判例検索β > 平成7年(行コ)第26号
処分取消並びに過誤納金還付請求控訴事件
事件番号平成7(行コ)26
事件名処分取消並びに過誤納金還付請求控訴事件
裁判年月日平成7年11月28日
法廷名東京高等裁判所
判示事項1 登録免許税法31条2項による同条1項の過誤納税額等の通知を税務署長にすべき旨の請求に対して,登記官がした前記通知ができない旨の通知の行政処分性 2 登録免許税につき,租税特別措置法(平成4年法律第14号による改正前)78条の3第1項による軽減税率の適用を受けようとする場合には,登記申請書に知事の証明書を添付しなければならないと定める同法施行規則(昭和32年大蔵省令第15号,平成7年大蔵省令第33号による改正前)29条2項の有効性 3 租税特別措置法(平成4年法律第14号による改正前)78条の3第1項の規定する軽減税率の適用対象となる登記につき,同法施行規則(昭和32年大蔵省令第15号,平成7年大蔵省令第33号による改正前)29条1項所定の知事の証明書を添付しないで登記申請を行い,通常の税率で登録免許税を納付した者が提起した,軽減税率による税額との差額相当額についての過誤納金の還付請求が,認容された事例
裁判要旨1 登録免許税の納付義務は登記のときに成立し,納付すべき税額は納付義務の成立と同時に自動的に確定するものとされており,その税額が公定力をもって確定されることはないから,登録免許税法31条1項により登記官が税務署長に対してする過誤納税額等の通知及び同条2項による前記通知の請求に対して登記官がする前記通知ができない旨の通知は,単に過誤納金等の還付事務を円滑にするための認識の表示にすぎず,過誤納金等の還付請求者の法的地位を変動させる法的効果を有しないから,前記通知ができない旨の通知は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。 2 租税法律主義は,租税の課税要件として手続的な事項を定める場合にも適用されるから,手続的な事項を課税要件とすること自体は法律によって定められなければならないものと解されるところ,登録免許税の税率の軽減を定める租税特別措置法(平成4年法律第14号による改正前)78条の3第1項は,「(前略)これらの登記に係る登録免許税の税率は,政令に定めるところにより(中略)千分の二十五とする」との抽象的で包括的な委任文言を用いているのみであり,前記の租税法律主義の意義に照らし,これを追加的な課税要件として手続的事項を定めることの委任や,解釈により課税要件を追加しその細目を決定することの委任を含むものと解することはできないから,同法施行令(昭和32年政令第43号,平成7年政令第158号による改正前)42条の9第3項及び同法施行規則(昭和32年大蔵省令第15号,平成7年大蔵省令第33号による改正前)29条1項が,軽減税率による登記申請には知事の証明書の添付を要するものとした部分は,軽減税率による登記申請の受理要件を定める限度では有効とはいえても,前記の手続的な事項を課税要件とし,登記申請時に証明書の添付がなければ,後に証明書を提出しても軽減税率の適用がないとする部分は,法律の有効な委任がないのに税率軽減の要件を加重したものとして無効である。 3 租税特別措置法(平成4年法律第14号による改正前)78条の3第1項の規定する軽減税率の適用対象となる登記につき,同法施行規則(昭和32年大蔵省令第15号,平成7年大蔵省令第33号による改正前)29条1項所定の知事の証明書を添付しないで登記申請を行い,通常の税率で登録免許税を納付した者が提起した,軽減税率による税額との差額相当額についての過誤納金の還付請求につき,同規則(同改正前)29条1項は,軽減税率を適用するための課税要件を定めるものとして有効なものと解することはできないから,前記登記に係る税率は,同項所定の証明書が添付されていなくとも,軽減税率が適用されるものと解すべきであるとして,前記請求が認容された事例
裁判日:西暦1995-11-28
情報公開日2017-10-19 23:11:38
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○ 主文
本件各控訴を棄却する
控訴費用は、それぞれの控訴人の負担とする。
○ 事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 第一審原告
1 原判決中第一審被告千葉地方法務局木更津支局登記官に関する部分を取り消す。
2 原判決別紙登記目録記載の登記に関して、登録免許税法第三一条第二項の規定に基づいて平成三年二月二〇日なされた還付通知請求について、第一審被告千葉地方法務局木更津支局登記官がなした

過誤納付の事実は認められないので、税務署長への還付の通知はできない。

とする平成三年三月一三日付の第一審原告宛の通知処分(本件処分)を取り消す。
3 第一審被告国の控訴棄却
二 第一審被告登記官
第一審原告の控訴棄却
二 第一審被告国
1 原判決中第一審被告国に関する部分を取り消す。
2 第一審原告の請求を棄却する。
第二 事案の概要
平成四年法律第一四号による改正前の租税特別措置法七八条の三第一項(本件軽減規定)は、中小企業者が集団化等のため取得する土地等の所有権移転登記について、

(前略)これらの登記に係る登録免許税の税率は、政令で定めるところにより、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、千分の二十五とする。

と定めており、この税率は、さらに昭和六一年法律第一三号による措置法改正附則二〇条四項により、一定の要件の下に、土地について一〇〇〇分の一二、建物について一〇〇〇分の一六とされている。そして、同法施行令四二条の九第三項は、法第七十八条の三第一項の規定は、事業協同組合等が前項各号に掲げる土地又は建物を当該各号に規定する貸付け又は譲渡しの条件に従って譲り渡すことができることとなった日から一年以内に大蔵省令で定めるところにより登記を受ける場合に限り、適用する。と規定している。また、同法施行規則二九条一項は、法第七十八条の三第一項の規定の適用を受けようとする者は、その登記の申請書に、(中略)施行令第四十二条の九第二項各号に規定する資金の貸付けをした都道府県知事又は当該登記に係る土地若しくは建物の同項各号に規定する譲渡しをした都道府県知事の証明書を添付しなければならない。と規定している。本件は、登記申請の際上記証明書の添付をせず軽減税率によらずに登録免許税を納付したが、その後証明書を登記官に提出して軽減税率による場合との差額の還付を求めた第一審原告が、第一審被告登記官に対しては税務署長への還付通知を拒絶した本件処分の取消しを求め、第一審被告国に対しては差額の不当利得としての返還を請求した事件である。
事実関係はおおむね争いがなく、その詳細と争点は、原判決事実摘示のとおりである。そして、当審における双方の主張を要約すると、次のとおりである。(第一審原告の当審における主張)
原判決は、本件処分の取消請求の訴えを却下した。しかし、行政庁は過誤納金還付の要件として登記官の税務署長への還付の通知が必要であるとしており、本件処分を取り消す必要がある。本件処分は、いわゆる準法律行為的行政処分に該当し、処分性があるから、訴えを却下せず、処分取消しの判決をすべきである。(第一審被告国の当審における主張)
原判決は、本件軽減規定は、手続的事項を軽減税率適用のための要件とし、その上でその細目を政令以下に委任したものと解することができないとし、上記施行令の規定は、政令への委任がないので無効であり、本件軽減規定の適用要件を充足した登記を受けた第一審原告は、軽減税率による登録免許税を納付すれば足りるとして、その過誤納金の返還請求を認めている。しかし、これは憲法八四条の租税法律主義の意義を誤解したものである。
特例措置を受けるための課税要件のうち実体的要件は、登録免許税法の各規定及び本件軽減規定において定められており、したがって、上記規定中の政令の定めるところによりという委任文言の指すところは、もはや実体的要件ではなく、手続的要件に関する事項でしかあり得ない。このように措置法全体の趣旨、文言を合理
的に解釈すれば、上記規定は、手続的事項を課税要件とする趣旨であることは明瞭であり、委任の趣旨もその手続的事項を政令で定めることにある。租税法律主義は、このように法律全体の趣旨を考慮して規定の解釈をすることを禁止するものではなく、原判決の解釈は狭きに失する。
第三 当裁判所の判断
一 当裁判所も、次に記載するほか原判決と同一の理由により、第一審原告の第一審被告登記官に対する処分取消しの訴えは却下すべきであるが、第一審原告の第一審被告国に対する過誤納金の返還請求は理由があり認容すべきものであると判断する。
(第一審原告の当審における主張について)
登録免許税の納付義務は登記のときに成立し(国税通則法一五条二項一四号)、納付すべき税額は納付義務の成立と同時に自動的に確定するものとされている(同条三項六号)。そうすると、その税額は公定力をもって確定されることはなく、したがって登録免許税法三一条一項の還付通知及び同条二項の還付通知請求に対する還付通知できない旨の通知も、単に還付の事務を円滑ならしめるための認識の表示に過ぎず、過誤納税額の還付請求権者の法律的地位を変動させる法的効果を有することはない。したがって、還付通知できない旨の通知は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないのであり、その取消しを求める訴えは不適法であるといわねばならない。この点に関する第一審原告の主張は、採用することができない。(第一審被告国の当審における主張について)
第一審被告国は、手続的課税要件以外の課税要件は、本件軽減規定の場合、法律の中で規定されているから、本件軽減規定において法律が政令に委任するという文言は、新たに手続的課税要件を政令で定めることの委任以外には考えられず、したがって、本件軽減規定は、その明文にはないが手続的要件を課税要件としたものと解釈できると主張している。
しかし、いわゆる租税法律主義を規定したとされる憲法八四条のもとにおいては、租税の種類や課税の根拠のような基本的事項のみでなく、納税義務者、課税物件、課税標準、税率などの課税要件はもとより、賦課、納付、徴税の手続もまた、法律により規定すべきものとされており(最高裁大法廷昭和三〇年三月二三日判決民集九巻三号三三六頁、最高裁大法廷昭和三七年二月二一日判決刑集一六巻二号一〇七頁)、租税の優遇措置を定める場合や、課税要件として手続的な事項を定める場合も、これを法律により定めることを要するものである。そして、このような憲法の趣旨からすると、法律が租税に関し政令以下の法令に委任することが許されるのは、徴収手続の細目を委任するとか、あるいは、個別的・具体的な場合を限定して委任するなど、租税法律主義の本質を損なわないものに限られるものといわねばならない。すなわち、もし仮に手続的な課税要件を定めるのであれば、手続的な事項を課税要件とすること自体は法律で規定し、その上で課税要件となる手続の細目を政令以下に委任すれば足りるのである。第一審被告国は、包括的な委任文言を採用して課税要件の追加自体を政令に委任しないと、変転してやまない経済現象に対処できない弊害が生じるとするが、前記のような規定の方法によったからといって、所論のような弊害が生じるとは考え難い。
そして、租税法律主義のもとで租税法規を解釈する場合には、ある事項を課税要件として追加するのかどうかについて法律に明文の規定がない場合、通常はその事項は課税要件ではないと解釈すべきものである。それにもかかわらず、政令の定めるところによるとの抽象的な委任文言があることを根拠として、解釈によりある事項を課税要件として追加し、政令以下の法令においてその細目を規定することは、租税関係法規の解釈としては、許されるべきものではない。第一審被告国は、法律上手続的な事項が課税要件とされでいないことと、政令への委任文言があることを根拠に、法律は手続的事項を課税要件としているものと解釈すべきであると主張する。しかし、手続的事項は手続的効果を有するにとどめ、これを課税要件としない立法政策があることを考慮すると、このような解釈は成り立ち得ないものである。
そして、憲法の租税法律主義がこのようなものである以上、本件の委任文言は、その抽象的で限定のない文言にかかわらず、これを限定的に解釈すべきものであり、追加的な課税要件として手続的な事項を定めることの委任や、解釈により課税要件を追加しその細目を決定することの委任を含もものと解することはできない。したがって、租税特別措置法施行令四二条の九第三項及び同法施行規則二九条一項が、軽減税率による登記申請には特定の証明書の添付を要するものとした部分は、
証明書の添付という手続的な事項を軽減税率による登記申請の受理要件という手続的な効果を有するにとどめるものとして有効であるが、右の手続的な事項を課税要件とし、登記申請時に証明書の添付がなければ、後に証明書を提出しても軽減税率の適用がないとする部分は、法律の有効な委任がないのに税率軽減の要件を加重したものとして無効である。そして、その有効であることを前提として、上記証明書の添付のなかった第一審原告の登記申請には、第一審原告が後に証明書を提出しても、租税特別法七八条の三第一項の軽減税率の適用がないとする第一審被告国の主張は、採用することができない。
以上のとおりであって、第一審被告国の主張は、いずれも採用することのできないものである。
二 したがって、原判決は相当で、本件各控訴はいずれも理由がないものであるから、これを棄却することとする。よって、主文のとおり判決する。(裁判官 篠田省二 淺生重機 杉山正士)
(原裁判等の表示)
○ 主文
一 被告国は、原告に対し、金七七〇万九一〇〇円及びこれに対する平成四年八月二一日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告の被告千葉地方法務局木更津支局登記官に対する訴えを却下する。三 訴訟費用は、原告と被告国との間では原告に生じた費用の二分の一を被告国の負担とし、その余は各自の負担とし、原告と被告千葉地方法務局木更津支局登記官との間においては全部原告の負担とする。
四 この判決の第一項は仮に執行することができる。
五 但し、被告国が金四〇〇万円の担保を供するときは、前項の仮執行を免れることができる。
○ 事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
1 主文一項と同旨。
2 原告が別紙登記目録記載の登記(以下、本件登記という。)について平成三年二月二〇日付けでした登録免許税法三一条二項に基づく還付通知請求について、被告千葉地方法務局木更津支局登記官(以下、被告登記官という。)が平成三年三月一三日付けで原告に通知してなした

過誤納付の事実は認められないので、税務署長への還付の通知はできません。

という旨の処分を取り消す。3 訴訟費用は被告らの負担とする。
4 右1について仮執行の宣言。
二 被告ら
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 (被告国)
金員支払い部分について担保を条件とする仮執行免脱宣言。
第二 事案の概要
一 争いのない事実及び原告の請求内容
1 (一)原告と訴外木更津木材港団地協同組合(以下、訴外協同組合という。)は、平成二年五月一四日、司法書士Aを代理人として、千葉地方法務局木更津支局に対し、本件登記、すなわち別紙物件目録記載の土地(以下、本件土地という。)及び建物(以下、本件建物という。)について、原告を登記権利者、訴外協同組合を登記義務者とし、平成二年三月二三日の売買を登記原因とする所有権移転登記の申請をし、右支局登記官は、同日、右申請を受理してその登記をした。(二) 原告は、本件登記の登録免許税として、本件登記の申請書(以下、本件申請書という。)に一一三四万〇六〇〇円分の印紙を貼付してこれを提出することにより、同額を納付した。
右税額は、別紙計算書1及び2により算出されたものである。すなわち、登録免許税法附則七条及び同法施行令附則三項による本件土地、建物の課税標準は右計算書記載のとおり合計二億五七七四万二〇〇〇円であるところ、本件登記は仮登記に基づく本登記であるから税率は一〇〇〇分の四四であり、これにより計算した登録免許税は一一三四万〇六〇〇円になる。
(三) ところが、本件登記は、その登記当事者、対象不動産、登記時期に照すと、租税特別措置法(以下、措置法という。〉七八条の三第一項(中小企業者が集
団化等のため取得する土地等の所有権移転登記に関する税率の軽減規定。以下、本件軽減規定という。なお、特に断らない限り、法令の規定はいずれも当時のものである。)の規定する軽減税率の対象となり得る所有権移転登記に該当するものであった。そして、本件軽減規定の適用を受ける場合の本件登記の登録免許税の税率は、昭和六一年法律第一三号の同法改正附則二〇条四項により、本件土地については一〇〇〇分の一二、本件建物については一〇〇〇分の一六であった。従って、右税率と前記課税標準により計算すれば、本件登記の登録免許税は、別紙計算書3のとおり合計三六三万一五〇〇円で足りたのであり、前記(二)の納付ずみ税額はこれより七七〇万九一〇〇円多かった(以下、これを本件差額という。)。(四) もっとも、本件軽減規定は、

…これらの登記に係る登録免許税の税率は、政令で定めるところにより、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、千分の二五とする。

と規定していたところ(但し、本件登記に係る右税率は前記改正附則により前記のとおり読み替えられている。以下、右の政令への委任文言部分を政令委任部分という。)、この関係の政令である租税特別措置法施行令(以下、措置法施行令という。)四二条の九第三項(以下、本件手続施行令という。)は、本件軽減規定は一定の日(事業協同組合等が該当する土地、建物を譲り渡すことができることとなった日)から一年以内に大蔵省令で定めるところにより登記を受ける場合に限り適用する旨を定め、更に、これを受けた大蔵省令である租税特別措置法施行規則(以下、措置法施行規則という。)二九条一項(以下、本件手続規則という。)では、本件軽減規定の適用を受けようとする者は、その登記の申請書に、同項所定の事項について同項所定の知事の証明書(以下、
知事証明書という。)を添付しなければならない旨規定されている。しかし、原告代表者及び前記司法書士は、本件軽減規定があること自体を知らなかったから(このことは右代表者尋問の結果により認めることができる。)、本件登記申請書には知事証明書を添付していなかった(以下、右知事証明書を添付しない申請書を通常申請書という。)。
(五) 原告代表者は、その後間もなくの平成二年七月頃本件軽減規定が存在することを知ったため若証拠により認めることができる。)、被告登記官に対し本件差額を返還するよう請求したが、被告登記官は、本件申請書に知事証明書が添付されていなかった以上これを還付することはできない取扱いであるとしてこれに応じなかった。そこで、原告は、平成三年二月二〇日、被告登記官(但し、前任者)に対し、登録免許税法三一条二項に基づいて、本件差額は過大に納付した登録免許税の額にあたるからその旨を木更津税務署長に通知するよう請求し、その際、平成三年二月一日付けの、本件登記に関する本件手続規則に従った知事証明書である千葉県知事の証明書(以下、本件証明書という。)を被告登記官に提出した(なお、右証明書は、前記のように本件登記後に本件軽減規定があることを知った原告代表者が、右日付の頃に取得したものである。前記証拠により認めることができる。)。しかし、被告登記官は、平成三年三月一三日付けの原告宛の通知書をもって、

過誤納付の事実は認められないので、税務署長への還付の通知はできません。

という趣旨の通知(以下、本件通知という。)をした。
(六) そこで、原告は、平成三年四月二四日付けの審査請求書をもって、本件通知について国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、同所長は、平成四年五月七日付け裁決書により、右審査請求を棄却する旨の裁決をした。
2 そして、本件は、原告が、被告国は本件差額を不当利得しており、また被告登記官のした本件通知は違法であると主張して、被告国に対しては右差額を返還するよう請求し(付帯請求は右差額に対する本件訴状送達の翌日から支払いずみまでの民法所定の遅延損害金である。)、被告登記官に対しては本件通知による処分を取り消すよう請求している事案である。
二 争点に関する双方の主張
1 不当利得の成否
(一) 原告
(1) 本件登記は、
本件軽減規定の規定する軽減税率の対象となる登記であるから、本件登記に係る登録免許税の額は右軽減税率により計算される額である。ところが、原告は、本件軽減規定があることを知らず、これがない場合の通常税率による納税義務があると錯誤して本件差額を過大に納付したのであるから、被告国には、本件差額を保有する法律上の原因はない。
(2) そして、登録免許税は、申告納税方式及び賦課課税方式の租税とは異な
り、いわゆる自動確定の租税であってその納税義務の有無及び税額については租税官署による確定処分は一切存在しないのであるから、原告は、直接、被告国に対して、右差額の返還を請求することができる。
(3) 被告らは、本件申請書に知事証明書が添付されていなかったから軽減税率は適用されないと主張している。しかし、本件軽減規定自体は軽減税率を適用する要件として登記当事者及び登記原因の実質的内容という実体的要件を定めているのに過ぎないのであるから、命令でこれ以上の適用要件を定めることはできない。従って、本件手続施行令及び本件手続規則の定める知事証明書の添付という手続は、登記手続の細目を規定するに過ぎず軽減税率適用のための租税法上の適用要件を定めるものではないと解するべきである。なお、軽減税率適用の要件として右のように実体的要件だけが定められているとしても、租税法律関係は登記法の解釈原則と同じ原則に服するものではないから、登記法上の登記官の形式審査主義の原則を損なうことになるものではない。
(4) 本件軽減規定の政令の定めるところによりという政令への委任は、極めて概括的かつ白紙的委任であって、もしこれにより本件軽減規定自体が定める適用要件以上の要件を定めることが政令に委任されているのであれば、このような政令への委任は祖税法律主義に違反する。
(5) 被告らは、いわゆる宥恕規定がないから一旦通常申請書に基づき本件登記がなされた以上軽減税率適用の余地はないという趣旨の主張をしている。しかし、本件軽減規定は、措置法の他の特別措置規定(例えば四一条六項、七〇条五項)と異なり、政令の定めるところが欠ける場合にはこれを適用しないとは規定していない。そして、措置法自体にこのような明文の失権規定がないのに、命令により失権効のある要件が定められているというような解釈は、
租税法律主義に違反するものと言うべきである。なお、本件の場合には、原告は後に本件証明書を追完しているのであるところ、右措置法四一条七項等の類似規定と比較検討すれば、本件軽減規定は少なくとも知事証明書の追完を許していると解するべきであるから、いずれにしても本件軽減規定を適用する要件は具備されている。
(二) 被告ら
(1) 不動産登記に係る登録免許税の納付義務は登記のときに成立し、これと同時に納付期阻も到来し、かつ、納付すべき税額は何ら特別の手続を要せず自動的に確定する。そして、この登録免許税は、登記を受けた事実自体を課税要件としている。他方、登記官は、登記申請の受理にあたり形式審査権を有しているに過ぎない。これらのことを併せ考えると、不動産登記に際し課せられる登録免許税は、申請に係る登記を受けた事実があれば、申請書に記載された登記の目的、登記の原因によって形式的画一的に課税標準または税額が確定するのであって、これを離れた登記当事者間の関係あるいは登記原因の実質関係等は課税要件とは関わりのないものである。そして、本件軽減規定は、特定の場合の登録免許税について軽減税率を適用することを定める特例措置であるに過ぎないから、右規定は、登録免許税の右のような課税要件の内容を修正しあるいは変容するような性質のものではない。これを本件についてみると、原告は、本件登記について、通常申請書である本件申請書を提出し、本件登記を受けたため、本件登記の登録免許税は、平成二年五月一四日に、本件申請書に記載された通常税率による税額をもって納税義務が成立し、同時に納付すべき税額が確定したのである。従って、被告国は、本件差額を保有する法律上の原因を有する。
(2) もっとも、原告は、錯誤に基づき通常税率による登録免許税を納付したと主張している。しかし、本件申請書に記載された事項については原告の表示意思と内心の意思に不一致はないのであり、原告には、単に、本件軽減規定が存在することを知らなかったという意味の法の不知があったのに過ぎない。従って、錯誤理論を用いて本件差額について不当利得が成立すると言うこともできない。(3) そして、このように法の不知等があった場合には、いわゆる宥恕規定がある場合に限り過誤納金還付の問題が生じ得る。しかし、本件軽減規定については、知事証明書の添付がなかった場合にも本件軽減規定の適用を受けることができる場合を定める宥恕規定はない。従って、原告の追完の主張も失当である。なお、宥恕規定を置くかどうかは措置法自体が個々の特例措置ごとに明らかにしているところであり(三一条の三第四項、三四条の三第四項、三五条等)、本件軽減規定である措置法七八条の三の特例措置について宥恕規定が置かれていないことは、まさに、措置法自体が、政令で定める手続を履践しない限りは特例措置を適用しない旨を明
らかにしているものと解されるのであって、本件手続施行令及び本件手続規則は、右のような趣旨の措置法の委任を受けて手続の細目を定めているものである。(4) 右のとおり、知事証明書の添付を欠く本件申請書によっては本件軽減規定を適用する余地はないのであるが、原告は、知事証明書の添付という手続が措置法施行令及び同施行規則により定められているに過ぎないことを問題としている。しかし、本件軽減規定は、その政令委任部分において、軽減規定の適用を受けるための手続要件の細目を定めることを政令に委任しているのであって、本件手続施行令及び本件手続規則の定めは右委任に基づきその範囲内で規定されているものである。そして、本件軽減規定がこのように課税要件の細目の定めを政令に委任することは何ら租税法律主義に違反するものではない。
(5) なお、本件軽減規定は、通常の税率を軽減する特別の定めであるから、その解釈適用にあたっては厳格性及び明確性が要請されるものと言うべく、その要件を安易に拡張解釈することはできない。
2 本件通知の性格及び適法性
(一) 原告
本件差額の納付は登録免許税法三一条二項所定の過誤納に該当するから、被告登記官は、原告の申し出により、所轄税務署長に対し同条一項の通知をする義務がある。ところが、被告登記宵は、本件通知により、原告の右申し出に係る通知をすることを拒絶したものであるから、右通知による処分(以下、本件拒絶処分という。)は違法であり、また、右処分には理由が記載されていない点でも違法であるから、取り消されるべきである。もっとも、登録免許税は自動確定の租税であるから、過誤納の事実があればその事実だけでもはや被告国は過誤納金を保有する法律上の原因を欠き過誤納金を不当利得として納税者に返還すべきものである。従って、原告としては、本件通知は行政処分性を有しないものと考えるが、被告らは、本件通知は行政処分であり本件のような過誤納金の返還請求が認められるためには本件拒絶処分が取り消される必要があるとの立場を取っているようであるから、被告登記官を被告として、敢えて右処分の取消しを請求するものである。(二) 被告ら
登録免許税法三一条二項は、登録免許税について所定の内容の過誤納があったときに、登記機関に対し、所轄税務署長に同条一項(同項三号)の通知をすべき旨を請求する権利を登記等を受けた者に付与しているものであり、この請求を受けた登記機関は、同条一項三号所定の事由があると認めるときには所轄税務所長に対して還付通知をする義務がある。他方、還付通知すべき事由があると認められないときについては、登録免許税法にはその旨を請求者に通知すべきことを定めた明文の規定はないが、登記等を受けた者に対し前記のように通知請求権が与えられている以上、右の事由が認められない場合にも何らかの応答義務があると言うべきであって、この場合の処分が本件通知に該当する(実務上は、昭和四四年一二月五日付け民事三発第一〇一八号法務省民事局第三課長回答及び同五四年二月二一日付け民三第九五四号同課長依命通知によりこの方法による応答が行われているところである。)。そして、同条二項は、右の通知請求権の存続期間を登記を受けた日から一年間に限ると定めることにより法律関係の早期安定を図っているのであるから、右期間経過後は、登記官の職権発動を促すことはともかく、別途、不当利得返還請求の方法で過誤納金の還付を認めることは、同条二項の規定の趣旨に反することになり、許されない。すなわち、同条二項は、同条による還付のほかに不当利得返還関係が成立することを否定したものと解するべきである。このような法の趣旨からすると、同条二項に基づく請求に対する応答である本件通知は行政処分に該当し、従って、還付通知をすることができない旨の通知があった場合においてなお還付ないし不当利得の返還を請求しようとするときには、右通知の公定力を排除するためにその取消しを得ることが必要と言うべきである。
ところで、原告の納付した本件の登録免許税については、過誤納の事実は認められず、登録免許税法三一条二項所定の当該登記等の申請書に記載した登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていないこと又は当該計算に誤りがあったことに該当しない。また、本件通知には

還付請求については、過誤納付の事実は認められない

との処分理由及び不服申出方法の教示が明記されている。従って、本件通知による処分は適法であり、その取消し請求は理由がない。
第三 争点に対する判断
一 不当利得の成否

1 本件軽減規定は、事業協同組合等が、その取得した不動産を組合員等に再譲渡する場合の所有権移転登記について、中小企業構造の高度化に寄与する事業を促進支援する等の観点から、当該登記の登記当事者及び当該不動産の用途その他の特質に基づいて軽減税率の適用される登記を特定し、これに該当する登記であることを実体的要件として、右登記に係る登録免許税を所定の税率に軽減することを定めるものである。他方、本件軽減規定には、右の実体的要件を定める部分のほかに政令委任部分があるところ、これを受けた措置法施行令中の本件手続施行令部分は

(本件軽減規定は、特定の日から一年以内に)大蔵省令で定めるところにより登記を受ける場合に限り、適用する

と規定し、更に、これを受けた措置法施行規則中の本件手続規則は、本件軽減規定の適用を受けようとする者は登記申請書に所定の事項について知事証明書を添付しなければならないものと規定しているのであり、右の政令及び大蔵省令において、登記申請書に知事証明書が添付されていない限り軽減税率は適用されない旨の手続的要件が明らかにされている関係にある。2 ところで、憲法の定める租税法律主義の原則上、課税要件は法律によりできるだけ一義的明確に定められていなければならない。そして、このことは、本件軽減規定のように、通常の課税要件よりも納税者に有利な特例措置を定める法律についても同様に妥当すると考えられるのであり、このような特例措置を適用するために実体的要件のほかに手続的要件を充足すべきものと定められている(換言すれば、手続的要件が履践されなければ失権する旨定められている)と言うためには、法律によりその旨が明らかにされている必要があると解するべきである。ところが、本件軽減規定は、

…これらの(実体的要件に合致する)登記に係る登録免許税の税率は、政令で定めるところにより、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、(軽減税率)とする。

というように規定しているに過ぎないのであり、その文言上、本件政令委任部分のほかには、手続的要件の充足を必要としているかどうかを判断するための手掛かりはない。そして、右政令委任部分は、右のように簡単なものであり、それだけでは、これを積極に解するべきことが明らかであるとは認め難い。かえって、措置法の他の規定(例えば四一条六項の

大蔵省令で定めるところにより、…書類の添付がある限り、適用する

という規定あるいは七〇条五項のその他大蔵省令で定める書類を添付しない場合には適用しないという規定)及び登録免許税法にみられる規定例(例えば四条の

大蔵省令で定める書類の添付があるものに限る旨の規定がある登記等にあっては、当該書類を添付して受けるものに限る

、五条の大蔵省令で定める書類を添付して受けるものに限る、あるいは一三条二項の大蔵省令で定める書類を添付して当該設定登記の申請をするものに限り等)中では、前記のような意味の手続的要件を置く場合にはその趣旨を明らかに理解し得る文言でその旨が規定されているのであり、更に、措置法の登録免許税の特例に関する第五章中の諸規定でも、本件軽減規定を含むわずかのものを除き、ほとんどすべては大蔵省令で定めるところにより一定の期間内に登記を受けるものに限り軽減税率を適用するという規定の仕方で、手続事項を特例の適用要件としているものと解されなくはない文言が用いられているのである。そして、これらの規定例と対比すると、本件軽減規定が前記のような意味での手続的要件を充足すべきことを定め、その細目の定めを政令に委任しているものと理解するのは、一層困難であると言わざるを得ない。なお、右に見た規定例は、いずれも細目の定めを大蔵省令に委任するものである点で本件軽減規定とは異なるが、それだけでは、右の判断を覆すに足りないと考えられる。
3 もっとも、不動産登記に係る登録免許税の納税義務は登記の時に成立し(国税通則法一五条二項一四号)、その成立と同時に、税額確定のための特別の手続を経ることなく、法律の定める課税標準と税率に従って、法律上当然に税額が決定される自動確定方式の租税である(同条三項六号、登録免許税法二七条一項)。そして、右納付の事実は、登記申請書記載の事項について形式審査権を有するに過ぎない登記機関が確認するものとされている(登録免許税法二一条、二二条、二五条)。登録免許税の右のような性質に照すと、登録免許税は登記申請書の記載及び添付書類だけによって正当な税額を確認することができるようにされていることが望ましく、また誤納金の発生を未然に防止するためにもその必要があると言うことができる。しかし、このような必要性は、本件軽減規定のような特例措置について必ずしも失権的な手続的要件を伴わなければならないことまでも意味するものではないから、前記問題を積極に解することができる程度にまで政令委任部分の文言を補充し得るものと言うことはできない。
なお、被告らは、本件軽減規定に宥恕規定が存在しないことをもって、そのこと
が、本件軽減規定はそれを適用するための手続的要件を要することを明らかにしている根拠になると主張している。そして、右主張の宥恕規定は、措置法三一条の三第四項、三四条の三第四項、三五条三項等の規定を言うものであるが、これらの宥恕規定は、いずれも、措置法自体により特定の書類の提出等がなされた場合に限り特別措置規定が適用されることが明らかにされているものについて、これが履践されていなくとも同じ特別措置が適用される場合があることを措置法自体が規定しているものである。ところが、本件の問題は、むしろ、本件軽減規定がその適用のための要件として何らかの手続的事項を必要としているかどうかにあるのであり、本件軽減規定がそこまで定めているものと認められないのであれば、政令でそのような要件を定めることはできないのである。従って、宥恕規定がないことは、遡って本件軽減規定の政令委任部分が右のような要件を定めることを委任していることの根拠となるような性質のものではないと言うべきである。
4 そうすると、本件軽減規定は、手続的事項を軽減税率が適用されるための要件としているとは認め難いと言うほかないのであり、本件手続施行令及び本件手続規則中このような手続的要件を定める趣旨の部分は、その効力を認め難いと言うべきである。被告らの主張のうちこれに反する部分は、租税法律主義の原則に鑑み採用することができない。
5 なお、仮に本件軽減規定が手続的要件を置くことを定めていると解するとすれば、その場合には、本件軽減規定は、この点について政令で定めるところによりとたけ定めているのに過ぎないから、手続的要件の内容及び効果の定めをいわば白紙的に政令に委任するものと言わざるを得ない。そして、このような態様による政令への委任は、前記租税法律主義の原則上、有効なものとは認め難いと言うべきであるから、被告らの主張のうち、これに反する部分も、採用することができない。
6 もっとも、前記のように、本件軽減規定による納税が円滑確実になされるためには、登記申請の際前記のような確認資料が提出される必要があり、この資料の性質内容は事前にできるだけ簡明画一的に定められていることが望ましいのであり、このこと自体は登録免許税について本件軽減規定のような特別措置を定める以上明らかであると言うことができる。そして、このことと右5までに判示したことによれば、本件手続施行令及び本件手続規則は、円滑に本件軽減規定による軽減税率を適用して登記を受けるための登記手続の細目を定める規定としての限度で意味があるが、これより進んで、軽減税率を適用するための課税要件を定めるものとして有効なものとまで解することはできないと言うべきである。
7 以上によれば、本件登記に係る税率は、軽減税率により本件登記の時に自動的に確定していたのであり、これと前記事案の概要の事実によれば、本件差額は、誤って納付されたものであって、被告国がこれを保有する法律上の原因はないことになる。
二 被告登記官に対する請求との関係
1 登録免許税法三一条二項は、本件差額のような誤納金について、登記等を受けた者が登記等を受けた日から一年を経過する日までに、過誤納があることを登記機関に申し出て同条一項三号の過大に納付した登録免許税の額(過誤納金と同趣旨と解するべきである。)を所轄税務署に通知すべき旨を請求することができると定めており、右通知がなされると、通知を受けた税務署長は、国税通則法の規定に従って誤納金の還付手続を取ることになる。そして、原告は、右所定の期間内に、本件知事証明書を追完するとともに、本件差額について被告登記官に右三一条二項の通知請求をしたところ、被告登記宵は、過誤納付の事実はないという理由で、本件通知により、右通知をしない旨を原告に通知したのである。そして、被告らは、本件通知は公定力のある行政処分であり、これが取り消されない以上原告には本件差額の返還請求権はないと主張している。そこで、この点について検討するに、前記のとおり、登録免許税の税額は法律の定める課税標準及び税率により自動的に確定する租税であり、特に本件登記については登録免許税法二六条一項の認定及び通知がなされているわけではないから、本件登記に係る登録免許税の課税標準及び税額については公定力のある態様による確定がなされていないと言うべきである。そして、原告のした前記登録免許税法三一条二項による請求に対する本件通知についても、右通知によっては本件登記に係る登録免許税の税額について右のような公定力を有する確定がなされた効果が生じたものと解するのは相当でない。そのような確定効が生ずるとすれば、登録免許税額が登記のときに自動確定しそのときに納付されるべき租税であるのに、これが後に誤納金の返還に関する手続における登記機関
の判断により公定力をもって確定されることになり、登録免許税の性質上合理的でないからである。そして、登録免許税法三一条二項の請求及びこれに対する登記機関の応答は、本来は税務署長が遅滞なく行うべき誤納金の返還手続について、登録免許税の性質上同条一項のように登記機関の判断を介して簡易迅速的確にこれを実現するための方法として定められているのに過ぎないと解するべきである。これに対して被告らの主張のように考えると、登録免許税の誤納金については前記一年以内に三一条二項の請求をしない限り、登記機関あるいは税務署長の職権の発動がない限りは、誤納金についてその返還を求めることができないという結論に結びつきやすく、現に被告らはそのように主張しているのであるが、登録免許税の誤納金の返還についてだけ時効期間経過前に右のような結果が生ずるような解釈をすることは相当でないと考えられるのであり、登録免許税を誤納したものは、任意の返還が受けられない場合には、三一条二項の請求手段を取ることもできるし、右請求による通知が拒絶された場合あるいは期間の関係で右請求ができない場合には、被告国に誤納金の返還を請求することができると解するのが相当である。2 なお、登録免許税法三一条二項の請求に対する登記機関の応答は、広い意味で国税通則法七五条一項五号の処分に該当し、これに対する不服申立て及び行政訴訟を認めることができるとしても、右1に判示したところからすれば、右訴訟の結果により税額ひいては誤納金の金額が確定する効果が生ずることはなく、また、誤納金返還債権の存否が確定したりこれが存在する場合に債務名義が得られるのでもない。そうすると、4本件のように誤納金について不当利得返還請求訴訟が提起されこれを認容すべき場合には、これと併せて本件通知の取消しを求める訴えの利益は存在しないと言うべきである(なお、原告はそのような見解に立ちながら、被告らの前記主張に鑑み念のため被告登記官を被告として本件通知の取消しを求めているものであるに過ぎない。)。
3 そうすると、原告の被告国に対する不当利得返還請求は、本件通知の取消しを得るまでもなく認容すべきであるし、他方、被告登記官に対する右取消し請求の訴えは、訴えの利益を欠くから却下すべきである。
三 結論
以上の次第で、原告の被告国に対する請求は理由があるから認容し、被告登記官に対する訴えは不適法であるから却下し、訴訟費用の負担について行訴法七条、民訴法八九条、九三条、仮執行及びその免脱の各宣言について民訴法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
別紙登記目録、物件目録(省略)

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