判例検索β > 平成14年(行ウ)第5号
墓地経営不許可処分取消請求事件
事件番号平成14(行ウ)5
事件名墓地経営不許可処分取消請求事件
裁判年月日平成14年12月27日
法廷名水戸地方裁判所
判示事項特定非営利活動法人が,墓地,埋葬等に関する法律10条に基づいてした,墓地,納骨堂経営の許可申請に対し,市長が,同法人は「潮来市墓地,埋葬等に関する法律の施行に関する規則」(平成13年潮来市規則22号)2条所定の団体に該当しないとしてした不許可処分が,その裁量権を逸脱する違法なものであるとして,取り消された事例
裁判要旨特定非営利活動法人が,墓地,埋葬等に関する法律10条に基づいてした,墓地,納骨堂経営の許可申請に対し,市長が,同法人は「潮来市墓地,埋葬等に関する法律の施行に関する規則」(平成13年潮来市規則22号)2条所定の団体に該当しないとしてした不許可処分につき,前記規則が墓地,埋葬等に関する法律10条による墓地等の経営主体を地方公共団体等一定の団体に限定しているのは,墓地等の経営が有する高度の公益性に照らして,健全な安定的経営を永続させるため,墓地等の経営主体の適格性について厳正な審査を求めることによって,利用者を保護することに主眼があり,単に形式的に法人の形態等を審査すれば足りるとする趣旨ではないから,前記申請に係る墓地の経営主体について公共性,非営利性,永続性,必要性が認められるか否かに関し,申請者の財政的基礎の確実性,責任を明確にした組織体制の有無,資金計画の確実性,墓地の造成,管理計画の適正等について実質的に審査することなく,申請に係る墓地等の経営主体が,単に公益法人や宗教法人でないという一事をもって申請を不許可としたのは,その裁量権を逸脱する違法なものであるとして,前記不許可処分を取り消した事例
裁判日:西暦2002-12-27
情報公開日2017-10-19 21:25:36
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主 文
1 被告が原告に対し平成13年8月10日付でした墓地,納骨堂の経営許可申請に対する不許可決定を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
主文第1項同旨
第2 事案の概要
本件は,墓地,埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号。以下法という。)10条に基づき,被告に対し,墓地,納骨堂経営の許可を申請(以下本件申請という。)した原告が,潮来市墓地,埋葬等に関する法律の施行に関する規則(平成13年潮来市規則第22号。以下本件規則という。)2条に該当することを理由として不許可処分(以下本件処分という。)をした被告に対し,同条に反することのみを理由として不許可とすることは違法であるなどとして,本件処分の取消を求めた事案である。
1 前提事実
(1) 原告は,ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し,もって公益の増進に寄与することを目的とする特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)に基づき,国内外の人々に対し,お互いの文化,経済,福祉の向上発展のため,福祉,教育,経済的支援,研修等を行い,日本と海外の人々との国際交流の増進に寄与することを目的として設立された特定非営利活動法人である。原告が特定非営利活動に係る事業のほか上記目的を達成するために行う事業として定款に掲げた中には,収益事業として,国際霊園の経営事業がある(甲2)。(2) 法10条1項は,

墓地,納骨堂又は火葬場を経営しようとする者は,都道府県知事の許可を受けなければならない。

と定める。(3) 被告は,昭和56年4月1日以降,茨城県知事から,市町村長に対する事務委任規則(昭和56年茨城県規則第21号)により,法10条に基づく墓地,納骨堂又は火葬場(以下墓地等という。)の経営の許可権限を委任されていたが,その後,平成12年4月1日に施行された茨城県知事の権限に属する事務の処理の特例に関する条例(平成11年茨城県条例第44号。地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第87号)の公布に伴って改正された地方自治法252条の17の2第1項の規定に基づく。)により,前記許可に関する事務は,被告が処理することとなった。
(4) 原告は,被告に対し,平成13年2月15日,法10条に基づき,本件申請をした。
(5) 被告は,本件申請の後である平成13年4月1日,本件規則を定めた(同日より施行)。
(6) 被告は,原告に対し,平成13年8月10日付で,本件規則2条に該当しないとの理由で,本件申請を不許可とする本件処分をした。
(7) 本件規則2条には,次のとおりの定めがある(乙1)。
墓地等を経営しようとする者は,次の各号のいずれかに該当する者でなければならない。1 地方公共団体2 宗教法人法4条2項の法人で同法5条1項の主たる事務所又は同法52条3項若しくは53条1項の従たる事務所を茨城県内に有するもの3 民法34条の規定により墓地等の経営を目的に設立された法人4 共同墓地における地域共同体5 個人墓地における墓地使用者(8) 原告は,本件処分を不服として,平成13年10月6日,被告に対し,異議申立をしたが,被告は,同年11月26日付で,原告の異議申立を棄却した。(9) 墓地等の経営許可に関しては,次のような行政通達等が発せられている。① 厚生省環境衛生局環境衛生課長発各都道府県衛生主管部長等宛昭和43年4月5日環衛第8058号通知(墓地,納骨堂又は火葬場の経営の許可の取扱いについて乙4)は,近年,株式会社等営利を目的とする法人に対して墓地の経営を許可する事例が見受けられるが,従来,墓地,納骨堂又は火葬場の経営主体については,・・・(中略)・・・原則として市町村等の地方公共団体でなければならず,これにより難い事情がある場合であっても宗教法人,公益法人等に限ることとされてきたところである。これは,墓地等の経営については,その永続性と非営利性が確保されなければならないという趣旨によるものであり,この見解は現時点においてもなんら変更されるものではない。従って,墓地等の経営の許可にあたっては,今後とも上記通知の趣旨に十分御留意のうえ,処理されたい。としていた。② そして,厚生省環境衛生局環境衛生課長発各都道府県衛生主管部長等宛昭和46年5月4日環衛第78号通知(墓地等の経営について乙5)は,墓地,納骨堂又は火葬場の経営の許可は,原則として市町村等の地方公共団体に与えるものとし,これにより難い事情がある場合であっても宗教法人,公益法人等に限り与えることとされてきたが・・・(中略)・・・,今後ともこれにより厳しく処理されるよう重ねて通知する。また,現に墓地等の経営主体が公益法人である場合であっても,いやしくも営利事業類似の経営を行うことなく,公益目的に則って,適正な経営が行われるよう関係者に対して強く指導されたい。と通知していた。③ その後,茨城県が昭和56年4月1日に定めた茨城県墓地等経営許可事務処理要領(乙3)は,墓地等の経営主体について,

墓地等の経営主体は,地方公共団体とすること。ただし,これにより難い事情がある場合には,この限りでない。

とした上,上記ただし書に該当する場合であっても,墓地等の経営主体は,墓地等の種別ごとに宗教法人,財団法人等に限るものとし,また,申請に係る墓地等の設置の必要性が十分に存在するものについて,その必要とする範囲内において許可するものとすること。とし,墓地の種別中霊園墓地については,地方公共団体,宗教法人又は財団法人が経営する墓地であって,墓地使用者について信者,宗派を問わないものとし,更に

墓地の経営主体は,次の者に限るものとする。(1)地方公共団体,(2)宗教法人,(3)財団法人,(4)共同墓地における地域共同体,(5)個人墓地における墓地使用者

と定めた。 なお,潮来市が本件規則施行に伴い定めた平成13年4月1日施行の潮来市墓地等経営許可事務処理要領(乙2)には,県の上記事務処理要領の財団法人を民法34条の規程により墓地等の経営を目的に設立された法人とするなど若干の点を除いて上記事務処理要領と同旨の定めがある。
④ さらに,厚生省生活衛生局長発各都道府県知事等宛平成11年3月29日生衛第505号通知(墓地等の経営及び管理に関する指導監督の徹底について乙6)は,墓地等の経営及び管理に関する指導監督については,かねてより種々御配慮を煩わせているところではあるが,一部に墓地等の経営の安定及び管理の適正を欠く事例が見受けられるところである。ついては,貴職においては,下記の事項に特に御留意の上,墓地等の経営者及び管理者に対する指導監督の徹底を通じ,墓地等の経営の安定及び管理の適正が図られるよう,一層の御配慮をお願いする。・・・(中略)・・・墓地等の経営については,永続性と非営利性の確保の観点から,営利企業が経営主体となり,又はその経営に対し実質的な支配を及ぼすことは望ましくないため,経営の許可の審査に当たっては,この点について十分に留意されたいこと。・・・(中略)・・・許可の申請をする者が,実質的に墓地等の経営の安定及び管理の適正を確保する能力があるか等について精査することが必要である。このほか,墓地等の経営の許可に当たっては,許可の申請をする者が,必要な基本的財産を有しているか否かに留意するとともに,許可の附款として,計画的に管理基金を造成することその他必要な条件を付することが望ましい。・・・(後略)・・・と通知している。⑤ 次いで,厚生省生活衛生局長発各都道府県知事等宛平成12年12月6日生衛発第1764号通知(墓地経営・管理の指針等について乙7)は,墓地に関する指導監督事務を行う際のガイドライン及び墓地経営者が適正な経営を行う上での参考として,上記通知の趣旨を更に明確にした詳細な指針を通知した。同指針の趣旨は,平成12年4月から施行された地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律により,墓地に関する指導監督の事務が地方公共団体が自らの責任において行う自治事務となっていることを指摘した上で,実際の墓地経営において,経営破綻等のため,利用者の切実な要望である安定的な経営を損う不適切な事例が生じている事態に注意を喚起し,墓地経営の許可に際しては,法目的に照らして行政の判断権を適正に行使して,安定した適切な運営ができるか否かを審査し,不適切な墓地経営の許可申請については,利用者保護の観点から許可しないことが重要であると指摘し,墓地経営許可がその後の墓地経営が適正に行われるか否かを決定づけるといっても過言ではないほど重要な意味を持っていると特に強調している。
そして,同指針は,墓地経営許可に際しての審査事項,留意点として,墓地
経営者には,公共的サービスの提供者として利用者を尊重した高い倫理性が求められること,経営・管理を行う組織・責任体制が明確にされていること,計画段階で許可権者との協議を開始することが不可欠であること,許可を得てから募集を開始すること,墓地の永続性及び非営利性の確保の観点から,営利企業を墓地経営主体として認めることは適当でないとの考え方を変更すべき国民意識の大きな変化は認められないから,墓地経営主体は,従来どおり,市町村等の地方公共団体が原則であり,これによりがたい事情があっても,宗教法人又は公益法人等に限るのが適当であること,なお,公益法人による墓地経営の許可に当たっては,監督が一体的にされるのが望ましい上,地域的な実情を勘案しつつ監督する必要があるため,当該公益法人が大臣認可の法人でなく,かつ大臣認可となる予定がないことを確認する必要があること,その他利用者の保護を徹底する観点から,永続性,安定性等を確保するための留意点等が詳細に示されている。
(10) 他方,特定非営利活動促進法には,次のような規定がある。① 同法における特定非営利活動とは,保健,医療又は福祉の増進を図る活動,国際協力の活動等同法別表掲記の活動であって,不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするものをいう(2条1項)。
② 同法における特定非営利活動法人とは,特定非営利活動を行うことを主たる目的とし,次の各号のいずれにも該当する団体であって,同法の定めにより設立された法人をいう(2条2項)。
(ⅰ) 次のいずれにも該当する団体であって,営利を目的としないものイ 社員の資格の得喪に関して,不当な条件を付さないこと
ロ 役員のうち報酬を受ける者の数が,役員総数の3分の1以下であること(ⅱ) その行う活動が次のいずれにも該当する団体であること
イ 宗教の教義を広め,儀式行事を行い,及び信者を教化育成することを主たる目的とするものでないこと
ロ 政治上の主義を推進し,支持し,又はこれに反対することを主たる目的とするものでないこと
ハ 特定の公職の候補者若しくは公職にある者又は政党を推薦し,支持し,又はこれらに反対することを目的とするものでないこと
③ 特定非営利活動法人は,特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として,その事業を行ってはならない(3条1項)。
④ 特定非営利活動法人は,その行う特定非営利活動に係る事業に支障がない限り,その収益を当該事業に充てるため,収益を目的とする事業を行うことができる(5条1項)。
⑤ 特定非営利活動法人の所轄庁は,その事務所が所在する都道府県の知事とする(9条1項)。特定非営利活動法人で2以上の都道府県の区域内に事務所を設置するものの所轄庁は,内閣総理大臣とする(9条2項)。
⑥ 特定非営利活動法人の設立認証は,同法10条1項の申請が同法12条の各号に該当すると認められるときは,その設立を認証しなければならない(12条)。2 当事者の主張
(被告の主張)
(1) 本件規則が墓地等の経営主体を限定していることは適法である。 前提事実掲記の各通知,条例等は,法10条の墓地等の経営主体について,原則として,市町村長等の地方公共団体若しくはこれにより難い事情がある場合でも,宗教法人,公益法人等に限定している。このように墓地の経営主体を制限することは他の地方公共団体でも認められており,墓地経営の公共性,永続性,非営利性に照らせば,墓地の経営主体を制限することは憲法や法令に違反するものではない。(2) 本件規則の施行日が本件申請の後である平成13年4月1日であることは確かであるが,被告は,本件規則制定前は,上記各通知,条例,過去の事例等により,本件規則制定後は,これに従い,許可,不許可を判断するのであり,墓地等の経営主体を限定する趣旨は,本件規則制定前後で異ならないから,本件申請と本件規則制定の前後関係は,本件処分の違法原因とはならない。また,被告としては,本件規則が施行された後に再度原告に申請させるのは原告に不利益を与えることになると判断して,本件規則に基づく申請があったものとして受理して,本件処分をしたのであるから,この点が本件処分を取り消すべき違法事由となることはない。(3) 墓地の公共性,非営利性,永続性の観点から,その経営主体には,公共性,非営利性,永続性が求められるから,墓地等の経営許可を得るためには,当該墓地を経営するに足る財政的基礎及び組織を備えていること,確実な資金計画に基
づく墓地造成計画及び墓地に関する適切な管理運営計画が策定されていること等が少なくとも必要であるが,原告は,本件申請にかかる土地を所有していない上,本件申請に際し,財産目録,貸借対照表,収支決算書等を提出しなかったため,その財政的基礎も事業費に関する確実な資金計画も明らかでなかった。したがって,原告の本件申請は,上記許可要件を具備しているとはいえないから,本件申請につき不許可とした本件処分は適法である。
(原告の主張)
(1) 本件規則2条は,法10条が墓地等の経営主体を何ら制限していないのに,墓地等の経営主体を限定しているから,法10条に反して違法であり,また,職業選択の自由を侵害して違憲である。したがって,本件規則2条に規定する団体に該当しないことを理由とする本件処分は違法である。
原告が本件国際霊園を営もうとする目的は,原告の設立目的に沿って,日本で暮らす外国人にも墓地を提供し,外国人も含めた福祉を増進し,国際協力に寄与しようとするところにあり,墓地等の経営は,原告の事業のひとつの柱である。原告は,公益を図るために設立された特定非営利活動法人であって,営利を目的とする団体ではない。原告の墓地等経営による収益は,設立目的である上記特定非営利活動に係る事業に充当されるものであり(法5条),営利自体を目的とするものではない。したがって,原告及び原告の本件事業には,公共性,非営利性があり,原告は,民法34条の社団法人,財団法人に類する法人であるといえる。被告が援用する厚生省の通知等に特定非営利活動法人があげられていないのは,当時,特定非営利活動促進法が存在しなかったためにすぎず,同法人が法10条の墓地等の経営主体として不適格だからではないというべきである。したがって,被告は,公共の福祉の観点から,原告の事業に公共性,非営利性,永続性等が認められるか否かを検討すべきであるのに,その審査をせず,民法上の社団法人,財団法人でないとの一事をもって本件申請を不許可とする本件処分をしたものであり,本件処分はこの点からも違法である。
(2) また,被告は,本件申請を受理した平成13年2月15日の後に,本件規則を定めて本件申請に適用し,本件処分をした。被告の処理は,本件規則を遡及適用した点で違法である。
さらに,原告代表者は,合併前のα町からの依頼に応じて,霊園開設を準備してきた。ところが,被告は,原告からの本件申請を不許可にするため,急ぎ本件規則を定めた上で本件処分をしたものであり,原告の準備と従前からの行政の態度を無視するものであって違法である。
(3) 被告は,本件訴えにおいて,原告が財産目録,貸借対照表,収支決算書等を提出しなかったとして,墓地等の公共性,非営利性,永続性の観点から,原告に財政的基礎等が認められるか否か不明であったから,本件申請を不許可としたとの主張を追加するが,本件処分の理由には,そのような指摘はなく,また,そもそも,原告に対し,本件申請手続に際してこれらを提出するよう求めたこともなかったのであり,このような主張をすることは許されないというべきである。第3 当裁判所の判断
1 前提事実に前掲各証拠及び甲第1,第5ないし7号証並びに弁論の全趣旨を総合すると,原告は,本件申請に係る墓地経営について,従前から準備を進めてきており,被告もそのことを了知していたものであるが,被告は,原告の本件申請に対し,墓地の安定的な経営を行うに足りる十分な基本財産を有するか否か等を示す財産目録,貸借対照表,収支決算書等を提出するよう求めたこともなく,また,原告の本件事業に関する墓地造成計画や墓地の維持,管理計画について,資金的裏付けや将来にわたるその確実性の保障に関する詳細な裏付け資料,原告の活動の実績と安定性,原告の墓地経営事業分野における責任者等の組織,責任体制等の詳細,倫理性確保のための体制,利用者の権利や負担等に関する明確な契約案の存否,契約書案や説明資料の充実等々につき審査することもなく,専ら原告が本件規則2条に該当する団体でないとの一事をもって本件申請を不許可とする本件処分をしたことが認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
2 上記認定のとおり,本件処分は,専ら原告が本件規則2条に定める団体に該当しないとの形式的事由のみによって本件申請を不許可としたものであるが,原告の本件申請に係る墓地の経営事業について公共性,非営利性,永続性,必要性が認められるか否かに関し,原告の財政的基礎の確実性,責任を明確にした組織体制の有無,資金計画の確実性,墓地の造成,管理計画の適正等の実質的事由について何ら審査,判断されていない点において,違法たるを免れない。

すなわち,
(1) 法10条1項は,墓地等を経営(設置,管理,運営)しようとする者は,都道府県知事の許可を受けなければならないと規定するのみで,同許可の要件について特に規定していない。これは,墓地等の経営が,高度の公益性を有するとともに,国民の風俗習慣,宗教活動,各地方の地理的条件等に依存する面を有し,一律的な基準による規制になじみにくいことにかんがみ,墓地等の経営に関する許否の判断を都道府県知事の広範な裁量にゆだねる趣旨に出たものであって,法は,墓地等の管理及び埋葬等が国民の宗教的感情に適合し,かつ,公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障なく行われることを目的とする法の趣旨に従い,都道府県知事が,公益的見地から,墓地等の経営の許可に関する許否を行うことを予定していると解される(最高裁第二小法廷平成12年3月17日判決・裁判集民事197号661頁参照)。そして,この理は,市長たる被告において当該許可事務を処理することとされた現時点においても,基本的に同様であり,被告は,上記の趣旨に従って,その許否を判断しなければならないというべきである。
(2) 本件規則は,法10条による墓地等の経営主体を地方公共団体等一定の団体に限定しているが,昭和56年の茨城県墓地等経営許可事務処理要領にもほぼ同旨の記載があり,さらに,これらの背景には,厚生省の所管局課長から発せられた前記各通知があることは前提事実のとおりである。これらは,行政上の裁量に関する指針又は国からの助言の性質を有すると解されるところ,墓地等の経営が有する高度の公益性に照らすと,健全な安定的経営を永続させるため,その経営主体に公共性,健全性,非営利性,永続性が求められることはいうまでもなく,これらの点について十分な審査をせずに安易な許可処分がされれば,前記各通知が指摘する不都合な事態が現出し,これを是正することが困難となるなど,利用者保護の観点から看過し得ない事態が生ずるおそれがあるから,特に経営主体について厳正な審査を求める上記各通知の趣旨には,法の趣旨に沿った十分な合理的理由が認められる。そして,墓地の設置,維持,管理等が秩序をもって行われ,かつ,その管理,運営が営利目的のためにゆがめられるなどして利用者の保護を欠くことがないようにするためには,永続性が制度的に保障されている公益的団体である地方公共団体を原則的経営主体とすることには合理性があるし,公益法人や宗教法人は,株式会社等の営利を目的とする団体と異なり,所轄官庁による適切な管理,監督によってその墓地経営が健全な事業として永続的に行われることを確保しやすいので,経営主体としての適格性が高いとして,これらを墓地等の経営主体の例として掲げることは,その限りで合理性が認められる。
(3) しかしながら,上記各通知の趣旨は,墓地等の経営主体の適格性について厳正な審査を求めることによって,あくまで利用者を保護することに主眼があり,単に形式的に法人の形態等を審査すれば足りるとする趣旨でないことは,各通知の具体的内容自体によって明らかであり,前提事実(9)⑤掲記の指針(乙7)も,その趣旨を明確にして,墓地等経営許可に関する審査事項とその趣旨とを詳細に示して解説しているところである。したがって,これら通知によっても,許可権者には,当該市町村又は当該都道府県における地域的実情等による墓地等設置の必要性を勘案して,墓地等の経営許可申請の許否を通じて,墓地等の設置,管理の適正を期すべき責務があることが明らかにされているというべく,墓地等の経営の許可申請に対しては,上記観点に基づく実質的審査を行う必要があるといわなければならない。
(4) もとより,特別地方公共団体,公益法人,宗教法人であるからといって,当然に墓地等経営の適格性が認められるものではないのであり,逆に,公益法人,宗教法人以外の団体であっても,当該団体の目的の公益性,財政的基礎の確実性,永続性,組織における責任体制の明確性,墓地の造成,管理,運営に関する適正な規律や資金計画の確実性等が認められ,これらの点で公益法人,宗教法人に比べて遜色がないと認められる場合も考えられないではない。したがって,上記各点について実質的に審査することなく,申請に係る墓地等の経営主体が,単に公益法人や宗教法人でないという一事をもって申請を不許可とすることは,実質的に利用者保護を図ろうとしている法及び前記各通知の趣旨に反し,被告に与えられた裁量権を逸脱するものとして違法であると解するのが相当である。
(5) しかるに,被告は,本件申請について,原告が本件規則2条の団体に該当しないとの形式的理由のみによって,不許可とする本件処分をしたものであり,特定非営利活動促進法に基づく特定非営利活動法人である原告が,何らの実質的審査なくして当然に墓地等経営における公共性,非営利性,永続性の認められない団体
であると断ずることはできないから,本件処分は,法の趣旨に反し,被告に与えられた裁量権を逸脱したものとして違法であるといわざるを得ない。3 なお,本件処分の理由について,被告は,本件訴訟において,原告が,申請にかかる土地を所有していない上,本件申請に際し,財産目録,貸借対照表,収支決算書等を提出しなかったため,原告に当該墓地等を経営するに足る財政的基礎及び組織があるか否か,確実な資金計画に基づく墓地造成計画及び墓地に関する適切な管理運営計画が策定されているか否かが不明であり,本件申請に許可要件が備わっているとはいえないから,本件申請を不許可とした本件処分は適法である旨主張する。しかしながら,前示のとおり,被告は,原告の財政的基礎や組織,資金計画,墓地造成計画,墓地の管理運営計画等の実質的審査事項について一切審査することなく,本件規則が定める団体でないとの形式的理由のみによって本件申請を不許可とする本件処分をしたものであり,本件処分は,本件規則2条に該当する団体であることが本件許可の独立の1要件であるとの見解に基づくものと解するほかないから,同見解に基づく当該判断の当否が本件訴訟の対象となっているものというべきであって,被告主張の実質的理由に本件処分理由を差し替えることは許されないというべきである。
第4 結論
よって,その余の点について判断するまでもなく,本件処分は違法であるから,当裁判所は,被告に対し,第1次判断権を行使して前記実質的理由について審査させるため,本件処分を取り消すこととし,主文のとおり判決する。水戸地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官 松本光一郎
裁判官 廣田泰士
裁判官 秋元健一

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