与は、前月26日から当月25日までの就労分が当月末に支給されていたが(以下特に断らない限り、これを当月分の給与と表示する)、本件和解後、本件変更Ⅱの前である平成8年3月分当時の原告Aの給与中には、基準給、年齢給、勤続給、住宅手当、時間外手当、カード料、休日出勤手当の支給項目があり、うち基準給として18万1600円、年齢給として7万8000円、勤続給として5000円、住宅手当と時間外手当として各2万円が支給されており、カード料、休日出勤手当を除く総支給額(各種控除前の金額。総支給額につき以下同じ)は、30万4600円だった(甲11の3、弁論の全趣旨)。
② 本件変更Ⅱの後である平成8年4月分以降の原告Aの給与中には、基本給、集金給、家族手当、住宅手当、業務手当、カード料の支給項目があり、うち基本給として18万円、集金給として4万円、家族手当として1万円、住宅手当として5万円、業務手当として2万5000円が支給されており、カード料を除く総支給額は30万5000円だった。
③ 本件変更Ⅲの後である平成8年10月分以降の原告Aの給与は、基本給が18万円から16万5000円に減額される一方、新たに早朝勤務給として1万5000円が支給され、その結果、カード料を除く総支給額には変動がなかった(以上甲11の1、甲27、乙9、乙13の1ないし12)。
④ 平成8年4月分以降の原告Aに対する給与の支払額及び内訳は、計算書1・実際支払賃金欄記載のとおりである。
(7) 原告Bの給与
① 本件和解後、本件変更Ⅱの前である平成8年3月分当時の同原告の給与中には、基準給、勤続給、休日出勤手当の支給項目があって、基準給として10万1000円、勤続給として4000円が支給されており、休日出勤手当を除く総支給額は10万5000円だった(甲11の4、弁論の全趣旨)。
② 本件変更Ⅱの後である平成8年4月分以降の原告Bの給与には、集金給、住宅手当、調整手当、配達給の支給項目があり、集金給と住宅手当として各3万円、調整手当として6000円、配達給として3万9000円が支給されており、総支給額は10万5000円だった(甲11の2、乙10)。
③ 平成8年4月分以降の原告Bに対する給与の支払額及び内訳は、計算書4・実際支払賃金欄記載のとおりである。
(8) 昭和62年改正労基法32条の施行
同条の施行により、被告に適用される労働時間の規制は、従前の1週44時間以内から、平成9年4月1日以降1週40時間以内に変更された(平成5年法79号に
よる改正後の労基法附則131条、同年政令63号による改正後の労働基準法第32条第1項の労働時間等に係る経過措置に関する政令参照)。
(9) 本件社宅及び本件駐車場の利用状況等
① 本件和解後、これに従って、原告らは、本件社宅の使用を継続しており、また原告Aは、平成6年7月末までに本件駐車場を被告に明け渡した。② 本件和解の翌月である平成6年7月以降、原告Bは、毎月末日に社宅費として3000円を被告に支払っており、本件口頭弁論終結の前月である平成13年11月分までの合計は26万7000円である。
(10) 本訴における一部和解の成立
原告らと被告は、平成11年3月25日本件和解期日において、要旨、以下の内容の和解をし、平成8年3月末日以前の紛争を解決した。
① 被告は原告Aに対し、同原告の平成6年7月分から平成8年3月分までの各種手当等の請求に対する解決金として436万9403円を平成11年4月末日限り、原告ら代理人名義の預金口座に振り込む方法で支払う。
② 被告は原告Bに対し、同原告の平成6年7月分から平成8年3月分までの各種手当等の請求に対する解決金として220万8090円を平成11年4月末日限り、原告ら代理人名義の預金口座に振り込む方法で支払う。
③ 原告らは、平成6年7月分から平成8年3月分までの各種手当等の請求について、その余の請求を放棄する。
④ 原告らと被告とは、平成8年3月末日までについては、本和解条項に定めるほか、なんらの債権債務のないことを相互に確認する。
(11) 本訴における原告Aの供述
原告Aは、平成13年7月24日当法廷での本人尋問おいて、日中競輪場に電話したり、その件で被告のG社長(当時)に注意された事実を否定し、名古屋競輪場に2、3回行き、Hと競輪場に行ったことはあるが、他の競輪場に行ったり、他の従業員とは行ったことがない旨を供述した(以下一括して本件供述という)。(12) 原告Aに対する懲戒解雇の意思表示
被告は、平成13年9月18日原告Aに対し、本件供述の内容は虚偽であり、本件就業規則(3)54条8号所定の懲戒事由に該当するとして、懲戒解雇の意思表示をした(意思表示の日付につき本件記録中の受領書の記載)。
2 争点
(1) 本件の争点は、(ア)原告Aの雇用契約の存否(前示第1、1(1)ないし(4)、同3関係の抗弁)、(イ)原告らの雇用契約上の地位(主任ないし専業従業員か否か)及び契約内容(賃金額、定年年齢、退職金の加入口数)(前示第1、1(1)ないし(4)、同2(1)ないし(3)関係の請求原因)、(ウ)平成8年4月1日以降の原告らの未払賃金、労基法上の割増賃金、賞与、賞金の有無・金額(前示第1、1(2)ないし(4)、同2(2)(3)関係の請求原因及び抗弁)、(エ)原告らの本件社宅の使用権原の有無(前示第1、3関係の請求原因)、(オ)原告Aの本件駐車場の使用権原及び損害賠償請求権の有無(前示第1、1(5)(6)の請求原因)、(カ)原告Bの社宅費支払義務の存否及び被告の不当利得の成否(前示第1、2(4)(5)関係の抗弁)であり、原告らは、上記(ウ)のほか、同(オ)の損害
や、同(カ)中の不当利得の計算関係について、以下のとおり主張している。① (未払賃金、割増賃金、付加金、賞与、賞金について)ア 原告らに支払われるべき平成8年4月1日以降の給与の金額・内訳は、それぞれ計算書1及び同4・支払われるべき賃金欄記載のとおりである。これに対し、実際に支払われたのは、同各計算書・実際支払賃金欄記載のとおりであるから、同各計算書記載のとおり、平成13年11月分までで、原告Aにつき合計3812万9687円の、原告Bにつき合計603万9192円の賃金及び労基法所定の割増賃金が未払であり、原告らは、各同額及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。イ また、上記アの未払賃金及び労基法所定の割増賃金のうち平成8年4月1日以降支払われるべき早朝手当・時間外手当の金額・内訳は、それぞれ計算書2及び同5・早朝手当欄及び時間外手当欄記載のとおりであるから、原告らは、労基法114条に基づき、上記各手当に加えて、更にこれらと同額の付加金の支払を求める。ウ 更に、原告Aに支払われるべき平成10年12月以降の賞与・賞金の金額・内訳は、計算書3記載のとおりであり、合計308万4500円であるが、全額未払であるから、原告Aは、同額及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。② (本件駐車場の使用不能による損害賠償)
同駐車場が利用できないため、原告Aは、他に駐車場を確保せざるを得ず、月額1
万9950円の支払を余儀なくされているが、その金額は、平成6年8月分から平成13年11月分までで88カ月分、合計175万5600円であるから、同額及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。
③ (社宅費の不当利得返還請求)
前示1(9)②のとおり、原告Bは、平成6年7月分から平成13年11月分までに社宅費89か月分、合計26万7000円を支払っているので、そのうち25万8000円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。
(2) 上記(1)の各争点の前提問題に関する主たる争点は、後示(3)のとおりであり、これ及び、下記のその余の争点の一部に関する当事者の主張は、別紙12主張対比表(以下単に対比表という)記載のとおりである。
後示(3)のほかに、本件では、(a)本件変更Ⅱ、Ⅲの効力(本件早朝割増条項(1)及び同(2)は有効か)、(b)役職手当に関する本件和解条項3項(4)但書所定の条件(以下本件役職手当条件という)の成否、(c)本件不就労の経過(原告Aの就労に対する被告の受領拒絶の有無)、(d)原告らの時間外労働に対する被告の業務命令の有無、(e)原告Aの賞与・賞金請求権の根拠、(f)本件解雇の理由の有無も争点となっている。
(3) 主たる争点
① 原告A関係
ア 原告Aは、主任の役職にあるか(前示(1)(イ)関係)。
イ 原告Aの定年年齢は何歳であるか(本件定年変更は有効か。前示(1)(ア)(イ)関係)。
ウ 原告Aの賃金の金額及び明細は、どのようになっていたか(年齢給・勤続給を廃止した本件給与規定変更は有効か。前示(1)(イ)(ウ)関係)。a 本件変更Ⅱ後の平成8年4月から平成8年9月まで
b 本件変更Ⅲ後の平成8年10月から平成10年7月まで
c 本件不就労後の平成10年8月以降
エ 原告Aは、本件変更Ⅱ後の平成8年4月から本件不就労前の平成10年7月までの間における時間外労働及び所定労働時間内の早朝労働をどれだけしたのか(前示(1)(ウ)関係)。
a 時間外労働の時間数
b 所定労働時間内の早朝労働の時間数
オ 原告Aの時間外労働による割増賃金の算定の基礎となる賃金項目に含まれるものは何か(前示(1)(ウ)関係)。
カ 原告Aの時間外労働による割合賃金の算定の基礎となる賃金の時間単価を算出するについて、月間所定労働時間数を何時間とすべきか(前示(1)(ウ)関係)。キ 原告Aの退職金の加入口数は何口か(前示(1)(イ)関係)。ク 原告Aは、駐車場の使用権原を有するか(前示(1)(オ)関係)。② 原告B関係
ア 原告Bは、専業職の従業員であるか(前示(1)(イ)関係)。イ 原告Bの定年年齢は何歳か(本件定年変更は有効か。前示(1)(イ)関係)。ウ 原告Bの賃金の金額及び明細は、どのようになっていたか(勤続給を廃止した本件給与規定変更は有効か。前示(1)(イ)(ウ)関係)。
a 本件変更Ⅱ後の平成8年4月から平成8年9月まで
b 本件変更Ⅲ後の平成8年10月以降
エ 原告Bは、平成8年4月から本件口頭弁論終結前の平成13年11月までの間における時間外労働及び所定労働時間内の早朝労働をどれだけしたのか(前示(1)(ウ)関係)。
a 時間外労働の時間数
b 所定労働時間内の早朝労働の時間数
オ 原告Bの時間外労働による割増賃金の算定の基礎となる賃金項目に含まれるものは何か(前示(1)(ウ)関係)。
カ 原告Bの時間外労働による割増賃金の算定の基礎となる賃金の時間単価を算出するについて、月間所定労働時間数を何時間とすべきか(前示(1)(ウ)関係)。キ 原告Bの退職金の加入口数は何口か(前示(1)(イ)関係)。ク 原告Bから社宅費を徴収することは違法か(前示(1)(カ)関係)。③ 原告ら関係
原告らは本件社宅の使用権原を有するか(前示(1)(エ)関係)。第3 争点に対する判断

1 原告Aの契約上の地位及び契約条件(前示第1、1(1)の請求について)(1) 同原告の契約上の地位(前示第2、2(3)①アの争点について)① この点につき、原告Aは、現在自己が主任である旨主張するのに対し、被告は、本件規則・規定(2)以前の主任と本件規則・規定(3)以後の主任とは実質的に異なる役職であり、本件変更Ⅱ以後の原告Aは、本件規則・規定(3)の専業従業員に該当する旨を主張しているので、まず本件規則・規定(1)ないし同(3)それぞれにおける主任の役職の位置付け等から検討する。
② 別紙8ないし10の各1・2の就業規則及び給与規定の内容によれば、被告における職位・役職に関して、以下の事実を認めることができる。
ア まず、本件規則・規定(1)をみると、(a)本件就業規則(1)においては、2条で従業員の区分として、所長、社員、学生従業員、補助従業員の別が、また5条で上記各従業員の服務内容がそれぞれ定められており、(b)本件給与規定(1)においては、2条(1)A基本給の(イ)で、基本給の区分に関して、専業1ないし3、主任、所長の5種類の別が規定され、また2条(1)E役職手当で主任と所長の各役職手当が規定されており、以上によれば、本件規則・規定(1)では、学生従業員と補助従業員を除く被告従業員(以下単に従業員ということがある)について、主任、所長の役職を設けるとともに、全体の職位を、下位から順に、専業1ないし3、主任、所長の5種類に類別していることが認められるが、一方各職位の職務内容等については、これを定めた明確な規定は
ない。
イ 次に、本件規則・規定(2)をみると、規定自体は本件規則・規定(1)とほとんど同様であり、上記ア(a)(b)と同一の規定によって、同じく専業1ないし3、主任、所長の5種類の職位が設けられているが、一方、本件給与規定(2)中に別紙9ー2ー2基本給内規による本件職務規定(1)が新設されて、各職位の基本給の対象となる業務内容が個別に規定されている。
これによれば、(ア)本件規則・規定(2)における主任の基本給の対象となる職務内容は、

配達・集金・拡張・維持など区域の読者管理・店内事務を行ない、区域責任者として集金管理・精算ができる者

であって、その中には、みずから新聞の配達、新聞代の集金、顧客の拡張・維持をし、店内事務等を行なうほかに、他の従業員のする集金業務等の管理を行なうことが含まれており、ここにいう主任とは、下記の所長のように支店の営業区域全体の管理責任までも負うものではないが、営業区域の一部について管理責任を負う立場の者として規定されていると認められる。これに対して、(イ)主任の直近上位にある所長は、支店の営業区域全体にわたって、下位の従業員の業務遂行につき管理責任を負う者であり、(ウ)主任の直近下位の専業3(専業従業員中の
最上位の者)は、みずから1又は2区以上の配達・集金業務を行ない、所長・主任の指示に従って一定の営業活動を担当するが、特別の管理責任は負わない者として、(エ)また専業2は、20歳前後で業務見習いに従事する者と、専業1は、通常所長・主任の配偶者で店内の業務万般を補佐する者と、それぞれ規定されているのが認められる。
ウ 更に、本件給与規定(1)と同(2)における専業従業員、主任、所長の給与体系を比較すると、両給与規定は、実際上同一内容であって、(a)基本給は、本件給与規定(1)及び同(2)の各2条(1)A(イ)のとおり、専業1が5万円と10万円(いずれも月額。特に断らない限り、給与関係について以下同じ)、専業2が12万円から13万円、専業3が13万円から15万円、主任が15万円から20万円、所長が20万円から25万円とまったく同額で、(b)時間外手当の計算方法等を除くその他の一般的な各種手当にも基本的な差異はない(なお、勤続給については、前示第2、1(3)②(a)の本件勤続給変更があるが、主任の職位に関連する給与内容の変更ではない)。
そのほか、(c)両給与規定とも、2条(1)Eと同(2)Cで、主任以上の者を対象とする役職手当(主任が2万円から3万5000円、所長が4万円から5万5000円)と管理手当ないし増紙手当(純増手当)を規定しているが、その内容にも、各規定間には基本的な差異がなく(ただ役職手当は、本件給与規定(1)の場合、主任であっても支店全体の管理責任を負うことが支給要件とされているのに対し、本件給与規定(2)の場合は、区域の管理責任を負うに過ぎない者に対しても支給され得る点が異なるだけである)、また、(d)両給与規定とも、主任以上の役職手当支給者には、時間外給与を支給しない旨を規定している(各規定2条(2)A末尾)。エ 以上に対し、本件規則・規定(3)をみると、(ア)本件就業規則(3)においては、
2条(1)①で、従業員(短時間従業員と再雇用従業員を除く)を、所長、主任、専業従業員に区分しており、10条で、従業員の服務内容が所長とその他の社員、及び学生従業員等に分けて規定されているが、(イ)一方、本件給与規定(3)6条(2)においては、本件職務規定(1)と異なる本件職務規定(2)が定められ、また所長を除く従業員の職位として、従前の4種類ではなく、専業1、専業2、主任の3種類が規定されている。
そして、この本件職務規定(2)によれば、上記の専業1は、

配達・集金・営業・事務のうち、どれかを専門にできること

、専業2は、

配達・集金営業・事務と折込作業、部数管理、区域管理ができること

、主任は、

専業2の業務と支店単位の配達管理、集金管理、営業活動、折込作業の管理等(の)管理作業ができること

と定められており、本件規則・規定(2)以前には主任の担当とされていた区域の管理業務は、本件規則・規定(3)では専業2の職位の職務内容とされており、従来所長の担当とされていた支店全体の管理業務は、同様に新しい主任の職務内容と規定されていることが認められる。
他方、所長については、上記の本件就業規則(3)10条(5)①では、本件規則・規定(2)までと異なり、特に管理職と規定しており、また所長に関する職務内容の定めや給与の規定はない。
オ また、本件規則・規定(3)における給与体系をみると、(ア)本件給与規定(2)以前の賃金構成は、(a)基準内給与として、基本給(基本給自体のほか、年齢給、勤続給を含む)、職務手当(配達手当、集金手当)、家族手当、住宅手当、役職手当、通勤手当が、(b)基準外給与として、時間外手当のほか、奨励手当(完納手当、拡張手当)、管理手当(又は増紙手当)、特別手当、応援手当(配達応援手当、集金応援手当)があったものが、(イ)本件給与規定変更の結果、本件給与規定(3)では、基本給、集金給、手当(家族手当、通勤手当、住宅手当、諸手当)のほかは、法定算定方式によって算定される割増賃金のみに単純化されている(ただし、上記諸手当には、役職手当、業務手当、拡張カード料、調整手当、その他の手当も含む)。
そして、本件給与規定(3)に基づく給与の内容をみると、①基本給(6条)は、専業1が5万円から10万円、専業2が12万円から20万円、主任が18万円から30万円で、金額的には、本件規則・規定(2)以前の主任と所長の基本給が、それぞれ本件規則・規定(3)の専業2と主任の基本給にほぼ相当している(前示ウ(a))。また、②支店管理者たる主任に支給される役職手当(別紙10ー2ー5諸手当支給金額表(1))は、A、B2種類があり、金額的に、上記A(1万円から5万円)が本件規則・規定(2)以前の主任の役職手当にほぼ相当しており、上記B(6万円から10万円)は、従前の所長の役職手当を相当上回る水準になっている(前示ウ(c))。更に、③年齢給と勤続給が廃止される一方で、新設された業務手当(別紙10ー2ー5諸手当支給金額
表(2))は、支店及び区域単位の新聞業務と、その管理作業につく者に支給する旨定められており、金額的には、区域単位の担当者が5000円から4万円まで、支店単位の担当者が3万円から6万円までとなっている。そのほか、④集金給(7条)については、本件給与規定(2)以前の集金手当(同2条(1)B(ロ))と比べ、上限が2万円から10万円へと大幅に引き上げられ、支給水準自体の向上も認められる。③ 以上②の事実、特に、まず前示②ア、同イ第1段、同ウの処遇規定の類似性からすれば、本件職務規程(1)の有無にかかわらず、本件規則・規定(1)(2)での主任の職位は同一内容であり、支店全体の管理責任を負う所長の直近下位にあって、支店の営業区域の一部の管理責任を負担する立場をいうと認めるのが相当であるが、これに対し、前示②エ第2段の職務内容の対応関係や同オの給与体系を考慮すれば、本件規則・規定(3)における主任は、支店全体の管理責任を負う者であって、本件職務規定(2)によって、本件規則・規定(1)(2)での主任とは実質的に異なる役職になったというのが相当である。そこで、本件就業規則(2)以前の主任と同じく区域の管理責任のみを負う者が、本件就業規則(3)において、どの職位に位置付けられるかを検討するに、前示②エ認定
の職務内容に照らせば、区域管理の責任を負担する専業2に当たるというのが妥当である。そうすると、従前主任の職位にあった従業員を、本件変更Ⅱの後、専業従業員として処遇するのは、その旨の移行規定はないものの、実質的に相同な職位に位置付けるものであって、名称の変更にほかならず、その点だけでは、これを降格等の不利益な取扱ということはできないから、(他の処遇上の不利益変更の可否については後示⑤のとおり)、上記内容における本件規則・規定(3)の実施は、有効な
就業規則の変更と認められる。
したがって、原告Aは、本件就業規則(3)が実施された平成8年4月1日以降は、同規則による主任の役職にあるとは認められず、結局単なる専業従業員にすぎないというべきであるから、本訴でもその旨確認するのが相当であり、この点に関する同原告の主張には理由がない。
④ また、従前の主任のうち区域管理の責任を負うにすぎなかった者に対し、本件規則・規定(2)の適用当時すでに役職手当が支払われていたり、あるいは本件変更Ⅱ後、上記に相当する専業2の職位の者に新たに役職手当が支給されたと認めるだけの証拠はないから、本件役職手当条件が成就したとは容易に認め難く、原告Aの役職手当に関する主張も理由がない。
⑤ 一方、本件規則・規定(3)に基づく前示③の変更は、同判示のとおり実質的には呼称の変更であり、これにより当該従業員の職務職責が軽減されるものではないし、現に原告Aの職務内容が変更されたと認めるべき証拠もないから、本件変更Ⅱ後の同原告の契約条件を、就業規則等の変更によって不利に変更することは、原則として合理性を欠くものといわねばならない。
したがって、平成8年4月以降の原告Aの賃金など契約条件については、別に合理的事情に基づく就業規則の変更があるなど特段の事情のない限り、従前と同等以上に決定するのが相当であり(以下これを本件変更原則という。なお、被告も、本件変更Ⅱにより原告らの就労条件を実質的に引き下げるものでないとしており、上記につき当事者間に争いはないというべきである)、後示(2)以下でも、この前提に基づき契約条件を検討することとする。
⑥ 以上に対し、原告Aは、同原告に対する本件処遇は降格処分だと主張し、甲5、甲53、甲55、甲57、原告A本人の供述(第1回)中には、これに沿う部分があるが、前示②③の判示内容に照らし直ちに採用できない。また、甲57ないし甲59、甲69、原告A本人の供述(第2回。特に平成13年5月22日付・同本人調書2頁、同年7月24日付・同本人調書2頁)中には、(ア)平成7年4月に、それまで独立の支店だった布池店と他の2店舗が主税町営業所に統合されて、布池店が下位の単位店に格下げされた結果、原告Aは、その責によらずに、当時の支店(主税町営業所)レベルの管理業務に関与できないこととなったが、平成8年4月以降も布池店全体の管理業務は行なっており支店全体の管理者たる主任の地位に変更はない、(イ)布池店には、平成6年7月だけは、原告以外にもIとJの2人の主任がいたが、IもJも同年8月に辞めてしまい、同月以降は、主任は原告Aのみだったとの趣旨をいう部分があるが、甲59の記載によれば、従前から、原告らも、
I主任が平成7年4月の時点でも布池店に勤務していた事実を自認していたのは明らかであり、甲17記載の主任名からも同様に考えられるのであって、上記(イ)の原告Aの供述等が真実を述べたものとは到底考えられず、原告らに有利な上記証拠は容易に措信できない。
結局、甲57及び甲59中の上記以外の部分と甲17、乙6、乙23、並びに本件和解条項3項(2)及び付属の職務記述書によれば、(a)本件和解当時、布池店には、原告AのほかにIその他の主任がいて、1A区、1B区、2区ないし6区の7営業区域を区域毎に分割して管理していたが、同原告の担当は、1区と4区(後に2区と名称変更)のみにすぎず、(b)同様の状態が、本件職務規程(1)で、当時の主任が区域管理者である旨明確にされた平成6年4月当時や、布池店の上位に主税町営業所が置かれた平成7年4月当時も継続していたと認められ、本件和解後、原告Aが布池店の営業区域全体の管理を担当していた事実は認められない。⑦ また、役職手当の点に関し、被告代表者尋問の結果中には、辞令を出した主任への同手当の支給を認める旨の部分があるが(平成13年7月31日付同代表者調書5、6頁)、同尋問時点の主任は、前示③判示のとおり支店全体の管理責任者であり、従前の所長に相当する役職者であるから、これへの役職手当の支給は異とするに当たらず、前示④の認定を左右できない。
更に、原告Aは、対比表3(1)①アc(a)ないし(d)のとおり役職手当が支給さるべき旨を主張し、原告A本人の供述(第2回)中には、実際は、本件和解当時から主任に役職手当が支払われていたと聞いている旨の部分があるが、上記供述の内容は極めてあいまいで措信できないし、また双方の互譲によって成立する和解契約では、各和解条項は相互に対価関係を形成しており、和解条項の一部のみが錯誤無効となることもないから(原告Aが本件和解全体の無効を主張するのでないのは明らかである)、以上によれば、上記(a)(b)の主張は直ちに採用できず、また上記
(c)(d)の主張も採用できない。
⑧ 他方、被告は、原告Aの定年到達と、本件供述に基づく懲戒解雇を主張しているが、それぞれ下記(2)と後示6で判断することとする。
(2) 原告Aの定年年齢及び退職金の加入口数(前示第2、2(3)①イ、キの争点について)
① この点について、被告は、まず対比表2(2)アのとおり、(a)60歳到達後も65歳まで雇用を継続する制度があるから、本件定年変更は、就業規則を不利益変更ではなく、(b)退職金加入口数も120口を維持している旨主張しているが、本件変更Ⅱ後の本件就業規則(3)によれば、定年後の再雇用は、嘱託の身分で、最大1年以内の期間を定めての労働契約であり、更新するか否かは被告の意向により決定されるもので(同規則32条(2)(3))、定年前のような雇用の保障はなく、退職金の加入口数を120口のままとするとの扱いも恩恵的措置であって、将来同様の扱いが続く保障はないというべきである。
したがって、(ア)本件定年変更及び、(イ)前示(1)③のとおり、本件規則・規定(2)当時の主任を本件規則・規定(3)での専業従業員へと移行させた結果、別紙9ー2ー4退職金支給規定により120口だった前者の退職金加入口数が、別紙10ー2ー6退職金規定7条により同80口になるのは、原告Aにとって不利益な就業規則の変更であり、被告の上記主張は採用できない。
② 次に、被告は、対比表第1、2(2)イのとおり、本件定年変更には合理性がある旨も主張しており、乙23、被告代表者の供述(第1、2回)中には、これに沿う部分がある。
しかしながら、60歳を超える従業員の体力が新聞配達業務等への従事に支障があるまでに低下していることや、これら高齢の従業員の雇用継続によって被告の経営困難を生じる等の事情を具体的に認めるだけの証拠はないといわざるを得ず、本件定年変更に十分な必要性があるとは認め難い。また、被告が主張する前示①(a)の雇用継続制度も、同認定のとおり従業員を不安定な立場に置くものであって、代償措置としては不十分というべきである。
したがって、被告に有利な前示各証拠は直ちに採用できず、他に本件定年変更に合理性を認めるだけの証拠はない。
③ 以上によれば、本件定年変更は無効というべきであるから、原告Aの定年年齢は、依然として本件就業規則(2)25条所定の満65歳であり、退職金加入口数は従前と同じ120口というのが相当である。
一方、本件就業規則(2)25条、26条によれば、従業員は定年に達した時点で退職するところ、年齢計算に関する法律に従えば、原告Aは、平成15年の誕生日の前日の同年7月9日の満了により満65歳に達し、その経過により退職するが、それまで被告との雇用関係が続くというべきである。
(3) 平成8年4月1日から同年9月までの原告Aの契約条件(前示第2、2(3)①ウa、オ、カの争点について)
① 原告Aに支払われるべき賃金(ただし、以下(5)までと次項2では、労基法上の割増賃金及び賞与・賞金を除く)の金額・内容について検討する。ア この点については、前示(1)⑤判示のとおり、本件変更原則が認められるから、まず平成8年3月当時の原告Aの給与につき判断するのが妥当であり、これを次項以下で検討する。
なお、上記特段の事情に関し、本件給与規定(3)には、別紙10ー2ー2割増賃金(4)但書に、午前3時30分から5時までの早朝割増は基本給並びに朝刊配達給に含まれている旨の本件早朝割増条項(1)が定められているが、労基法上このような就業規則の条項が有効であるためには、問題の早朝割増賃金に当たる部分が明確に区分されており、労基法所定の計算方法による割増賃金額の算定が可能なことを要すると解すべきところ、本件早朝割増条項(1)では、早朝割増賃金部分が区分されておらず、法定の割増賃金がこれを上回るか否かを直ちに計算できないから、同条項それだけで労基法所定の早朝割増賃金の有効な支払があると認めることはできない。しかしながら一方、後示(4)①認定のとおり、同条項の存在は、本件変更Ⅲの有効性を判断するうえで考慮す
べき一事情に当たるというのが相当であるから、この点については、当該箇所で再び論ずることとする。
イ そこで、本件変更Ⅱの直前である平成8年3月当時の原告Aの給与について検討する。
a この点について、原告Aは、対比表第1、3(1)①イのとおり給与の金額・内訳
を主張しているところ、前示第2、1(2)②(別紙7和解条項添付のA給与明細表)及び同(6)①の各事実、弁論の全趣旨によれば、(a)本件和解で合意された原告Aの給与には、基本給18万円、年齢給7万7000円、勤続給4000円、家族手当2万円が含まれていたが、(b)平成8年3月分当時、年齢給は7万8000円、勤続給は5000円に増額されており、これらについては、本件和解後に昇給があったと認めるのが相当である。また、(c)当時の給与には、本件和解で合意された家族手当2万円の支払がなく、他方住宅手当の名目で2万円が支給されているが、これが上記家族手当に代わる趣旨で払われたことは、当事者間に争いがなく、この住宅手当は、実質的に家
族手当にほかならないと解される(以下、便宜上これを住宅手当と表示することがある)。
b そうすると、原告Aの平成8年3月分の給与には、基本給18万円(前示第2、1(6)①のとおり、実際には基準給名目で支給されているが、給与規定上の基本給に相当する。以下単に基本給と表記する)、年齢給7万8000円、勤続給5000円、住宅手当2万円が含まれ、いずれも固定給の性質を有すると認められる(以上合計28万3000円)。また、このうち住宅手当は、上記aのとおり家族手当の実質を持つから、他に特段の主張立証のない本件では、労基法37条4項が適用され、労基法上の割増賃金の基礎となる賃金(以下単に基礎賃金という)には含まれないというべきであるが、それ以外の給与合計26万3000円は、いずれも基礎賃金に算入されるというのが相当である。
c 上記のほかに、原告Aは、配達手当、集金手当、完納手当の受給権を主張しているので、これらについて検討する。
(ア) まず、配達手当及び集金手当についてみるに、前示第2、1(5)①のとおり、原告Aは、本件和解後から平成8年3月当時まで、本件給与規定(1)及び(2)中の、(a)2条(1)B(イ)配達手当所定の朝・夕刊共(本紙+協力紙)200部以上又は2時間以上の配達と、(b)2条(1)B(ロ)集金手当所定の証券枚数200枚以上の各要件を満たす内容の配達及び集金業務を行なっていたから、上記給与規定に基づき、配達手当及び集金手当各2万円の受給権があると認められるが、他方これは、同原告が上記支給要件を満たす配達及び集金業務を実行している限りにおいて支給されるものであるから、固定給とは認められず、対比表第1、3(1)①イ中のその旨の主張は直ちに採用できない。
一方で、これらは、労基法施行令21条所定の除外賃金に該当せず、労基法37条1項中の通常の労働時間又は労働日の賃金に含まれるというのが相当であるから、いずれも基礎賃金に算入される。
以上に対し、被告は、対比表第1、3(1)②アcのとおり、(ア)被告には配達手当と集金手当を支給するか否かの裁量権がある、(イ)配達手当、集金手当が出ないことは、本件和解でも合意ないし前提とされていたとの旨を主張しているが、本件給与規定(1)及び(2)の各2条(1)B(イ)(ロ)は、各手当の要件を上記(a)(b)のとおり明確に定め、支給額も各2万円と一義的に規定しているから、業務実態を考慮してとの文言をもって、被告に全面的な裁量権があると認めるのは妥当ではなく、また本件和解には、同添付のA給与明細表掲記の支給項目以外の給与は支給しない旨の条項はなく、かえって同3条(4)で、

その他、原告らに対する処遇は、被告の就業規則による

旨が定められているのであるから、被告の上記主張は、いずれも直ちに採用できない。
(イ) 次に、完納手当をみるに、まず、これを定めた本件給与規定(1)及び(2)の各2条(2)B(イ)の解釈に争いがあるが、同条項は、集金額の月内80%の要件だけを満たす場合にも、所定の手当を支払う旨規定したものと解せられ、被告主張の解釈は直ちに採用できない。
そこで、原告Aが、同主張のとおり集金すべき金額に対し月内80%の集金を達成していたか検討するに、甲20の1ないし15には、平成6及び7年の布池店の集金状況につき、これに沿うような記載があるが、(a)前示(1)⑥のとおり、当時の原告Aの担当は布池店の営業区域の一部だけであり、同号証が直ちに同原告個人の集金状況を示すものではないし、(b)同号証中、月内80%を満たす記載があるのも一部に過ぎず、(c)本項で問題としている平成8年3月当時の資料でもないから直ちに採用できず、原告Aの上記主張には理由がない。
d 以上を総合すれば、平成8年3月当時の原告Aに支払われるべき給与の金額・内訳は以下のとおりであり、総支給額は32万3000円、うち固定給は、配達手当及び集金手当を除く28万3000円で、基礎賃金は、住宅手当を除く30万3
000円というのが相当である。
基本給18万円
年齢給7万8000円
勤続給5000円
住宅手当2万円
配達手当2万円
集金手当2万円
e なお、本件和解による原告Aの給与中には、前示d認定以外に、同添付のA給与明細表所定の時間給2万円が含まれているが、対比表第1、3(1)①ウによれば、同原告は、これを時間外割増賃金としてのみ主張する趣旨が明らかであるから、本項で考慮することはしない。また、前示dの基本給についても、原告A主張の18万円(対比表第1、3(1)①イ)を前提に認定することとする。ウ 以上に基づき、平成8年4月以降、支払われるべき給与につき検討する。aまず、この時期に実施された本件給与規定変更の趣旨、内容等について検討するに、前示(1)②ウ、オ認定の事実、乙17、被告代表者の供述(第1、2回)、弁論の全趣旨によれば、同規定変更を含む本件変更Ⅱは、給与体系中に能力主義の概念を取り入れて年齢給、勤続給を廃止し、同様の考え方等から定年年齢の引下げを行なうとともに、能力給としての業務手当を導入し、他面、これと、集金業務の重要性等を考慮して増額した集金手当により、年齢給、勤続給の廃止分を埋め合わせようとするものであり、また従前の配達手当については、これを新たな基本給や業務手当の中に組み込んだものと認めるのが相当である。
b 次に、平成8年4月当時現実に支払われていた給与をみると、うち上記イdに対応する支給項目は、基本給が18万円、集金給として4万円、家族手当として1万円、住宅手当として5万円、業務手当が2万5000円で、その総支給額は30万5000円である(前示第2、1(6)②)。
そこで、まず上記集金給4万円の性質を検討するに、この金額を本件給与規則(3)7条に当てはめると、同条中のB(集金金額100万円以上、証券枚数200枚以上)の支給条件に相当することになり、前示c(ア)(b)の原告Aの集金業務の実態にほぼ沿う内容とみられるから、これと前示a認定の事実によれば、同集金給4万円は、本件給与規定変更で、従前の集金業務に対する手当が積増しされた結果、性質はそのままに上記金額に増額されたものと認められ、前示イc(ア)第2段判示と同様、基礎賃金には算入されるが、固定給ではないというのが相当である。次に、上記住宅手当5万円をみるに、本件給与規定(3)5条③、10条には、従業員負担の家賃の70%を基準として5万円の範囲内で住宅手当を支給する旨の規定があるが、甲11の1によれば、原告Aの社宅費は5000円であり金額的に合致せず、同規定に基づく支給とはみられない。結局、この住宅手当は、本件変更原則と同様の見地から、本件給与規定変更による賃金減額の補填のため支払われたものと認められるから、固定給であり、同時に基礎賃金にも該当するというべきである。一方、上記家族手当1万円は、従前同様に家族手当であり、乙12によれば、原告Aの扶養していた二男に関する手当に当たると認められ、上記業務手当とともに、原則として固定給に当たるが、基礎賃金との関係では、業務手当は、基礎賃金に算入され、家族手当は、労基法37条4項により算入されないというべきである。c したがって、上記bを総合すると、平成8年4月の当時、現実に原告Aに支払われていた上記b冒頭の給与合計30万5000円のうち、固定給は、集金給を除く26万5000円であり、また基礎賃金となるのは、家族手当を除く29万5000円になる。
そこで、これを前示イdの平成8年3月当時の原告Aに支払われるべきだった給与の金額・内訳(総支給額32万3000円、うち固定給28万3000円、基礎賃金30万3000円)と対比すると、いずれも後者の方が高額であるから、本件変更原則を適用するのが相当であり、同年4月以降に支払われるべき給与も、各同額になるというべきである(内訳は下記のとおり)。ただし、上記bの現実に支払われた固定給26万5000円のほかに、更に1万8000円の固定給(うち基礎賃金分が8000円)があることとなるが、本判決で、その性質等を判断しなければならない必要性は認められない。
基本給18万円
集金給4万円
家族手当1万円
住宅手当5万円

業務手当2万5000円
d 以上の認定に対し、原告Aは、基本給自体が、本件給与規定変更前の年齢給・勤続給を含む金額26万4000円を下回ることは許されず、これに本件給与規定(3)6条(1)所定の主任の給与区分を適用すると27万円になるとして、全体でも、上記cの認定より多額の給与が支払われるべきである旨を主張しているが、本件変更原則は、本件変更Ⅱ以前の給与全体と以後の給与全体とを対比して適用すべきものであって、個々の支給項目毎にこれを考慮するのは妥当でないから、上記主張は直ちに採用できない。
また、原告Aは、平成8年4月分の給与に含まれるべき支給項目として、対比表第1、3(1)ウの内容の住宅手当、役職手当、配達手当を主張しているので、以下検討する。
(ア) 住宅手当につき、原告Aは、本件給与規定(3)10条を適用して、毎月負担している社宅費5000円の70%相当の3500円が支給さるべきである旨を主張しているが、上記規定が、本件就業規則(3)48条(5)及び別紙10ー1ー2宿舎貸与規定に基づいて、被告が従業員に社宅等を貸与した場合を除外していることは明らかであって、上記主張は失当である。
(イ) また、原告Aは、本件規則・規定(3)の実施以後も自己が主任の役職にあることを前提として、役職手当4万円の受給権を主張しているが、その前提を認めることができないのは、前示(1)③に判示したとおりである。(ウ) 更に、同原告は、配達手当2万円も主張しているが、本件給与規定変更後、同手当が新たな基本給や業務手当の中に組み込まれていることは、前示a認定のとおりであるところ、配達手当を基本給等に組み込んで固定給化することは、原告Aに不利益な扱いともいえないから、この点に関する上記主張も直ちに採用できない。
e そのほか、原告Aは、集金給を、現実に支払われた4万円より少額の3万円と主張しているが、本件変更原則が適用される前記場合においては、実質的に、この主張は、両者の差額1万円に相当する固定給を主張するものにほかならず、直ちに採用できないし、逆に前示認定が弁論主義に反するものでもない。f 反対に、被告は、対比表第1、5(2)①のとおり、集金給には時間外労働に対する支払が含まれており、少なくとも本件和解で合意された時間外手当2万円は、基礎賃金から除外される旨主張しているが、(a)前示b第2段、同イe認定のとおり、前示集金給に本件和解による時間外手当が含まれているとは認め難いし、(b)このような集金給により時間外労働に対する有効な支払があるといえるためには、前示ア第2段に判示したのと同様に、当該割増賃金部分をその他の部分から区分できることが必要であるところ、本件ではそのような区分は認められないから、結局本件給与規定(3)所定の集金給中に時間外労働に対する支払が含まれているとは認められず、全額基礎賃金に算入するのが相当である。
② 次に、平成8年4月から10月までの期間中の労基法上の割増賃金算定の基礎となる労働時間(以下基礎労働時間という)について検討する。
ア 平成8年4月1日以降の原告らの就労に適用される本件就業規則(3)12条、16条及び本件給与規定2条(1)によれば、原告らの給与は月給制で、かつ月間の所定労働時間が月によって一定でないから、その基礎労働時間は、労基法施行令19条1項4号により、年間の所定労働時間を平均して1か月の所定労働時間を計算する方法で算出しなければならない。また、上記所定労働時間とは、労働者が労働の義務を負う時間をいい、実労働時間を指すと解するのが相当であり(労働基準局長通達昭和26年8月6日基収2859号参照)、形式的には労働義務が課されていても、実際にはこれが免除されている場合には労働時間に算入されないというべきであるが、他方、上記方式によって算定される労働時間が法定労働時間を超過する場合には、当該法定労
働時間に限られるというべきである。
イ 一方、本件就業規則(3)によれば、被告における労働時間は、原告らのように労働時間を1日2回に分割する業務に従事する場合、同規則12条(1)Ⅰ、同(2)のとおり、始業時刻を異にするAないしC勤の3種類の労働時間帯が定められて、原則として輪番制で勤務することが決められているが、弁論の全趣旨によれば、実際には原告Aの所定労働時間帯は、そのうちA勤(午前3時30分から午前7時までと、午後2時30分から午後6時まで。労働時間合計7時間)の形態に限られていると認められる。
ウ 以上に基づき、原告Aの所定労働時間を検討する。

a まず、労基法35条所定の法定休日をみるに、本件就業規則(3)16条(1)によれば、被告における法定休日は4週を通じて4日とされているところ、前示第2、1(5)②のとおり、平成8年以前は、原告Aにつき毎週日曜日と指定されており、年間で52日となるから、これらを所定労働日数から控除するのが相当である。b 次に、国民の祝祭日と新聞休刊日について検討するに、国民の祝日に関する法律及び弁論の全趣旨によれば、当時これらは年間14日と12日あって、振替休日も考慮すると、その性質上いずれも法定休日である日曜日とは重複しないと認められるところ、これらの日(国民の祝日が振替になった場合は、当該振替休日)は、労基法所定の法定休日には該当せず、また就業規則を精査しても、これらを休日とする旨の明示的な規定は見い出すことができないが、実際には、それぞれ夕刊と朝刊の配達が行なわれていない状況にある。
そこで、これら配達業務のない所定労働時間(各々午後と午前の3時間30分)について、原告Aの労働義務が免除されていると解すべきか否かについて検討するに、本件和解添付の職務記述書によれば、同原告の職務には、配達以外に、集金、教育、部数管理、事務の作業が含まれており、また本件給与規定(3)6条(2)によれば、同原告の職位である専業2の職務として同様の内容が規定されているところ、(a)配達がなく、他の従業員もあまり出勤していないと考えられる新聞休刊日の午前の勤務時間帯(午前3時30分から午前7時まで)に、上記の職務を行なうことは実際上困難かつ無意味というべきであるが、(b)国民の祝日の午後の勤務時間帯(午後2時30分から午後6時まで)には、少なくとも集金や部数管理の作業を行なうのに格別の不都合は
認められないし、また法定労働時間の枠までに余裕のあるこのような日に就業規則所定の職務を行なわずにいながら、他の日にこれを行なって時間外割増賃金を請求できる結果になるのは妥当とはいえないというべきである。
以上によれば、(ア)これが設けられた趣旨も考慮すれば、新聞休刊日には、原告Aの上記イの所定労働時間のうち午前の労働義務が免除され、その時間帯は実労働時間でなくなっているから、前示ア判示のとおり、年間の所定労働時間の計算上、その時間数を控除するのが相当であるが、(イ)国民の祝日の午後の勤務時間帯は、労働義務が免除されていると解することはできず、時間数控除の必要はないというべきである。
c したがって、以上abに基づき、平成8年4月から同年9月までの原告Aの年間所定労働時間を計算し、更にこれを平均して1か月の所定労働時間を求めると、以下のとおり179・083333時間となるが(年間の所定労働時間は2149時間)、これは、前示第2、1(8)の1週44時間の規制に基づく当時の法定労働時間(年間約2294時間)を上回らない。
{(365-52)×7-(12×3.5)}÷12=179.083333また、同様の前提によれば、このうち早朝勤務を含む午前中の勤務回数は、全体から法定休日と新聞休刊日を除いた年間301日となる。
(4) 平成8年10月1日から平成10年7月までの原告Aの契約条件(前示第2、2(3)①ウb、オ、カの争点について)
① 支払われるべき賃金の金額・内容
ア まず、本件変更Ⅲの効力についてみるに、本件給与規定(4)中には、本件早朝割増条項(2)があって、就業規則所定の労働時間のうち、労基法37条3項所定の早朝深夜割増賃金の対象となる時間帯(本件では、午前5時以前の部分が問題となる。以下早朝割増時間帯という)の割増賃金について、早朝勤務給を定めているところ、被告は、これは有効な就業規則の定めであって、同条項に基づき、従前基本給等に含まれていた同内容の割増賃金を独立させた旨主張しているので、この点につき検討する。
イ 前示第2、1(1)②、同(4)の各事実、甲1、甲2、乙1、乙2、乙6、乙7、乙22、原告代表者尋問の結果(第1回)、前後示採用できない部分を除く原告A本人の供述(第1回)によれば、以下の事実が認められる。
a 新聞販売業界では、一般家庭の出勤前に朝刊を配達するため、通常、早朝割増時間帯から配達業務を開始しているが、法定の早朝割増賃金については、基本給等に含まれているという考えが強く、別個にその旨の手当を設けたり、個々に早朝割増時間帯の労働時間を集計して割増賃金を支払ったりしないのが一般的慣行であり、昭和56年から平成3年2月まで、前示第2、1(1)②のとおり新聞販売店を自営していた原告Aも、従業員に早朝割増賃金を支払っていなかった(平成9年7月7日付同本人調書34項。なお、本訴途中に試みられた和解の途中では、原告A側
から、自営中、従業員に午前5時以前に配達等をさせたことはない旨の意見が出ているが、名古屋地域での朝刊配達の実情に鑑み、容易に採用できない)。b 平成2年設立後、被告では、本件就業規則(1)及び(2)の7条(1)において、朝刊配達のための就労時間を、いずれも午前3時30分から午前6時30分までと定めていたが、上記と同様の考えから、同就労時間中の早朝割増時間帯に含まれる部分について格別の規定を置いておらず、基本給等に含まれるものとして処理してきた。
c その後、本件変更Ⅲを行なうに当たり、被告では従業員側と協議して、必要な変更等について合意に達し(乙1・1枚目裏)、過半数以上の従業員の代表者の同意を得たうえ、平成8年4月1日から本件規則・規定(3)を実施し、その中の別紙10ー2ー2割増賃金(4)深夜労働割増賃金の但書として、早朝割増時間帯の割増賃金は基本給等に含まれている旨の本件早朝割増条項(1)が定められたが、この条項には前示①ア第2段判示のとおり、労基法上有効と認められるのに必要な割増賃金部分の区分が設けられていなかった。
d 次いで、被告は、上記早朝割増賃金を基本給等から独立させることにし、平成8年10月本件変更Ⅲを行なって、本件給与規定(4)の5条、6条(2)で早朝勤務給を定めた本件早朝割増条項(2)を新設した。
そして、原告Aについて、被告は、当時の基本給18万円中、早朝割増時間帯の割増賃金を除く部分を16万5000円として計算した早朝割増賃金が以下のとおり1万2321円と算定されることから(対比表第1、5(2)②参照)、同原告の早朝勤務給を、これを上回る1万5000円と決定し、平成8年10月分以降、同額の早朝勤務給を支給するとともに、基本給から同額を減額し、結局総支給額は同一のままだった。
(165,000+40,000+25,000)÷(7×26)×0.25×(1.5×26)=12,321e 被告では、従業員の採用時に、早朝割増時間帯も含む所定の労働時間を説明しており、一方、以上のとおり、早朝割増賃金については、これを基本給に含まれているとするか、早朝勤務給として基本給から独立させる一方、同額を基本給から控除する扱いをしてきたが、これらについて、原告ら以外の従業員から異議が出たことはない。
ウ 以上の事実によれば、本件早朝割増条項(2)と、これによる基本給の減額及び早朝勤務給の新設は、(ア)前示(3)①アのとおり、本件早朝割増条項(1)が有効とは認められないため、本件変更Ⅲ以前であれば、早朝割増時間帯に就労した従業員には、所定の給与と別に、労基法上早朝割増賃金の請求権があったものが、その後は同請求権を失うことになった点で、従業員に不利益な就業規則の変更というべきであるが、(イ)他方、前示イa、c認定のとおり、(a)基本給等に早朝割増賃金を含む旨の被告の取扱は、新聞販売業界の一般的慣行にならったものにすぎず、(b)従業員との協議の結果、その旨明示的に定めた本件早朝割増条項(1)に同意が与えられ、本件給与規定変更に取り入れられたなどの事情が認められるのであるから、そのほか前示イeの点も考慮す
れば、本件早朝割増条項(2)に基づく早朝勤務給の算定が相当なものである限り、このような変更による従業員の前示(ア)の不利益を考慮しても、前示基本給の減額等には合理性があるというのが妥当である(本件早朝割増条項(1)は、従業員との協議によっても是認されたもので、これが早朝割増賃金部分を分離しなかったのは、単に規定の方法が拙劣だっただけであり、従業員の利益を実質的に害する内容とはいい難い)。
エ そして、前示(3)①ウc認定の平成8年4月当時の基礎賃金額30万3000円、前示(3)②ウc認定の年間所定労働時間2149時間及び早朝割増時間帯の勤務回数301回と、1回当たり1時間30分の早朝割増時間帯の所定内労働時間に基づき、年間の早朝割増賃金を平均する方法で1か月の平均早朝割増賃金額を求めると、以下のとおり、1万5914円(円未満切捨。以下同じ)となるから、前示イdの被告の早朝勤務給の計算には相当性があるというのが妥当であり、したがって本件変更Ⅲに基づく基本給の減額は有効というべきである(なお、この計算で認められる早朝割増賃金の不足分については、後示3(2)で考慮するとおりである)。{(303,000×12)÷2,149×0.25×(1.5×301)}÷12=15,914オ したがって、以上の点を考慮すると、(a)平成8年10月以降、原告Aに支払われるべき給与の金額・内訳は以下のとおりであり(ただし、それ以外の固定給が1万8000円あり、うち8000円は基礎賃金でもある)、総支給額は32万3000円、うち固定給28万3000円、基礎賃金は前示(3)①ウcの30万300
0円から更に早朝勤務給を除いた28万8000円となるが、一方、(b)弁論の全趣旨によれば、前示(3)①ウb末尾の原告Aの二男は、平成9年4月以降その扶養をはずれたと認められるから、これ以降家族手当は全額不支給となり、総支給額は31万3000円、うち固定給27万3000円となる(基礎賃金は上記と同額)。基本給16万5000円
早朝勤務給1万5000円
集金給4万円
家族手当1万円
住宅手当5万円
業務手当2万5000円
カ 以上の認定に対し、原告Aは、平成8年10月以降の給与につき、対比表第1、3(2)①のとおり主張しているが、このうち、(a)本件変更Ⅲにより同月以降の同原告の基本給が27万5000円となったとの部分は、これを認めるに足りる証拠がなく、(b)その余の主張のうち、前示オの認定に反する部分も前示(3)①のとおり採用できない。
② 基礎労働時間等
ア 平成8年10月から同年12月まで
上記の期間中、原告Aの指定休日は日曜日であるから、結局その基礎労働時間の認定は、前示(3)②の認定と同様となって、同ウcのとおり、月間の所定労働時間は179・083333時間(年間の所定労働時間は2149時間)、早朝勤務の回数は、年間301日相当の割合となる。
イ 平成9年1月から平成10年7月まで
a前示(3)②アの前提に基づき、原告Aの所定労働時間を検討するに、まず労基法35条所定の法定休日をみると、前示第2、1(5)②のとおり、平成9年1月以降は毎週火曜日と指定されており、年間で52日となる。
b 次に、日曜日は、年間52日で夕刊の配達がなく、午後の勤務時間(3時間30分)は、労働義務が免除されていると考えるのが妥当であるから、これを年間の所定労働時間の計算から控除すべきである。
c 更に、新聞休刊日につき検討するに、これは、前示(3)②ウbのとおり年間12日あって、日曜日とは重複しないが、法定休日の火曜日との重複があり得るところ、計算の簡便のために、前示平成9年1月から平成10年7月までの期間を通じ、ウィークデイ6日間中に均等に分布していると考えるのが妥当であり、この前提で計算すると、新聞休刊日は、年2日の割合で法定休日の火曜日と重複するから、結局、年間所定労働時間の算定に当たっては、年10日につき午前の勤務時間帯の労働義務が免除されるとして、その時間数を控除するのが相当である。これに対し、国民の祝祭日について、時間数控除の必要がないことは、前示(3)②ウb(イ)のとおりである。
d したがって、以上に基づき、平成9年1月から平成10年7月までの期間について原告Aの年間所定労働時間を計算し、更にこれを平均して1か月の所定労働時間を求めると、以下のとおり164・5時間となり(年間の所定労働時間は1974時間)、これは、前示第2、1(8)の1週44時間ないし40時間の規制に基づく当時の法定労働時間(年間約2294時間ないし約2085時間)を上回らない。
{(365-52)×7-(52×3.5+10×3.5)}÷12=164.5また、このうち早朝を含む午前中の勤務回数は、全体から法定休日と、更にこれと重複しない新聞休刊日を除く年間303日の割合となる。
(5) 平成10年8月1日以降の原告Aの契約条件(前示第2、2(3)①ウc、オ、カの争点について)
① 本件不就労の経過等
この点につき、原告Aは、対比表第1、3(3)①アのとおり、本件不就労は、被告から定年退職扱いを受けたことによるとして、就労拒絶を前提とする主張をしているところ、被告は、本件定年変更の有効性を主張するのみで、就労拒絶の点に関する認否が明確ではない。しかしながら、被告も対比表第1、3(3)②アのとおり、現実の就労がないことを理由としては、時間外労働の割増賃金の発生を争うのみであって、実質的には就労拒絶の主張を争わないものとみるのが相当であり、以下これを前提に判断する。
② 支払われるべき賃金の内容・金額
アこの点については、前示(4)①に判示したところと同様に考えるのが妥当であるか
ら、平成10年8月以降、原告Aに支払われるべき給与の金額内訳は、結局同オ(b)認定と同じく以下のとおりとなり(ただし、これら以外の固定給が1万8000円あり、そのうち8000円は基礎賃金でもある)、総支給額は31万3000円、うち固定給が27万3000円、基礎賃金28万8000円となる。基本給16万5000円
早朝勤務給1万5000円
集金給4万円
住宅手当5万円
業務手当2万5000円
イ これに対し、原告Aは、対比表第1、3(3)①イのとおり、より高額の給与を主張しているが、(a)このうち、集金給として、本件和解で合意された時間外手当2万円相当を請求する部分は、前示(3)①ウb第2段認定のとおり、集金給に従前の時間外手当等が含まれているとは認められないから、前提を欠き直ちに理由がなく、(b)その余の主張中、前示アの認定に反する部分は、前示(3)①、同(4)①に判示したところと同様に採用できない。
反対に、被告は、本件定年変更の有効性を主張するが、これも前示(2)③のとおり採用することができない。
③ 基礎労働時間等
この点については、前示(4)②イdと同様に判断するのが相当であるから、1か月の所定労働時間は、164・5時間(年間の所定労働時間は1974時間)で、早朝勤務の回数は、年間303日の割合となる。
2 原告Bの契約上の地位及び契約条件(前示第1、2(1)の請求について)(1) 同原告の契約上の地位(前示第2、2(3)②アの争点について)① この点について、原告Aは、現在自己が主任である旨主張し、被告は、対比表第2、1(2)のとおり、これを争っている。
そこで、まず本件和解の内容をみるに、同和解添付のB給与明細表では、その基準給が専業1Aー2とされており、原告Bと被告とは、本件和解において、同原告の従業員としての区分を専業従業員と、またその職位を専業1と合意したものと認められる。
そして、前示1(1)②認定の職位等の内容及びその変遷、特に同イないしエ認定の事実によれば、(a)本件規則・規定(1)(2)当時の専業1は、通常所長・主任の配偶者で店内の業務万般を補佐する者と規定されており、その給与は、基本給が従業員中では最低ランクの5万円か10万円だったが、(b)これに対し、本件規則・規定(3)における従業員の最下位の職位である専業1は、配達集金・営業・事務のうち、どれかを専門にできる者と規定され、その給与は、基本給が上記(a)にほぼ相当する5万円から10万円に定められていることが認められ、以上によれば、本件規則・規定(1)(2)当時の専業1の職位と同(3)における専業1の職位は、ほぼ相同するものと認められるから、原告Bは、現在も専業従業員の地位にあると認めるのが相当である。
② これに対し、被告は、原告Bが本件就業規則(3)12条の所定労働時間に満たない短時間の就労しかしていないから、同規則10条(5)④の短時間従業員たる副業職に該当すると主張しているが、本件和解後、同原告が、これによって定められた職務内容の全部又は一部を行なっていないとか、その職務内容が軽減されたとかの事実を認めるだけの証拠はないから、原告Bの地位を専業従業員と合意した本件和解の効力を直ちに否定することはできず、被告の上記主張を採用することはできない。
③ そして、上記のとおり、本件変更Ⅱ後も原告Bの職務内容が軽減等された事実は認められないから、同原告にも、前示1(1)⑤判示の本件変更原則と同様の考え(以下同じく本件変更原則という)を適用するのが相当であり、特段の事情が認められない限り、単なる就業規則等の変更によっては、その労働条件を不利に変更することはできないというのが相当である。
(2) 原告Bの定年年齢及び退職金の加入口数(前示第2、2(3)②イ、キの争点について)
前示1(2)認定のとおり、本件定年変更は無効であるから、原告Bの定年年齢は、本件就業規則(1)(2)所定の満65歳であって、昭和16年生れの同原告は、平成18年の誕生日の前日である同年2月25日の経過により被告を退職するというのが相当である。
また、前示(1)認定のとおり、原告Bは、本件変更Ⅱ以降も依然として専業従業員で
あるから、その退職金口数は、別紙10ー2ー6退職金規定7条により80口というのが相当である。
(3) 平成8年4月1日から同年9月までの原告Bの契約条件(前示第2、2(3)②ウa、オ、カの争点について)
① 支払われるべき賃金の金額・内容
ア この点につき、前示(1)③のとおり本件変更原則を考慮すると、原告Bの場合も、まず平成8年3月当時の給与の金額・内容について判断するのが妥当であり、これをみると、前示第2、1(2)②(別紙7和解条項添付のB給与明細表)及び同(7)①の各事実、弁論の全趣旨によれば、(a)本件和解で合意された原告Bの給与は、基本給10万円、勤続給3000円だったものが、(b)平成8年3月分当時、基本給は10万1000円、勤続給は4000円に増額されており、本件和解後にそれぞれ昇給があったと認めるのが相当である。
したがって、平成8年3月分の原告Bの給与は、以上のとおりであり、総支給額は10万5000円で、その全額が固定給の性質を有し、また、いずれも基礎賃金に算入されるというのが相当であり、原告Bの対比表第2、3(1)①の主張のその余の部分は直ちに採用できない。
集金給と住宅手当として各3万円、調整手当として6000円、配達給として3万9000円が支払われており、総支給額は10万5000円であるところ(前示第2、1(7)②)、これらの支給項目と金額を勘案すると、本件給与規定(3)の中に、直ちにその根拠となるような規定を見い出すことができないが、結局、弁論の全趣旨によれば、これらは、本件変更Ⅱ後、原告Aに対し住宅手当名目で5万円が支給されたのと同様に、その名称にかかわらず、本件変更原則と同様の見地から、本件給与規定変更による賃金減額の補填のために支払われたものと認めるのが相当である。
したがって、これらは上記アの給与と同じく全額固定給であり、同時に基礎賃金に該当するというべきであるが、上記のとおり、その名称は、特にこれら手当の法的性質を表すものとはいえず、またこれを的確に決定することも困難であるから、本訴においては、単に固定給として確認することとする。そして、その一方、これら総支給額や固定給額、基礎賃金額は上記アで認定したところと結局同額であるから、それ以上、本件変更原則を適用する必要はないこととなる。
② 基礎労働時間等
ア まず、原告Bの勤務形態等についてみるに、乙19、弁論の全趣旨によれば、同原告は、原告Aと同じく、本件就業規則(3)12条(1)ⅠのうちA勤の勤務形態でのみ就労しており、またその休日は毎週木曜日と指定されていたと認められる。そして、前示(1)認定のとおり、原告Bは、専業従業員であるから、本件就業規則(3)の定めるフルタイムの所定労働時間が課せられているというべきである。イ そこで、上記のほか、前示1(3)②アの前提に基づき、原告Bの所定労働時間を検討するに、同原告の場合、木曜日が労基法所定の法定休日であるから、前示1(4)②イと同様に考えるのが妥当であり、結局同dのとおり、その1か月の平均所定労働時間は164・5時間(年間の所定労働時間は1974時間)で、早朝勤務の回数は、年間303日の割合となる。
(4) 平成8年10月以降の原告Bの契約条件(前示第2、2(3)②ウbオ、カの争点について)
① 支払われるべき賃金の金額・内容
まず、本件変更Ⅲの効力について検討するに、原告Bについても本件早朝割増条項(2)が適用になること、同条項の新設自体は合理的理由に基づく就業規則の不利益変更であって有効であることは、原告Aの場合と同様である(前示1(4)①アないしウ)。しかしながら、原告Bについては、本件証拠を精査しても、本件変更Ⅲの後に、基本給の一部を独立させて早朝勤務給とした事実を認めることができないから、結局支払われるべき給与の内容・金額は、前示(3)①で判示したところと同一となるというべきである。
② 基礎労働時間等
これについては、前示(3)②イとまったく同様の判断となり、1か月の平均所定労働時間は164・5時間(年間の所定労働時間は1974時間)で、早朝勤務の回数は、年間303日の割合となる
3 原告Aの未払賃金等(前示第1、1(2)ないし(4)の請求について)(1) 時間外労働及び所定労働時間内の早朝労働の時間数(前示第2、2(3)①エの争点について)

① まず、原告Aの割増賃金請求の性質につき確認的にみるに、同原告は、(a)同請求を始めた本訴の和解交渉中、役職手当の支給対象者に時間外割増賃金を支払わない旨定めた別紙10ー2ー3諸手当支給基準(1)を、労基法違反であり、同法所定の時間外手当を支払うべき旨主張し(甲57・3項(5)④)、(b)基礎賃金の計算につき、労基法施行令19条の適用を主張しており(対比表第1、6(1)①)、労基法に基づく割増賃金を請求するものと認められるから、以下これを前提に判断する(前示第2冒頭の整理も同様である)。
② 次に、労基法上の労働時間の意義等につき検討するに、労基法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、この労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かによって客観的に定まるものであって、就業規則等の定めのいかんにより決定されるものではない。
そして、労働者が使用者の指揮命令下にあるというためには、当該労働が個別又は包括的な業務命令に基づくことを要し、労働者がその就業の時間、内容について一定の裁量を有する場合において、当該業務に通常必要な時間を超えて就労を続けたとしても、当該超過部分は個別的ないし包括的な業務命令に基づく労働ではなく、使用者の指揮命令下にあるとはいえない。
一方、労基法37条所定の時間外割増賃金は、労働者が同法32条以下所定の法定労働時間を超過して就労した場合にのみ発生するものであり、また法定労働時間を超過しているか否かは、所定期間(暦上の1日又は1週)内の実労働時間の合計時間数と法定労働時間を比較して判定すれば足るのであって、実労働時間が法定労働時間以内の場合には、就業規則の所定労働時間を超過したとしても割増賃金が発生するものではないし(もちろん、割増部分を除く、通常の割合の賃金請求権は否定されない)、当該労働の行なわれたのが就業規則所定の所定労働時間帯を外れているか否も問題ではない。
③ 原告Aの時間外労働の時間数
ア以上①②に基づき検討するに、まず原告Aの所定労働時間等をみると、前示1(3)②イ、ウ、同(4)②ア、イ、同(5)③認定のとおり、(a)同所定労働時間は、午前3時30分から午前7時までと午後2時30分から午後6時で(以下午前又は午後の勤務時間帯といい、間の時間帯を中間帯という)、1日7時間であり、(b)1か月の所定労働時間は、平成8年4月から12月までが179・083333時間、平成9年1月以降が164・5時間であり、乙14の1ないし29によれば、これに対し、布池店ではタイムカードによる出退勤の時間管理が行なわれているのが認められる(ただし、その実態等については後示ウないしオ認定のとおり)。イ そして、原告Aは、時間外労働につき対比表第1、4(1)①のとおり主張し、甲62、甲64、甲69、同原告本人の供述(第2回)には、(ア)午前3時30分から就労を始め、午前・午後の勤務時間帯に、布池店2区の朝夕刊の配達、折込作業、布池店での待機、区域パトロール、集金台帳のチェック、コンピューター入力等をし、(イ)休日を除くほとんど毎日、中間帯(ただし午前7時20分から10分間と、午後0時から1時間の休憩時間を除く)に、朝刊配達の残り、苦情処理のための布池店での待機、納金コンピューター入力表コピーの作成、折込作業等をするほか、(ウ)期間限定ないし不定期の業務として、月末10日間と月初10日間は、それぞれ午前10時からの2時間と午後7時からの1時間30分に集金業務を行ない、また平均月2回の割
合で、いわゆる拡張員を見込み客の自宅まで案内する拡張案内に従事しており、(エ)以上の結果、前示所定労働時間外の労働時間が1カ月171時間50分(平成9年1月からは165時間50分)に達しており、これによる時間外労働賃金が未払いであるとの部分がある。
ウ しかしながら、(a)上記業務の実情については、原告Aがそれだけ長時間にわたり実際に就労している点についても、その必要性の点についても、裏付けとなる客観的証拠は、ほとんどないというべきである。
また、(b)原告Aは、平成8年の本訴提起後、休日労働賃金(現在は問題とされていない)や所定労働時間内の早朝割増賃金を含む非常に多彩な請求を展開していたが、にもかかわらず、本項で問題としている労基法上の時間外割増賃金の未払いを主張し始めたのは、本訴途中で試みられた和解交渉が、前示第2、1(10)の一部和解の成立に止まり、残部の交渉も不調に終わった後の平成11年の途中になってからであって(本件記録中の『主任』に関わる運用実態と就業規則の定めについてと題する書面《平成11年11月2日付》ー甲57・4項参照)、時間外労働
の具体的内容を明確に主張するようになったのは、平成12年に入ってからにすぎないが(賃金差額計算書についてと題する書面《平成12年2月25日付》参照)、以上の経過は、現
在同原告が前示イのとおり極めて長時間の時間外労働を主張し、同主張の時間外賃金の未払いが月額約50万円の高額にのぼっている点に照らし奇異といわざるを得ず、原告Aの主張には一貫性がないというべきである。
更に、(c)下記エe認定のとおり、実際には原告Aは、日中競輪場に出掛けるなどして、中間帯を自由に利用していたとみられるのであって、以上の事情や反対趣旨の次項冒頭掲記の各証拠を総合すれば、原告Aに有利な前示イの証拠には、直ちに全面的な信用性を認めることはできない。
エ そして、前示1(1)③認定の事実、乙6、乙14の1ないし19、乙15ないし乙17、乙22、乙23、乙26、乙27、証人K・同Lの各証言、被告代表者尋問の結果(第1、2回)、弁論の全趣旨、前後示の採用できない部分を除く原告A本人尋問の結果(第2回)によれば、原告Aの就労状況に関し、以下の事実が認められる。
a 本件和解後、同原告がみずから配達を担当していた布池店2区の配達部数は、朝刊が約150部、夕刊が約100部だったところ、被告では、本件変更Ⅱに際して、別紙10ー2ー9配達給参考基準表を定めて、各営業区域毎に配達業務の作業時間と作業量を標準化しており、布池店2区(上記別表では4区と記されている)での同部数の配達には、単車を使用して、それぞれ1時間30分と1時間を要するにすぎないとされていたから、この点を考慮すれば、そのほか、会社関係など午前の勤務時間帯の終了時刻の午前7時にならないと鍵の開かない例外的な場所への配達のため、午前7時から約20分程度、別途配達業務が必要な点を考慮しても、原告Aは、その主張より相当短時間で朝夕刊の配達を終了して、残余の勤務時間帯は、他の業務を遂行することが可能だった。
b また、原告A自身の作業状況を前提としても、午前6時までには、上記aの例外の部分を除く配達作業が終っていたが、もともと原告Aを含む区域管理の担当者は、朝刊配達後、不配などの苦情処理のため、平日及び日曜日(平成13年7月31日付被告代表者尋問長所18頁)とも苦情電話が集約されてくる主税町営業所で待機すべきことが業務上決められていたが、原告Aは、同営業所に詰めずに、布池店3階の本件社宅に帰って休憩しており、布池店1階の事務所にもいなかった。c 乙14の1ないし19から、原告Aの集金業務と拡張案内の実情を推測すると、同原告が集金を行なっているのは、主として毎月末日近くで、そのほか、ここでの集金漏れに対応するため一部の月初めの時期に同業務を行なっているところ、現実の集金日数は、暦上の1月当たり5から10日間と相当ばらつきがあるが、月間6から8日の場合が最多である。また、拡張案内は、不定期的であって、これがある月も1、2回が通常だが、まったくない月も相当数あり、以上、集金業務と拡張案内のいずれも原告Aの主張よりかなり少ない回数と考えられる。d また、被告では、そもそも拡張案内は義務的な業務とはされておらず、これを行なわなくとも、賃金減額などの不利益が課せられることはなく、他方、拡張案内に対する報酬は、給与とはまったく別個に、案内者からその都度個別に請求する方式で、拡張案内料として1回当たり2000円が支払われている。e 一般に被告の従業員にとって、中間帯は、自由時間と観念されており、その間格別の業務を指示され、あるいは居所を拘束されることはなく、ただ、もっぱら自己の判断と裁量に基づき、必要な範囲で、前示のような集金業務等を行なうことがあるだけと捉えられており、原告Aも、趣味の競輪のため、中間帯に一人で又は他の従業員と競輪場に行くなどして、ほかの従業員と同様、原則としてこれを自由に使用していた。
一方、集金業務を行なう場合には、1回数時間を要する場合があり、その結果、1日ないし1週の法定労働時間を超過する場合があり得る。
オ 以上認定の事実を考慮すると、原告A主張の前示長時間労働は、直ちにその事実を認めることができず、また仮に、所定ないし法定労働時間を超える一定の労働が行なわれていたとしても、作業に通常必要な範囲を超える時間をかけた結果による部分が大きいと認められるから、当該部分は、個別又は包括的な業務命令によるものではないというべきであって、労働時間とは認められないこととなる。また、本件当時の被告Aの1日の所定労働時間は7時間であるから、法定内超過勤務の1時間の範囲では、通常の割合での賃金は格別、前示②のとおり労基法所定の割増賃金を請求することはできず、この点でも、前示イ(エ)の主張は直ちに採用す
ることができない。
ところで、前示エe末尾認定の事情によれば、本件では一定範囲で法定内及び法定外の時間外労働等を認める余地があるが、一方、前示エ認定の事情に照らせば、前示アのタイムカードの記載も全面的に採用することはできないのであって、これに打刻された出退勤の時刻の間中の時間帯を、そのまま原告Aの労働時間と認めることは困難であり、本件では、その労働時間を正確に認定することは非常に困難といわねばならない。結局、同原告の時間外労働については、ある程度の裁量によって、これを定めざるを得ないというべきであり、原告側に立証責任があることも考慮して、後示カのとおり、これを控えめに認定することとする。
なお、上記エd認定のとおり、前示拡張案内は、義務的なものでなく、これに従事しないとしても格別の不利益がなく、報酬の支給方法も通常の給与と別個であるから、これらの事実によれば、拡張案内は、直ちに被告と原告Aの間の使用従属関係に基づく労働とは認められず、本件雇用契約に関連はするが、別個の請負契約によるものというべきであって、同業務に従事した時間をもって、本件の労働契約に基づく労働時間と認めることはできず、その報酬も全額支払済と認めるのが相当である。
カ そこで、上記に基づき、原告Aの労基法上の時間外労働及び法定内超過勤務(前示ア認定の所定労働時間は超過するが法定労働時間は超えない労働時間。以下労基法上の時間外労働と一括して、単に時間外労働等ということがある)の時間数を検討するに、上記オ認定の諸事情も考慮すると、本件では、具体的な個々の労働日あるいは週における時間外労働等の有無・内容を個別に認定することは必ずしも適切ではなく(原告Aも、これを具体的に主張していないし、これを認定するに足りる証拠の提出もない)、個別の労働状況を平均した1か月当たりの時間外労働等の時間数を、前示のとおり裁量的に認定するのが妥当である。
したがって、以上のほか、乙15の記載や、前示エ、オ認定の事情によれば、(a)日曜祝日を除く原告Aの実際の労働時間(前示のとおり、個別又は包括的な業務命令に基づくと認められる時間に限る)は、5時間前後に過ぎない可能性があると考えられるが、(b)一方、集金業務に従事する日には、これに数時間の労働時間が上積みされることになる結果、1日の労働時間が所定の7時間ないし法定の8時間を超え、また1週間の労働時間が労基法の規制(1週40ないし44時間)を超過する結果になることがあるところ、(c)前示エc認定の集金業務の実情を考慮すると、これによって、1週間の労働時間が法定又は所定の労働時間を超える結果になるのは、月末(一部月初)の1、2週間に限られており(かつ、週3、4日以上の集金業務に従事する場合
に限られるであろう)、その余の週の労働時間には直接的な影響がないと考えられること、一方、前示第2、1(5)②、同(8)のとおり、(d)平成8年12月以前、原告Aの法定休日は日曜日と指定されていたのが、平成9年1月以降、火曜日に変更された結果、実労働時間が減少したと考えられるのに対して、(e)平成9年4月1日から改正労基法が全面的に施行され、被告における法定労働時間が1週44時間から40時間に短縮された結果、今度は労基法上の時間外労働が一定増加する結果になったこと(これに伴い、法定内超過勤務は反対に若干減少すると考えられる)、以上の事実を認定ないし推認することができ、これらの事情も考慮すれば、原告Aの時間外労働等は、(ア)平成8年4月から12月までは、法定内超過勤務が6時間(月間の数字。特に断
らない限り以下同じ)、労基法上の時間外労働が12時間、(イ)平成9年1月から3月までは、法定内超過勤務が5時間、労基法上の時間外労働が10時間、(ウ)平成9年4月から平成10年7月までは、法定内超過勤務が4時間、労基法上の時間外労働が15時間と認定するのが妥当である。また、(エ)時間外労働は、特段の事情がない限り労働者の権利ではなく、使用者は、労働者を任意に時間外労働等に従事させないことができるから、仮に本件不就労が被告による労務受領拒絶に基づくものだったとしても、原告Aには平成10年8月以降の時間外労働等による賃金及び割増賃金の請求権はなく、結局この時期については、時間外労働等の有無・時間数の認定は不要である。
④ 原告Aの早朝労働の時間数
前示1(3)②ウc、同(4)②ア、イd、同(5)③によれば、平成8月4月から同年12月までは年間301日、平成9年1月以降は年間303日の各割合となり、1回当たり午前3時30分から午前5時までの1時間30分となる。
(2) 原告Aの未払賃金の計算

① 上記(1)ないし前示1(3)ウc、同(4)①オ、同(5)②によれば、(ア)同原告の契約上の給与は、(a)平成8年4月1日から同年9月30日までが、総支給額32万3000円、うち固定給28万3000円、基礎賃金30万3000円、(b)平成8年10月1日から平成9年3月31日までが、総支給額32万3000円、うち固定給28万3000円、基礎賃金28万8000円、(c)平成9年4月1日から平成13年11月30日までが、総支給額31万3000円(ただし、うち1万5000円は早朝割増賃金の一部である早朝勤務給)、うち固定給27万3000円、基礎賃金28万8000円となる。
また、(イ)同原告の1か月の所定労働時間は、前示③アのとおり、平成8年4月1日から12月31日までが179・083333時間(年間2149時間相当)、平成9年1月1日から平成13年11月30日までが164・5時間(年間1974時間相当)であり、これに対し、(ウ)1か月の実際の時間外労働等の時間数は、(d)平成8年4月1日から12月31日までが、法定内超過勤務6時間、労基法上の時間外労働12時間、(e)平成9年1月1日から3月31日までは、法定内超過勤務5時間、労基法上の時間外労働10時間、(f)平成9年4月1日から平成10年7月31日までは、法定内超過勤務4時間、労基法上の時間外労働15時間となる(前示(1)③カ)。
② したがって、以上を基礎に法定内超過勤務、労基法上の時間外労働、所定労働時間内の早朝労働による賃金・割増賃金を含む原告Aに支給すべき給与額を計算し、これから前示第2、1(6)④の既払額を控除すると、別紙13賃金計算書Aのとおりとなる。
なお、前示第2、1(6)①冒頭のとおり、原告らの給与は、先月26日から当月25日までの賃金計算に基づき月末払されていたところ、計算に当たり勤務日数に1か月未満の端数が出たり、あるいは毎月の賃金計算期間の途中で前示①の契約条件が変更された場合には、1か月未満の期間の賃金額を算定する必要が出るが、計算の簡便のため、問題の期間の前月又は翌月の支給すべき給与の総合計額を基礎として、これらの月の日数を365/12日とする日割計算によって算出するのが妥当であり、この方法で計算する。
また、前示第2、1(10)のとおり原告らと被告とは、本訴中に一部和解に合意しており、その中で同④のとおり、平成8年3月末日以前については、相互に債権債務のないことを確定させている。したがって、平成8年4月分の給与の計算に当たっては、3月26日から31日までの就労を考慮することはできず、4月1日から25日までの25日分となる。
更に、遅延損害金については、各月分の支払日の翌日である翌月1日から各支払済まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金が発生することとなる。なお、本件給与規定(3)2条(1)には、支払日が休日の場合は前日又は翌日に支払う旨を定めているが、同条項によってはいずれが現実の支払日となるか確定することができないから、とりあえず同条を考慮せずに、遅延損害金の始期を上記のとおり決定する。
(3) 原告Aの付加金請求
前示(2)認定の時間外労働の賃金及び早朝労働に対する割増賃金につき、原告Aは、労基法114条所定の付加金の支払を請求しているので、その当否につき検討するに、前示(2)②のうち、早朝割増賃金の分については、前示1(4)①ウのとおり、被告の本件早朝割増条項(1)の規定の仕方は拙劣であったものの、新聞販売業界の一般的慣行に反していたとはいえないし、必ずしも労働者らの実質的利益を害する内容だったとはいえないことが認められる。また、本件が判決に至り、付加金が問題になったのは、途中で試みられた和解が不調に終わったことによるものであるが、同和解中原告らは、過大な請求に固執していたこと、またその計算に過誤があったため、前示第2、1(10)の一部和解が原告らの請求を前提としても過大な金額になり、その事情が後で判明
したことが、最終的に和解不調に終わった要因となっている。更に、前示1(1)①の本件不就労の経過についても、真に被告に労務の受領拒絶があったか疑義なしとしない。
したがって、以上のような点を考慮すると、本件では、前示の部分について被告に付加金を課すのは相当ではないから、これを命じないこととする。(4) 原告Aの賞与・賞金請求
まず、賞与請求からみるに、この点については、本件各規則・規定中に原告Aが権利として一定の賞与を受給できる権利を定めた賞与規定を見出すことができず、同
原告の主張は直ちに採用できない。次に、賞金請求をみるに、本件就業規則(3)49条、50条には、表彰の1種としての賞金の支給に関する規定があるが(本件就業規則(1)の29条、30条、同(2)の30条、31条もほぼ同内容)、被告の審査権を前提として支給されるもので、やはり従業員側に受給権を認めたものではないから、この点に関する主張も理由がない。
4 原告Bの未払賃金等(前示第2、1(2)(3)の請求について)(1)同原告の時間外労働及び所定時間内の早朝割増労働(前示第2、2(3)②エの争点について)
① 原告Bの時間外労働の時間数
ア 前示3①と同様、原告Bも労基法に基づく割増賃金請求であることを前提に判断するに、まず原告Bの所定労働時間等は、前示2(3)②、同(4)②のとおり、(a)午前・午後の勤務時間帯(午前3時30分から午前7時までと午後2時30分から午後6時まで)の1日7時間であり、(b)1か月の所定労働時間は、平成8年4月から現在まで164・5時間であり、乙19によれば、原告A同様タイムカードによる出退勤の時間管理が行なわれていたと認められる。
イ そして、原告Bは、時間外労働につき対比表第2、4(1)①のとおり主張し、甲67、甲70、同原告本人の供述(第2回)には、(a)現在、午前4時から午前6時までの2時間で、布池店1A区の朝刊の配達を終了し、(b)所定労働時間以外に、毎月7日間、午前10時30分から1時間30分集金業務を行なっているほか、(c)平成8年4月から平成10年7月までは、原告Aの集金を毎月10日間、1日2時間手伝っていた等と、これに沿うかのような部分がある。ウ しかしながら、上記イ(c)は、原告Aが担当していた1区ないし4区の集金務を、原告Bが内妻の立場で手伝っていたにすぎず、自分の担当する1区A(上記1区とは別区域)の業務でないから、被告の業務命令に基づくものとはいえず、労基法上の労働時間に当たらない(前示3(1)②)。そして、前示2(3)②ア判示のとおり、原告Bは、専業従業員として本件就業規則(3)12条(1)ⅠのA勤としてフルタイムの就労義務があるところ、上記イ(c)を除く、その他の主張の業務内容だけでは、1日7時間の所定労働時間にも、1日8時間ないし1週40時間(平成9年3月31日までは44時間)の法定労働時間にも満たないというのが相当であり、法定内超過勤務にも労基法上の時間外労働にも該当しない。なお、就業規則所定の労働時間帯以外の就労であ
っても、当然にこれら超過勤務等に該当するものでないのは、前示3(1)②末尾判示のとおりである。
したがって、その余の点について検討するまでもなく、原告Bの時間外労働に基づく請求には理由がない。
② 原告Bの所定時間内の早朝割増労働の時間数
前示2(3)②イ、同(4)②によれば、原告Bは、年303日の割合で早朝勤務をしているところ、乙19によれば、同原告は、その勤務日のすべてにおいて、早朝割増時間帯の午前4時から午前5時まで1時間の早朝労働をしていると認められる。(2) 原告Bの未払賃金
前示2(3)①のとおり、原告Bの給与は10万5000円で、全額基礎賃金であるところ、これと上記(1)②の早朝割増労働の時間数を基礎に、労基法上の早朝労働による割増賃金を含む原告Bに支給すべき給与額を計算し、前示第2、1(7)③の既払額を控除すると、別紙14賃金計算書Bのとおりとなる。
なお、勤務日数が1か月未満の端数日数を生じた場合の処理や遅延損害金の始期等については、前示3(2)②に判示したところと同様である。(3) 原告Bの付加金請求
この点についても、原告Aの場合(前示3(3))と同様、付加金を課すのは相当でないから、これを命じないこととする。
5 原告らの社宅使用権原の確認請求、原告Aの駐車場使用権原の確認請求等及び原告Bの社宅費支払義務不存在確認請求等(前示第1、1(5)、(6)、同2(4)、(5)、同3の請求について)
(1) 原告らの社宅使用権原及び原告Bの社宅費支払義務(前示第2、2(3)②ク、同③の争点について)、
① 本件和解条項4項によれば、同和解において、本件社宅は、原告Aの従業員たる地位に付随して、同原告に社宅として提供されたことが合意され、かつ同原告の布池店での勤務の継続が利用の条件とされており、これらの点からみれば、同社宅は、本件就業規則(1)の21条ないし同(2)の宿舎貸与規定(別紙9ー1ー2)によ
って原告Aに貸与されたもので、その利用契約は、被告と同原告との間に成立しており、原告Bは、その利用補助者にすぎないと認めるのが相当である。そうすると、原告Aの使用権原の確認請求は理由があり、特段の事情の認められない本件においては、同原告は、前示1(2)のとおり、平成15年7月9日の満了により被告を退職するまで、本件社宅を利用することができると認められるから、その旨確認することとする。
② 一方、原告Bは、単なる利用補助者であるから、独立した使用権原がなく、その確認請求は失当であるが、一方このような利用補助者から社宅費を徴収できる格別の根拠もないから、被告のその受領分は、法律上の原因を欠き、不当利得を構成することとなる。
そして、毎月月末に支払われる本件社宅費月額3000円は、当月初から月末までの分として支払われたと認めるのが相当であるところ、他方前示3(2)②第3段認定のとおり、原告Bと被告との平成8年3月末日以前の債権債務は不存在が確定しているから、同原告が不当利得として返還を求め得るのは、平成8年4月から平成13年11月まで68か月分、合計20万4000円となり、被告には、同額とこれに対する請求拡張書面送達の日の翌日である平成13年12月26日以降の遅延損害金の支払義務がある。
(2) 原告Aの駐車場使用権原の確認請求等等(前示第2、2(3)①クの争点について)
同原告は、対比表第1、7(1)のとおり、本件和解による本件駐車場の明渡に一種の条件が付いていた旨の主張をしているが、本件和解条項にこれを窺わせるような記載はない。和解は、当事者間の紛争を最終的に解決するために締結されるもので、その解釈には安定性が要求されるというべきであって、同原告の主張は、その余の点について検討するまでもなく採用できない。
6 本件解雇の効力
前示3(1)③エe認定の事実によれば、原告Aの本件供述は虚偽の供述というべきであって、偽証の制裁にもかかわらず、法廷でこのような虚言に及んだ原告Aの責任は軽いとはいえないが、他方同供述は、限られた場での発言であって、これにより直ちに被告の社会的体面が広く汚されたというのは相当でないから、いまだ本件就業規則(3)54条⑧には該当しないというのが相当である。したがって、被告の主張は直ちに採用できず、その懲戒解雇は無効であって、原告Aは、なお被告の従業員たる地位を有すると認められる。
7 結論
以上の次第で、原告らの請求は、主文第1項ないし第7項掲記の範囲で理由がある。なお、上記のうち給付を命ずる部分についても、仮執行宣言は相当でないから、これを付さないこととする。
名古屋地方裁判所民事第1部
裁判官夏目明德
(別紙省略)

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