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所得税更正処分等取消請求事件
事件番号平成12(行ウ)309等
事件名所得税更正処分等取消請求事件
裁判年月日平成15年8月26日
法廷名東京地方裁判所
判示事項外国法人の子会社である日本法人の取締役が,親会社である当該外国法人から,同社の株式を一定の期間内に定められた権利行使価格で購入できる権利であるいわゆるストックオプションを付与され,その権利を行使して得た利益が一時所得に当たるとして確定申告をしたところ,税務署長が当該利益は給与所得に該当するとしてした更正処分が,一部取り消された事例
裁判要旨外国法人の子会社である日本法人の取締役が,親会社である当該外国法人から,同社の株式を一定の期間内に定められた権利行使価格で購入できる権利であるいわゆるストックオプションを付与され,その権利を行使して得た利益が一時所得に当たるとして確定申告をしたところ,税務署長が当該利益は給与所得に該当するとしてした更正処分につき,ストックオプションを行使して得られる権利行使益について,その具体的な発生の有無及び享受する額は,多様な諸要因によってその時々に形成された株式の時価及び行使者自身の判断による権利行使の時期という,多分に偶発的,一時的な要因によって定まるものであるから,親会社から同人に対して与えられた経済的利益であると評価することは相当でないし,仮に,親会社からの給付に係るものであるとしても,同人が親会社との関係で,子会社への労務の提供が義務付けられていたとは認められないことや,同人の子会社に対する労務の提供をもって,親会社に対する労務の提供と同視できないことからすると,「雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受けた給付」であると認めることはできないから,同権利行使益は,給与所得に該当するとはいえず,一時所得に該当するものというべきであるとして,前記更正処分を一部取り消した事例
裁判日:西暦2003-08-26
情報公開日2017-10-19 21:07:41
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主 文
1 被告が平成11年12月24日付けで原告に対してした原告の平成10年分の所得税に係る更正処分のうち,総所得金額4億2288万1813円,納付すべき税額1億7323万9500円を超える部分を取り消す。
2 被告が平成12年10月31日付けで原告に対してした原告の平成11年分の所得税に係る更正処分のうち,総所得金額2億3929万7112円,納付すべき税額6680万4100円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし,いずれも平成13年3月21日付け異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。3 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
第1事件,第2事件とも,主文同旨
第2 事案の概要
本件は,原告の平成10年分(第1事件)及び平成11年分(第2事件)の所得税申告に対し,被告が,原告に生じたストック・オプション(会社が自社又は子会社の従業員,役員等に対して付与する,自社株式を一定の期間内に予め定められた権利行使価格で購入することができる権利)の権利行使益が一時所得でなく給与所得に当たるとして更正処分等を行ったことから,原告が,これらの処分は違法であると主張し,上記各処分等のうち,ストック・オプションの権利行使益を一時所得として算定した金額等を超える部分の取消しを求めている事案である。1 法令の定め等
(1) 所得税法の定める所得区分について
ア 所得税法(昭和40年法律第33号)は,居住者に対して課する所得税額の計算に関し,その所得を利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得,一時所得又は雑所得に区分し,これらの所得ごとに所得の金額を計算する旨規定する(同法21条1項1号)。
イ 給与所得とは,俸給,給料,賃金,歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与にかかる所得をいう(所得税法28条1項)。
ウ 一時所得とは,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう(所得税法34条1項)。
エ 雑所得とは,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう(所得税法35条1項)。
オ 給与所得及び雑所得については,それぞれ所得税法28条及び35条の規定により計算した所得金額が,所得税の課税標準とされる総所得金額に算入されるのに対し,一時所得については,同法34条の規定により計算した所得金額の2分の1に相当する金額が総所得金額に算入される(同法22条1項,2項1号及び2号)。(2) ストック・オプションに関する法制度について
ア 従来,我が国の商法の下では,ストック・オプション制度を導入するために必要な自社株式を手当する方法として,新株の有利発行及び自社株式の取得があったが,新株の有利発行については,株主総会の特別決議の効力が6か月に制限されており,自社株式の取得についても,自己株式の償却期間が6か月に制限されていたことから,我が国の会社は法制度上ストック・オプション制度を導入することは実質的に困難な状況にあった。
イ しかしながら,平成7年11月,特定新規事業実施円滑化臨時措置法(平成元年法律第59号。ただし,平成11年法律第223号により廃止。以下新規事業法という。)の改正(平成7年法律第128号)により,商法の特例措置として,特定の株式未公開企業に限り,新株の有利発行に関する株主総会の特別決議の効力を10年に延長することが認められ,これらの企業については,新株引受権を付与する方法によるストック・オプションの付与が可能となった。
ウ さらに,平成9年5月,商法(明治32年法律第48号)の改正(平成9年法律第56号)により,新株引受権方式のストック・オプション制度が新設されるとともに(平成12年法律第90号による改正前の同法280条ノ19),使用人に譲渡するための自己株式取得について,償却期間が10年に延長されたことから(平成13年法律第79号による改正前の同法210条ノ2),自己株式を取得する方法によるストック・オプションの導入が可能となった。ただし,子会社の従業員など,自社従業員等以外
の者に対するストック・オプションについての規定は設けられなかった。エ その後,平成13年に,商法が改正され(同年法律第79号,同第128号),新株予約権の概念の導入(同年法律第128号による改正後の同法280条ノ19)により,ストック・オプションは,新株予約権の有利発行という形で一本化されるとともに,ストック・オプションの付与株式数の制限の撤廃,付与対象者を自社従業員等とする制限の撤廃,権利行使期間の制限の撤廃等により,ストック・オプションの要件は大幅に緩和されるに至っている。
(3) ストック・オプションに関する課税の推移について
ア 平成7年の新規事業法改正以前においては,ストック・オプションに対する課税について定めた法令及び通達は存在しなかった。
もっとも,自社従業員等に対し,株主総会決議後6か月間に限って有利な発行価額による新株引受権を付与した場合の課税について,所得税法施行令(昭和40年政令第96号。ただし,平成10年政令第104号による改正前のもの)84条は,上記権利に係る収入金額を,原則として当該権利に基づく払込みに係る期日における新株等の価額から当該新株等の発行価額を控除した金額によることとし,所得税基本通達(昭和45年7月1日付け直審(所)第30号。ただし,平成8年6月18日付け課法8-2による改正前のもの)23~35共-6は,発行法人から有利な発行価額により新株等を取得する権利を与えられた場合には,当該権利を行使して新株等についての申込みをしたときに,上記発行価額と権利行使時の新株等の価額との差額に対し,一時所得として課税することとしつつ,当該権利が従業員等に対し支給すべきであった給与等又は退職手当等に代えて与えられたと認められる場合には,給与所得又は退職所得とする旨定めていた。
イ 平成7年の新規事業法改正により,ストック・オプション制度が一定の範囲で導入されたことから,租税特別措置法(昭和32年法律第26号。以下措置法という。)29条の2(ただし,平成10年法律第23号による改正前のもの)において,新規事業法に基づくストック・オプションについて,権利行使によって取得した株式を譲渡した時点で,譲渡価格と権利行使価格との差額に対し,譲渡所得として課税することが規定された。
また,所得税基本通達23~35共-6においても,新株等を取得する権利を与えられた場合の所得を一時所得としつつ,当該発行法人の役員又は使用人に対しその地位又は職務等に関して当該新株等を取得する権利を与えたと認められる場合には給与所得とし,これらのものの退職に基因して当該新株等を取得する権利を与えられたと認められる場合には退職所得とする旨の改正が行われた(平成8年6月18日付け課法8-2)。
ウ さらに,平成9年5月の商法改正に伴い,措置法29条の2が改正され(平成10年法律第23号),商法に基づくストック・オプションについても,一定の限度において,その付与時や権利行使時に所得税を課税せず,権利行使によって取得した株式を譲渡した時点で,譲渡価格と権利行使価格との差額に対し,譲渡所得として課税する旨規定されたほか,所得税法施行令84条も改正され(平成10年政令第104号),上記ストック・オプションに係る収入金額を,権利行使の日の当該株式の価額から権利行使価格を控除した額とする旨定められたが,上記以外のストック・オプションによる所得課税については,法令上の規定は設けられなかった。 また,所得税基本通達23~35共-6においても,上記各法令の改正に対応する定めが設けられたものの(平成10年10月1日付け課法8-2),上記以外のストック・オプションによる所得課税についての定めは設けられなかった。エ その後,平成13年における商法改正を受けて,措置法29条の2及び所得税法施行令84条がそれぞれ改正されたほか(措置法改正につき平成14年法律第15号,所得税法施行令改正につき同年政令第103号),所得税基本通達23~35共-6においても,平成13年法律第79号による改正前の商法210条ノ2第2項(取締役又は使用人に譲渡するための自己株式の取得)の決議に基づき与えられた同項3号に規定する権利(所得税法施行令84条1号),及び,同年法律第128号による改正前の商法280条ノ19第2項(取締役又は使用人に対する新株引受権の付与)の決議に基づき与えられた同項に規定する新株の引受権(所得税法施行令84条2号)を与えられた取締役又は使用人がこれを行使した場合は,原則として給与所得とし,職務の遂行と関連を有しない場合は雑所得とすることとされ,また,有利発行による新株予約権(同条3号)を与えられた者がこれを行使した場合に,雇用契約又はこれに類する関係に基因して当該権利を与えられたと認められるときは,同条1号及び2号に掲げる権利を与えられた場合に準じた扱いをすることとされ,さらに,発行法人が外国法人の場合で
も同様の扱いとする旨の定めが設けられた(平成14年6月24日付け課個2-5ほか3課共同)。
2 前提となる事実(各項末尾に掲記した証拠等により認める。)(1) 米国インテル社が原告に付与したストック・オプションについてア 原告は,平成4年7月16日から平成11年4月30日まで,インテル株式会社(以下日本インテル社という。)の取締役を務め,うち平成5年9月9日から平成11年4月30日までは,同社の代表取締役を務めていた。
(弁論の全趣旨)
イ 日本インテル社は,昭和46年10月1日にアメリカ合衆国カリフォルニア州所在のインテル・コーポレーション(以下米国インテル社という。)の日本支社として営業を開始し,昭和51年4月28日にインテルジャパン株式会社として分社化した会社であり,その後,米国インテル社が,同社の100パーセント子会社であるアメリカ合衆国カリフォルニア州所在のインテルインターナショナル社に対し,日本インテル社の全株式を売却したことから,米国インテル社の100パーセント子会社であるインテルインターナショナル社の100パーセント子会社となり,現在に至っている。
(乙16,弁論の全趣旨)
ウ 米国インテル社におけるストック・オプション制度
米国インテル社においては,米国インテル社及びその子会社(米国インテル社が直接又は間接に議決権の50パーセント以上を保有する企業をいい,以下インテルということがある。)の利益を増大させることや重要社員の維持を目的としたストック・オプション制度が,遅くとも1984年(昭和59年)以降存在していた。
同制度によれば,米国インテル社のストック・オプションは,インテルの業務遂行において成功を収めることに,その判断,関心,能力及び特別な努力を通じて,広範な責任をもつ,インテルの主要な従業員及び社外取締役に対してのみ付与される(インテルコーポレーション1984年版ストックオプションプラン(1994年5月4日に改定,再述され有効となる)(以下本件プランという。)6項)。
オプションの購入価格は,取締役会のメンバーで取締役会から指名されたストックオプション委員会により設定されるものとし,付与日における株式の公正市場価格の100パーセント以上であってはならない(本件プラン6項(a))。 また,オプションは遺言又は相続及び遺産分配によってのみ譲渡可能であり,本人の存命中はオプションの被付与者によってのみ行使可能である(本件プラン6項(e))。
さらに,オプションの行使期間は,付与日から10年間であるが(本件プラン6項(b)),オプションの被付与者は,付与日から最低1年間インテルの社員の地位又は社外取締役の職務にとどまることに同意することとされており,被付与者である社外取締役が死亡,就労不能等により業務を終了した場合には,権利行使に制限が付される(本件プラン6項(d),9項)。
(乙17,弁論の全趣旨)
エ 原告は,日本インテル社に在職中に,米国インテル社との間でストック・オプション付与契約を締結し,同社から,同社のストック・オプション制度に基づき,同社の株式に係るストック・オプションの付与を受けた。(当事者間に争いがない事実)
(2) 原告のストック・オプション権利行使益等に対する課税処分の経緯等ア 原告は,平成10年中及び平成11年中に,米国インテル社から付与を受けたストック・オプションをそれぞれ行使し,平成10年中に6億9649万1740円,平成11年中に3億9258万1867円の権利行使益を取得した(以下,原告が平成10年及び平成11年に各取得した権利行使益をそれぞれ本件10年分権利行使益本件11年分権利行使益といい,これらを併せて,本件権利行使益という。また,原告が米国インテル社から付与され,平成10年及び平成11年中に行使したストック・オプションを本件ストック・オプションという。)。
(当事者間に争いがない事実)
イa 原告は,平成11年3月8日,被告に対し,原告の平成10年分に係る所得税について,本件10年分権利行使益が一時所得に該当するとして,確定申告書を提出した。
b これに対し,被告は,本件10年分権利行使益が給与所得に該当すると
して,平成11年12月24日付けで,原告の平成10年分に係る所得税につき,更正処分(以下本件10年分更正処分という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。
c 原告は,平成12年1月13日,被告に対し,上記各処分を不服として異議申立てをしたが,異議申立ての日の翌日から起算して3か月を経過しても異議決定をしなかった。
d そこで,原告は,平成12年5月26日,国税不服審判所長に対し,前記bの各処分に対する審査請求を行ったが,審査請求の日の翌日から起算して3か月を経過しても審査裁決がされなかったことから,同年11月30日,第1事件に係る訴えを提起した。
その後,国税不服審判所長は,平成14年4月15日付けで,原告の上記審査請求を棄却する旨の裁決を行った。
(審査裁決につき乙21。その余の事実は当事者間に争いがない。)ウa 原告は,平成12年2月29日,被告に対し,原告の平成11年分に係る所得税について,本件11年分権利行使益が一時所得に該当するものとして,確定申告書を提出した。
b これに対し,被告は,本件11年分権利行使益が給与所得に該当するとして,平成12年10月31日付けで,原告の平成11年分に係る所得税につき,更正処分(以下本件11年分更正処分といい,本件10年分更正処分と併せて,本件各更正処分という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下本件11年分賦課決定処分という。)を行った。c 原告は,平成12年12月22日,被告に対し,上記各処分を不服として異議申立てをした。
これに対し,被告は,平成13年3月21日付けで,本件11年分権利行使益が給与所得に該当するとしつつ,上記bの各処分の一部を取り消す旨の決定を行った。
d さらに,原告は,平成13年4月20日,国税不服審判所長に対し,前記bの各処分に対する審査請求を行ったが,審査請求の日の翌日から起算して3か月を経過しても審査裁決がされなかったことから,同年8月1日,第2事件に係る訴えを提起した。
その後,国税不服審判所長は,平成14年4月15日付けで,原告の上記審査請求を棄却する旨の裁決を行った。
(審査裁決につき乙21。その余の事実は当事者間に争いがない。)エ なお,原告の平成10年分及び平成11年分の所得税に関する確定申告,更正処分及びこれに対する不服申立て等の経緯は,それぞれ別表1及び2記載のとおりである(なお,平成10年分の過少申告加算税については,平成13年4月9日付け変更決定により,同表変更決定欄記載のとおり減額されている(乙21)。)。3 被告による本件各更正処分等の適法性の根拠
(1) 本件10年分更正処分の適法性について
ア 主位的主張
a 総所得金額 7億3655万3096円 上記金額は,次の(a)及び(b)の各金額の合計額である。
(a) 給与所得金額 7億3605万3097円
上記金額は,次のⅰ及びⅱの各給与収入の合計額から,所得税法28条3項に規定する給与所得控除額を同条2項の規定に基づいて控除した後の金額である。
ⅰ 日本インテル社からの給与収入金額
8009万0468円
上記金額は,原告が平成10年分所得税の確定申告書(以下平成10年分確定申告書という。)に給与の収入金額として記載した金額と同額である。
ⅱ ストック・オプションの権利行使に係る米国インテル社からの給与収入金額
6億9649万1740円
上記金額は,原告が平成10年分確定申告書裏面の一時所得の収入金額欄に米国インテル社から得たストック・オプションの権利行使に係る経済的利益として記載した金額と同額である。
(b) 雑所得
49万
9999円

上記金額は,次のⅰないしⅲの各金額の合計額である。
ⅰ 原告が平成10年分確定申告書に記載した雑所得の収入金額
33万3333円
上記金額は,原告が,平成10年分確定申告書に記載したNTTアドバンステクノロジ株式会社からの講演謝礼の収入金額22万2222円及び株式会社日本経済新聞社からの講演料の収入金額11万1111円の合計額である。ⅱ 有限会社セミ・ジャパンからの講演料の収入金額
5万5555円
ⅲ 社団法人日本ファシリティマネジメント推進協会からの講演料の収入金額
11万1111円
b 所得控除の金額
350万0745円
上記金額は,原告の所得控除の合計額であり,原告が平成10年分確定申告書に記載した金額と同額である。
c 課税総所得金額
7億3305万2000円
上記金額は,前記aの総所得金額7億3655万3096円から上記bの所得控除の金額350万0745円を控除した後の金額(ただし,国税通則法(以下通則法という。)118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。d 納付すべき税額

3億3007万5000円
上記金額は,次の(a)から(b)及び(c)の合計額を差し引いた後の金額(ただし,通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。
(a) 課税総所得金額に対する税額
3億6049万
6000円
上記金額は,前記cの課税総所得金額7億3305万2000円に所得税法89条1項の税率を乗じて算出した金額である。
(b) 特別減税額 9万5000円
上記金額は,原告が平成10年分確定申告書に記載した金額と同額である。
(c) 源泉徴収税額
3032万
5954円
上記金額は,原告が平成10年分確定申告書に記載した金額に,上記a(b)ⅱ及びⅲに係る源泉徴収税額1万6666円を加算した金額である。イ 予備的主張
a 総所得金額 7億7137万7683円 上記金額は,次の(a)及び(b)の各金額の合計額である。
(a) 給与所得金額
7438万
5944円
上記金額は,前記アa(a)ⅰの日本インテル社からの給与収入金額から,所得税法28条3項に規定する給与所得控除額を同条2項の規定に基づいて控除した後の金額である。
(b) 雑所得の金額 6億9699万1739円
上記金額は,次のⅰないしⅲの各金額の合計額である。
ⅰ 前記アa(b)ⅰの雑収入の収入金額
33万
3333円
ⅱ 前記アa(b)ⅱの雑収入の収入金額
5万
5555円
ⅲ 前記アa(b)ⅲの雑収入の収入金額
11万
1111円
ⅳ 前記アa(a)ⅱのストック・オプションの権利行使に係る米国インテル社からの経済的利益の金額
6億9649万1740円
b 所得控除の金額
350万0745円
上記金額は,前記アbの所得控除の額と同額である。
c 課税総所得金額 7億6787万6000円 上記金額は,前記aの総所得金額7億7137万7683円から上記bの所得控除の金額350万0745円を控除した後の金額(ただし,通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。
d 納付すべき税額 3億4748万7000円
上記金額は,次の(a)から(b)及び(c)の合計額3042万0954円を差し引いた後の金額(ただし,通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。
(a) 課税総所得金額に対する税額 3億7790万8000円
上記金額は,前記cの課税総所得金額7億6787万6000円に所得税法89条1項の税率を乗じて算出した金額である。
(b) 特別減税額

9万
5000円
上記金額は,前記アd(b)の特別減税額と同額である。
(c) 源泉徴収税額

3032万
5954円
上記金額は,前記アd(c)の源泉徴収税額と同額である。
ウ 本件10年分更正処分の適法性について
被告は,本訴において,原告の平成10年分の所得税に係る納付すべき税額について,主位的には前記アdのとおり3億3007万5000円,予備的には前記イdのとおり3億4748万7000円と主張するものであるところ,本件10年分更正処分に係る納付すべき税額3億3007万5000円は,上記各金額と同額又はその範囲内であるから,本件10年分更正処分は適法である。
(2) 本件11年分更正処分及び本件11年分賦課決定処分の適法性についてア 主位的主張
a 総所得金額(給与所得の金額) 4億1439万4803円 上記金額は,次の(a)ないし(e)の各給与収入の合計額から,所得税法28条3項に規定する給与所得控除額を同条2項の規定に基づいて控除した後の金額である。
(a) 日本インテル社からの給与収入金額 4399万8083円
(b) 有限会社メディア企画からの給与収入金額 126万円
(c) 早稲田大学からの給与収入金額 10万1580円
(d) 学校法人近畿大学からの給与収入金額 5万3000円
なお,上記(a)ないし(d)の各金額は,いずれも原告の平成11年分所得税の確定申告書(以下平成11年分確定申告書という。)に添付された給与所得の源泉徴収票の支払金額欄に記載された金額である。
(e) ストック・オプションの権利行使に係る米国インテル社からの給与収入金額

3億9258万1867円
上記金額は,原告が米国インテル社から得たストック・オプションの平成11年中の権利行使に係る経済的利益の合計金額である。
b 株式等に係る譲渡所得等の金額 102万4218円 上記金額は,原告が米国インテル社から得たストック・オプションの行使により取得した同社の株式の平成11年中の譲渡に係る譲渡所得の合計金額である。
c 所得控除の額の合計額 227万9695円 上記金額は,原告が平成11年分確定申告書に記載した所得控除の額の合計額と同額である。
d 課税総所得金額
4億1211万5000円
上記金額は,前記aの総所得金額4億1439万4803円から上記cの所得控除の額の合計額227万9695円を控除した後の金額(ただし,通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。
e 課税譲渡所得金額 102万4000円 上記金額は,前記bの株式等に係る譲渡所得の金額102万4218円について,通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた金額である。f 納付すべき税額 1億3179万5200円 上記金額は,次の(a)及び(b)の合計額から(c)及び(d)の合計額を差し引いた後の金額(ただし,通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。

(a) 課税総所得金額に対する税額

1億4999万

2550円
上記金額は,前記dの課税総所得金額4億1211万5000円に所得税法89条1項の税率(経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律(平成11年法律第8号)4条の規定を適用したもの)を乗じて算出した金額である。
(b) 課税譲渡所得金額に対する税額
20万
4800円
上記金額は,前記eの課税譲渡所得金額102万4000円に措置法37条の10第1項(ただし,平成12年法律第97号による改正前のもの)の規定に基づき100分の20の割合を乗じて算出した金額である。
(c) 定率減税額 25万円
上記金額は,経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律6条2項の規定により計算した金額であり,原告が平成11年分確定申告書に記載した金額と同額である。
(d) 源泉徴収税額
1815万
2125円
上記金額は,原告が平成11年分確定申告書に記載した源泉徴収金額と同額である。
イ 予備的主張
a 総所得金額 4億3402万3896円 上記金額は,次の(a)及び(b)の各金額の合計額である。
(a) 給与所得金額
4144万
2029円
上記金額は,前記アa(a)ないし(d)の各給与の収入金額の合計額4541万2663円から,所得税法28条3項に規定する給与所得控除額を同条2項の規定に基づいて控除した後の金額である。
(b) 雑所得の金額 3億9258万1867円
上記金額は,前記アa(e)のストック・オプションの権利行使に係る米国インテル社からの経済的利益の金額と同額である。
b 株式等に係る譲渡所得等の金額
102万4218円
上記金額は,前記アbの譲渡所得等の金額と同額である。
c 所得控除の額の合計額 227万9695円 上記金額は,前記アcの所得控除の額の合計額と同額である。
d 課税総所得金額 4億3174万4000円 上記金額は,前記aの総所得金額4億3402万3896円から上記cの所得控除の額の合計額227万9695円を控除した後の金額(ただし,通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。
e 課税譲渡所得金額 102万4000円 上記金額は,前記アeの課税譲渡所得金額と同額である。
f 納付すべき税額 1億3905万7900円 上記金額は,次の(a)及び(b)の合計額から(c)及び(d)の合計額を差し引いた後の金額(ただし,通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。
(a) 課税総所得金額に対する税額 1億5725万5280円
上記金額は,前記dの課税総所得金額4億3174万4000円に所得税法89条1項の税率(経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律4条の規定を適用したもの)を乗じて算出した金額である。(b) 課税譲渡所得金額に対する税額
20万
4800円
上記金額は,前記アf(b)の課税譲渡所得金額に対する税額と同額である。
(c) 定率減税額 25万円
上記金額は,前記アf(c)の定率減税額と同額である。

(d) 源泉徴収税額

1815万

2125円
上記金額は,前記アf(d)の源泉徴収税額と同額である。
ウ 本件11年分更正処分の適法性について
被告は,本訴において,原告の平成11年分の所得税に係る納付すべき税額について,主位的には前記アfのとおり1億3179万5200円と主張し,予備的には前記イfのとおり1億3905万7900円と主張するものであるところ,本件11年分更正処分に係る納付すべき税額1億3179万5200円は,上記各金額と同額又はその範囲内であるから,本件11年分更正処分は適法である。
エ 本件11年分賦課決定処分の適法性について
原告は,平成11年分の所得税につき,納付すべき税額を過少に記載して同年分の確定申告書を被告に提出しているところ,納付すべき税額を過少に申告していたことについて通則法65条4項に規定する正当な理由は認められない。 したがって,原告が本件11年分更正処分により新たに納付すべきこととなった税額6499万円(同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に,被告が同法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて過少申告加算税649万9000円を賦課することとした本件11年分賦課決定処分は適法である。(3) なお,本件各更正処分のうち,本件権利行使益の所得区分以外の点については,当事者間に争いがない。
4 当事者の主張
(被告の主張)
(1) ストック・オプション制度について
ストック・オプション制度は,会社が自社又は子会社の従業員等に対し,予め定められた権利行使価格で自社株式を購入できる権利を付与する制度であり,被付与者である従業員等は,当該株式の時価が権利行使価格を上回った場合にストック・オプションを行使して株式を取得し,当該株式の時価と権利行使価格の差額に相当する額の経済的利益(権利行使益)を享受することができる。 この制度は,従業員等に将来の自社株式の価格と連動した経済的利益の供与を約することにより,優秀な人材を確保し,従業員等の精勤意欲を向上させ,会社の業績向上を図るものであって,長期インセンティブ報酬制度ということができる。また,アメリカ合衆国では,事業の分社化による組織面からの勤労意欲の向上と,ストック・オプションによる報酬面からの勤労意欲の向上の相乗効果が期待されており,子会社等の従業員等にもストック・オプションを付与することにより,当該従業員等の子会社における精勤を通じた親会社及びグループ全体の業績の向上が志向されている。
(2) ストック・オプションの性質
ア ストック・オプション付与契約には,上記のようなインセンティブ報酬としての性格から,次のaないしdのような特徴が認められる。
a 被付与者は,付与会社又はその子会社との間で雇用契約等を締結している従業員等でなければならない。
b ストック・オプションの行使は,付与された従業員等に限られ,その譲渡は禁止されている。
c ストック・オプションの行使につき,一定期間の勤務,権利行使期間等の条件が定められる。
d 権利行使の条件とされる勤務すべき一定の期間中に,退職等により雇用契約等が終了した場合には,権利が消滅し,一定期間経過後に雇用契約等が終了した場合には,権利が消滅したり,権利行使期間が制限されたりすることが多い。イ これらの特徴に照らせば,ストック・オプション付与契約は,従業員等とその勤務先との雇用契約等に従属する従たる契約であって,権利行使時における当該株式の時価と権利行使価格との差額に相当する経済的利益を,従業員等の勤務先における労務の対価として取得させる趣旨のものであり,売買(株式譲渡)の一方の予約に類似する契約に,予約完結権の譲渡禁止の約定や,勤務先における一定期間の勤務等の停止条件が付されたものということができる。
そして,被付与者である従業員等が予約完結権を行使することにより,株式譲渡契約が成立して株式引渡請求権が発生し,付与会社が行使時の時価より低額な権利行使価格による株式引渡義務を負うことにより,従業員等に経済的な利益が与えられるが,従業員等は,権利行使をしない限り,具体的な利益を得ることはできない。

(3) ストック・オプションに係る課税関係について
ア 我が国の所得税法は,いわゆる包括的所得概念を採用しており,人の担税力を増加させる経済的利得はすべて所得に含まれることとなるところ,同法が課税対象となる所得を収入としてとらえていることに照らせば,未実現の利益を課税対象となる所得から除外し,実現した利益のみを課税対象とする実現主義が採用されているものと解される。そして,このような意味の実現主義と,同法36条1項が所得計算における収入金額を収入すべき金額と規定していることとを併せ考えると,同法は,すべての所得は実現と同時に課税対象たる所得となるものとしていると解される。
そして,所得税法は,所得の実現時期について,外部の世界との間で取引が行われ,その対価を収受すべき権利が確定した時点をもって所得の実現時期とする,権利確定主義を採用しているものと解される。
イ これをストック・オプションについてみると,被付与者は,予約完結権の行使によって,付与会社に対する株式引渡請求権を取得して権利行使益を得ることができるが,予約完結権を行使しない限り,何らの利益を得ることもできない。 そして,ストック・オプション付与契約は,将来における権利行使価格による株式譲渡の合意であり,ストック・オプション自体は,これを行使して付与会社から株式を取得することにより権利行使益という所得を生み出す手段としての性質を有するにすぎない。
このように,ストック・オプションの被付与者が得る経済的利得は,予約完結権を行使して株式引渡請求権を取得したことにより実現する権利行使益であり,予約完結権の行使によって初めて所得が
実現し,法的にも当該利得を
収受すべき権利が確定するから,その時点が課税時期となる。
ウ これに対し,ストック・オプションを権利の付与とその権利の増加益の実現とに分けて所得税の課税を検討することは,権利行使益を報酬として与えるストック・オプション制度の実態に反するものであり,実現主義の観点からも,ストック・オプションという権利の状態のままでは,たとえその行使が可能であっても,所得税の課税適状にないというべきである。
エ なお,いわゆる分離型の新株引受権付社債(平成13年法律第128号による改正前の商法341条ノ8第2項5号)を発行した後,新株引受権証券(ワラント)の部分を買い戻して従業員等に支給する,いわゆる擬似ストック・オプションの場合に,支給時において当該ワラントの価額相当部分について給与所得として課税するのは,ワラントがそれ自体有価証券として譲渡性を認められており,支給された時点で経済的利益が実現されたと評価できるからであって,ストック・オプションについて付与時でなく権利行使時において課税することとは矛盾しない。 また,相続人が被相続人の有していたストック・オプションを相続した場合,相続時において株価と権利行使価格との差額に相続税が課されるのは,相続税が金銭に見積もることのできる経済的価値のすべてを課税物件とすることによるものであり,所得税法上の課税物件である所得は,ストック・オプションが行使されない限り発生しないことから,その付与時又は権利行使可能時に課税されないのであって,これらの取扱いは相互に矛盾するものではない。
(4) ストック・オプションの権利行使益が給与所得に該当することア 給与所得の意義
給与所得とは,俸給,給料,賃金,歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得(所得税法28条1項)であり,勤労性所得(人的役務からの所得)のうち,雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価を広く含むものである。
そうすると,給与所得該当性が認められるかどうかは,非独立的労働ないし従属的労働の対価といえるかどうかが重要であるところ,最高裁判所昭和37年8月10日第二小法廷判決(民集16巻8号1749頁)は,勤労者が勤労者たる地位に基づいて使用者から受ける給付は,すべて給与所得を構成する収入と解すべきである旨判示しており,従業員等が受ける給付は,それが従業員等の地位に基づくものである限り,広い意味で,勤務の対価としての性質を有することから,広く給与所得に該当することとなる。
イ 自社株式のストック・オプションの場合
a 自社株式のストック・オプション付与契約は,前記(2)アのとおり,従業員等とその勤務先会社との雇用契約等を不可欠の前提として締結される契約であって,従業員等にストック・オプションの権利行使益を労務の対価として取得させ
るためのものであるから,従業員等の地位に基づいて付与された上記権利行使益は,労務の対価としての性質を有し,給与所得に該当することとなる。 なお,措置法第2章所得税の特例,第3節給与所得及び退職所得に置かれている同法29条の2の規定は,商法上のストック・オプションに係る所得税が権利行使時において給与所得として課税されるものであることを前提として,同条1項所定の要件を満たすいわゆる税制適格型のストック・オプションについて,株式の譲渡時まで課税の繰延べを認める趣旨のものであるから,それ以外の同様の性質を有するストック・オプションに係る権利行使益については,このような特段の定めがない以上,原則どおり,行使時において給与所得課税を行うべきである。
b これに対し,原告は,権利行使益には通常の給与のような役務の質及び量との相関関係がなく,役務の提供と株価の上昇の間にも関連がないことから,権利行使益は役務の対価に当たらない旨主張している。
しかし,従業員等の地位に基づく給付という広い意味での労務の対価性こそが,勤労性所得である給与所得の本質的な要素であって,そのような広い意味での対価性が認められる限り,勤労者がその地位に基づいて受ける給付は,原則として給与所得に該当するというべきであり,厳密な意味における役務提供の反対給付でなくても,広く役務提供に由来する給付であれば,給与所得に該当すると解される。
また,ストック・オプションの権利行使益の場合,その取得の可否及び金額が,株価の推移や権利を行使する者の投資判断という,被付与者の就労の質及び量とは異なる要素によって定まることから,これを労務の対価とみることはできないとの考え方もある。
しかしながら,ストック・オプション制度は,株価の変動を前提として,付与会社が従業員等に対し,株式の値上がり益に相当する権利行使益を獲得する機会を与える点に特徴があり,いつストック・オプションを行使するかを被付与者に選択させることにより,インセンティブとしての魅力が高められているのであって,長期インセンティブ報酬制度であるストック・オプション制度において,従業員等の就労と権利行使益との間に何らの相関関係もないことはあり得ないというべきである。
また,ストック・オプションを付与する対象者,付与する場合の数量,条件等が,当該従業員の労務の実績,貢献度等を評価して定められることからも,権利行使益は労働の質及び量に関連するということができる。 このように,ストック・オプション制度は,会社が従業員等に権利行使益を与える目的でストック・オプションを付与し,被付与者がこれを行使して初めて利益を得ることができるものであり,付与会社が実質的に自己の損失において被付与者に損失相当分の経済的利益を与えるものであるところ,合理的経済活動を行う会社が何らの反対給付を求めないことはあり得ないことからすれば,このような利益を与える理由は,当該被付与者から受ける役務の提供に基因するものと解するほかないから,権利行使益は労務の対価というべきであり,現実に生じた株価の上昇と,被付与者の提供した労務の質及び量との直接的な関連が希薄であったとしても,権利行使益が労務の対価であることに変わりはない。
なお,ストック・オプションの権利行使益について,実質的には付与会社の損失において被付与者に経済的な利益を与える関係にありながら,法人税法上,権利行使益相当額を付与会社の損失としていないのは,法人税法上の問題として,付与会社において権利行使益相当額を損益として認識しない扱いとしているにすぎず,実質的にみて付与会社に損失がないとするものではない。ウ 親会社株式のストック・オプションの場合
a 親会社から付与されたストック・オプションの場合,上記イで検討した点は同様に妥当するものの,雇用契約等の当事者とこれを前提とするストック・オプション付与契約の当事者とが一致しないことから,勤務先の会社以外の第三者から与えられたストック・オプションの権利行使益も給与所得に該当するか否かが問題となる。
b この点,前記アの観点からすれば,雇用契約等の当事者である使用者以外の者からの給付であっても,当該給付が使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価と認められる限り,所得税法28条1項に規定するこれらの性質を有する給与として,給与所得に該当するというべきである。 そして,被付与者は子会社の従業員等の地位にあり,子会社の指揮命
令に服して一定期間勤務して初めて権利行使益を取得することができるという点では,自社株式のストック・オプションの場合と異なるところはない。 また,被付与者である子会社の従業員等は,実質的には付与会社である親会社の損失において権利行使益を取得するものであるところ,親会社が子会社の従業員等に対してこのような経済的利益を与える理由は,被付与者の子会社における勤務により子会社の業績が向上すれば親会社も利益を受ける関係にあると認識されているからにほかならず,親会社は,被付与者が子会社の従業員等の地位にあることに着目し,その勤労に対してストック・オプションを付与するものというべきである。
さらに,使用者は,従業員等の勤労の成果が使用者に帰属するという関係にあるからこそ,給与を支給するものであるから,使用者以外の第三者である親会社の場合も,従業員等の使用者である子会社に対する経営支配を通じてその従業員等の労働力を利用して,勤労の成果を得ることができる関係にあるということができる。換言すれば,原告の子会社に対する役務提供は,付与会社である親会社との関係で,空間的,時間的拘束を受けた役務の提供とみることができる。 加えて,親会社が子会社等グループ企業の従業員等も対象としたストック・オプション制度を有している場合には,被付与者である従業員等の勤務する子会社等においても,当該従業員等の勤労意欲の向上等により会社の業績の向上が期待できることから,自社における労務を前提として,その従業員等に対し,親会社が権利行使益を与えることを容認しているということができる。c このようなことからすれば,子会社の従業員等が,その使用者である勤務先の子会社における労務に基因して,使用者以外の第三者である親会社から付与されたストック・オプションに係る権利行使益も,使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として,給与所得に該当するというべきであり,このような場合には,付与会社である親会社と被付与者である子会社従業員等との間に,給与所得の要件である,雇用契約に類する関係があるということができる。エ 本件ストック・オプションについて
以上を前提として,本件権利行使益が給与所得に該当するか否かについて検討すると,米国インテル社のストック・オプション制度の概要,同社と日本インテル社の関係及び原告のインテルグループにおける役務提供に関する事実関係等は,それぞれ前記2(1)アないしエのとおりであって,原告は,日本インテル社に在職中に,米国インテル社から,同社のストック・オプション制度により,日本インテル社の役員という地位に基づいて,本件ストック・オプションを付与されたものと認められる。
そして,原告の勤務する日本インテル社は,本件ストック・オプションの付与会社である米国インテル社の100パーセント子会社であるインテルインターナショナル社の100パーセント子会社であるから,日本インテル社が原告の勤労の成果を得ることにより,米国インテル社も利益を得る関係にある。
また,米国インテル社のストック・オプション制度に照らせば,原告に対する本件ストック・オプションの付与は,原告が日本インテル社に勤務し,同社に役務を提供することを基礎として,米国インテル社が当該役務提供の対価として,株式の権利行使時における時価と権利行使価格との差額に相当する経済的利益を与える趣旨のものと認められる。
したがって,本件権利行使益は,使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価に当たることは明らかであるから,所得税法28条1項に規定するこれらの性質を有する給与に係る所得として,給与所得に該当するものというべきである。
(5) 原告の主張に対する反論
ア これに対し,原告は,①対価性がないこと,②権利行使益が株価の上昇という偶発的要素により生じることを主な根拠として,本件権利行使益が一時所得に該当する旨主張する。
イ しかし,上記①については,本件ストック・オプションに係る権利行使益が子会社における労務の対価としての性質を有することは前記のとおりであるから,本件権利行使益は,一時所得の要件である,労務その他の役務の対価としての性質を有しないものに該当しないといわざるを得ない。
ウ また,前記②については,株価が会社の業績以外にも様々な要因により形成されることは否定できないものの,子会社の従業員等の精勤が親会社の業績や株価の上昇要因の一つであることも疑いがないのであって,長期インセンティブ報
酬としてストック・オプションが子会社の従業員等にも付与されるのは,子会社における精勤により子会社の業績が向上すれば親会社の利益となり,ひいてはストック・オプションの権利行使益が実現する関係にあることを付与契約の当事者が認識しているからにほかならない。仮に,株価の変動が従業員等の労働とは全く無関係な偶発的要素のみにより定まるとすれば,ストック・オプションにおけるインセンティブ報酬としての性格は否定され,親会社がその子会社の従業員等にストック・オプションを付与する経済的な合理性はないこととなる。
さらに,原告は,株価の変動状況を見て,確実に利益を得られる状況下でストック・オプションを行使した結果,本件権利行使益を取得したものであり,本件権利行使益は,原告が自らの判断に基づいて取得したことからも,偶発的な所得とはいい難い。
エ したがって,本件権利行使益が給与所得に該当せず,一時所得に該当する旨の原告の主張は,理由がないといわざるを得ない。
(6) 雑所得該当性について(予備的主張)
仮に,本件権利行使益が給与所得に該当しないとしても,前記のとおり,本件権利行使益が労務の対価であることからすれば,本件権利行使益は,一時所得に該当するということはできず,利子所得及び譲渡所得にも該当しない以上,雑所得に該当することとなる。
なお,原告は,本件各更正処分について,更正通知書に雑所得との記載がないことから,手続要件を欠き違法である旨主張するが,更正通知書に所得別の内訳を記載する趣旨は,更正の正当性の担保と,不服を争う場合の争点明確化にあるところ,更正通知書に給与所得と記載されていても,それが恣意によるものでない限り,雑所得と認定しても更正の正当性の担保の要請に反するものではなく,また,一時所得か雑所得かは,あくまで所得区分の評価の問題にすぎず,その区別の基準となる対価性要件について,原告が十分反論していることに照らして,争点明確化の要請も害しないから,本件各更正処分が手続的に違法とされる余地はない。(7) 理由附記の不備の主張について
本件各更正処分に理由附記がないことは原告主張のとおりであるが,所得税の更正処分が大量かつ回帰的に行われるものであり,すべての更正処分に理由附記を要求すれば事務負担が著しく増大すること,所得税の更正処分については異議申立て及び審査請求において処分理由が示されることが予定されていること等を考慮すると,所得税法が青色申告書に係る155条2項所定の更正処分以外の更正処分について理由附記を要求しなかったとしても,そのことをもって憲法違反ということはできないから,同項の更正処分に該当しない本件各更正処分について,被告が理由を附記しなかったことが違法であるとはいえない。
(8) 信義則違反の主張について
原告は,課税庁が従来ストック・オプションの権利行使益を一時所得として申告するよう指導してきたにもかかわらず,本件各更正処分において給与所得として課税することは,信義則に違反し違法である旨主張する。
しかしながら,信義則違反により課税処分が取り消されるのは,租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情がある場合に限られるべきであり,具体的には,①課税庁が納税者に対し,信頼の対象となる公的見解を表示したこと,②納税者がその表示を信頼し,その信頼に基づいて行動したこと,③課税庁が後に①の表示に反する課税処分を行い,そのために納税者が経済的不利益を受けたこと,④納税者が課税庁による①の表示を信頼し,その信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないことが必要である(最高裁判所昭和62年10月30日第三小法廷判決・判例時報1262号91頁)。
しかるに,信義則違反に関する原告の主張は,課税庁の従来の取扱いに従って本件権利行使益を一時所得として申告したというにとどまり,上記②及び③を満たさないことが明らかであって,納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情は認められないから,原告の上記主張は理由がない。
(原告の主張)
(1) 本件権利行使益が給与所得に該当しないこと
ア 給与所得の意義について,最高裁判所昭和56年4月24日第二小法廷判決
(民集35巻3号672頁)は,

雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。

としたうえで,給与所得については,とりわけ,給与支給者との関係において何らかの空間的,時間的な拘束を受け,継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり,その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならないとしており,給与所得の要件としては,①役務提供の対価であること(対価性要件),②当該役務が雇用関係又はそれに類する関係において使用者の指揮・命令の下に提供されるものであること(雇用類似要件)が挙げられる。
イ そこで検討するに,被告は,そもそも所得税法28条1項に規定するこれらの性質を有する給与として,使用者以外の者からの給付も含まれる旨主張するが,同項は,勤労の提供先である給与支給者(使用者)から支払を受ける勤労の対価である給付に限ることを当然の前提としており,このことは,同項の例示や,同条の改正の経緯に照らしても明らかである。
したがって,本件権利行使益の場合のように,使用者以外の第三者から支払われる金員について,法令上の手当なくして,給与所得に該当することを承認する被告の見解は,採り得ないといわざるを得ない。
ウ 次に,給与所得の要件としての対価性について検討する。
a ある給付が役務提供の対価であると認められるためには,労務の提供があり,その報酬として支払われたものであるという関係が必要である。 これを本件権利行使益についてみると,原告は,あくまでも日本インテル社の代表取締役として,同社に対して労務を提供していたものであり,米国インテル社に対して労務を提供したわけではなく,同社との関係で役務提供が義務付けられていたものでもない。また,米国インテル社は,子会社の従業員等の勤労意欲を向上させ,有能な人材を引き留めるために,本件ストック・オプションを付与したにすぎず,子会社役員である原告による労務の提供に対する報酬として権利行使益を支給したわけではない。
このようなことからすれば,本件権利行使益が給与所得の要件である対価性を満たしていないことは明らかである。
b また,被告は,ストック・オプション自体ではなく,その権利行使益が給与所得に該当するとしているところ,ストック・オプションの権利行使益は,株価の上昇と,被付与者の投資判断によって生じるものであって,被付与者である従業員等による労務の提供の対価として支払われるものではない。 すなわち,株価は,企業の業績のほか,金利,為替,株価格付け,国際情勢等の様々な要因により形成されるものであり,子会社役員の精勤と親会社の株価の上昇は直接的には関係しないことからすれば,被付与者である従業員等が提供した役務の質及び量と関係なく,株価の上昇という偶発的な事実により実現するストック・オプションの権利行使益が,役務提供の対価であるということはできない。加えて,ストック・オプションの権利行使の時期は,被付与者の投資判断に委ねられており,権利行使益の発生する時期及び金額が被付与者である従業員等の判断に委ねられていることに照らしても,権利行使益を役務の提供の対価ということはできない。
c この点,被告は,ストック・オプション自体は偶発的に付与されるものでないとするが,その権利行使益の発生及び金額について偶発性が認められることは否定できないから,被告の上記主張は失当である。
また,被告は,ストック・オプションの付与会社である親会社の損失において子会社の従業員等が権利行使益を取得することを理由に,対価性を肯定するが,そうであるとすれば,付与会社が当該権利行使益相当額を損金とすることも認められて然るべきところ,法人税法上,権利行使益相当額を付与会社の損失とする取扱いとされていないことからも,対価性は認められないというべきである。 被告は,勤労者たる地位等に基づいて受けた給付や,雇用関係等に由来する給付は対価性要件を満たすとして,対価性要件を非常に広範にとらえることにより,ストック・オプションの権利行使益も役務提供の対価である旨主張するが,前記のとおり,対価性要件を満たすためには,役務提供の報酬として支払われたことが認められなければならないことからすれば,被告の主張は失当というほかない。
したがって,本件権利行使益については,給与所得の要件である対価性を認めることができないといわざるを得ない。
エ 一方,雇用類似要件の有無を判断するに当たっては,給与の支給者と支
給を受ける者との間に,直接の雇用契約又はそれに類する原因(すなわち,法人の理事,取締役等にみられる委任,準委任等)があるか否かを検討すべきであるところ,本件ストック・オプションの付与会社である米国インテル社と被付与者である原告との間には,雇用契約も委任契約も存在せず,原告は米国インテル社との関係で,空間的,時間的な拘束の下において役務を提供したものでないことからすれば,本件権利行使益について,雇用類似要件を満たすような事実関係はなかったといわざるを得ない。
オ なお,被告は,ストック・オプションに係る所得税の課税時期について,権利確定主義を根拠として,権利行使時において権利行使益に課税すべきであると主張するが,この主張が,権利行使時において権利行使益が発生し,かつ実現するので,この時点で課税するものと主張しているのであれば,当然の事理を述べたにすぎないものであるし,また,権利確定主義をもって,ストック・オプションの付与時又は条件成就時にストック・オプション自体に対して課税しないことの根拠とすることはできないというべきである。ストック・オプションに係る所得税の課税を権利行使時において権利行使益に対して行うのは,むしろ,ストック・オプション自体の経済的価値の評価が困難であること,現実にかかる利益を捕捉することが困難であり,課税の不公平が生じることから,実務的観点によりかかる取扱いとしているものと解される。
(2) 本件権利行使益が一時所得に該当すること
一時所得の意義が,前記1(1)ウのとおりであることからすれば,一時所得の要件としては,①利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得以外の所得であること,②営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得であること(一時性,偶発性),③労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないことが挙げられる。 そこで検討するに,本件権利行使益が給与所得に該当しないことは前記(1)のとおりであり,その他の利子所得,配当所得等の7つの所得区分にも該当しないことは明らかである。
また,本件権利行使益は,株価の値上がりにより生じる所得であるところ,株価が金利,為替,株価格付け,国際情勢等の,一時的かつ偶発的に変動する要因により形成されるものであって,非常に不確実なものであることからすれば,株価の上昇により発生するストック・オプションの権利行使益が一時性,偶発性を有する所得であることは明らかである。
さらに,本件権利行使益が労務その他の役務の対価でないことは,前記(1)ウのとおりであり,資産の譲渡の対価でもないことは明らかである。 したがって,本件権利行使益が一時所得に該当することは,明らかというべきである。
(3) 本件権利行使益が雑所得に該当しないこと
上記(2)のとおり,本件権利行使益が一時所得に該当する以上,雑所得には該当しない。
なお,所得税の更正通知書には,その年分の総所得金額,所得控除額,純損失金額等について,所得税法2条1項21号に規定する所得別の内訳を記載しなければならないところ,仮に本件権利行使益が雑所得に該当するとすれば,本件各更正処分に係る更正通知書には,雑所得との記載がないことから,本件各更正処分は,手続上の適法要件を充足していないこととなり,違法といわざるを得ない。(4) 理由附記の不備
憲法31条の定める適正手続の保障は,行政手続一般にも及び得るものであり,個々の場合に同条を適用すべきか否かの判断については,行政処分により制限を受ける権利利益の内容,性質,制限の程度,行政処分により達成しようとする公益の内容,程度,緊急性等を総合較量して決定されるべきであるところ(最高裁判所平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁),本件各更正処分により賦課された税額が2億円に及び,財産権の制限が甚大であること,本件各更正処分自体が公平に反するものであること,本件について緊急に処分すべき理由が見当たらないこと等に照らせば,本件各更正処分に適正手続の保障が及ぶことは明らかである。 また,所得税の白色申告に対する更正について理由附記が不要とされる理由は,事務負担の著しい増大により公平な課税の実現が損なわれかねないことと,不服申立て手続を通じて処分の適正化と争点の明確化が図られることが保障されていることにあるところ,本件各更正処分の場合,理由を附記することにより増加する事務負担は僅かであり,また,本件各更正処分に対する異議決定が行われず,審
査裁決も訴訟提起後に行われたこと,被告が本件訴訟において本件権利行使益を雑所得とする予備的主張をしたことに照らせば,不服申立て手続を通じた処分の適正化と争点の明確化が保障されていないことは明らかである。
このようなことからすれば,本件各更正処分について理由附記の要請を除外する通則法及び所得税法の規定は,憲法31条及び32条に反しており,また,理由附記を欠く本件各更正処分は,いずれも違法といわざるを得ない。(5) 信義則違反
ア 本件ストック・オプションのように,親会社が子会社の従業員等にストック・オプションを付与した場合の所得税の課税については,法令及び通達の定めは存在しなかったが,国税庁は昭和59年以降,ストック・オプションの権利行使益が一時所得に該当する旨の見解を明らかにしており,税務職員は納税者に対し,かかる見解を前提とした指導を行ってきた。原告は,ストック・オプションの権利行使益の所得区分に関するこのような公的見解に基づいて,本件権利行使益を一時所得として申告したものである。
しかるに,課税庁は,平成10年ころから,ストック・オプションの権利行使益が給与所得に該当する旨見解を変更し,平成11年末ころから,ストック・オプションの権利行使益を一時所得とする申告に対して,更正処分を行うようになり,本件各更正処分を行ったものである。
イ 租税法の領域における信義則の適用については,前掲最高裁判所昭和62年10月30日第三小法廷判決により,前記被告の主張(8)の①ないし④の厳格な要件が定められているところである。
しかしながら,本件各更正処分の場合,このような厳格な要件を前提としても,課税庁の職員自身がストック・オプションの権利行使益が一時所得に該当するとして指導していたものであり,原告は,代理人である税理士を通じて,税務署による上記公的見解の表示を受けたものであるから①に該当し,かかる公的見解に従って納税資金を算出して原告自身の事業を行ってきたものであるから②にも該当し,予想外の処分により経済的不利益を受けたことから③にも該当し,これらの点に原告の責めに帰すべき事由もないから④にも該当する。 したがって,本件各更正処分は,信義則に反して違法であるから,取り消されなければならない。
(6) 結論
原告は,本件ストック・オプションの権利行使益による収入金額について,いずれの年分についても被告の主張を認めるものであるところ,このことを前提とすれば,原告が主張する原告の平成10年分及び平成11年分所得税に係る総所得金額及び納付すべき税額は,別表3の正しい額欄記載のとおりとなり,本件各更正処分等のうち上記金額を上回る部分(本件11年分更正処分については,申告額を上回る部分)は違法であるから取り消されるべきである。
5 争点
以上によれば,本件の争点は,次の各点である。
(1) 原告が自己の勤務する会社の米国親会社から付与されたストック・オプションの権利行使益である本件権利行使益が,給与所得,一時所得又は雑所得のいずれに該当するか。
(争点1)
(2) 本件各更正処分が,理由附記の不備により違法となるか否か。(争点2)
(3) 本件各更正処分が,信義則違反により取り消されるべきか否か。(争点3)
第3 争点に対する判断
1 本件における問題の所在
(1) ストック・オプション制度は,会社が自社又は子会社の従業員等に対し,自社又は子会社における勤務等を条件として,自社株式を一定の期間内に定められた権利行使価格で購入できる権利を付与する制度である。
ストック・オプションを付与された従業員等は,ストック・オプションに係る株式の時価が,予め定められた権利行使価格を上回った場合に,ストック・オプションを行使して,付与会社から株式を取得することにより,当該株式の時価と権利行使価格の差額に相当する額の経済的利益,すなわち権利行使益を享受することが可能となる。そして,当該従業員等は,取得した株式を権利行使価格を上回る時価で譲渡することにより,経済的利益を金銭的な形で把握することができる。
この場合,ストック・オプションを付与された従業員等が実際に権利を行使するか否かは,当該従業員等の判断に委ねられているが,ストック・オプションを他人に譲渡することは原則として禁止されており,当該従業員等が権利を行使しない限り,ストック・オプションによる経済的利益を具体的に得ることはできない。また,権利行使が可能な期間内に,ストック・オプションに係る株式の時価が権利行使価格を上回らなかった場合にも,当該従業員等はストック・オプションによる経済的利益を具体的に取得することはできないこととなる。
(2) このような性格を有するストック・オプションを付与されたことにより,当該従業員等が取得する経済的利益に対する所得税の課税については,措置法29条の2が,商法上のストック・オプションについて,一定の要件の下に,取得した株式の譲渡時に譲渡価格と権利行使価格の差額に対して譲渡所得として課税する旨規定するものの,本件ストック・オプションのように,上記規定に該当しないストック・オプションに関する所得税の課税については,その課税時期,課税の対象となる経済的利益及びその所得区分について,法令上明文の規定は見当たらない。 そして,本件ストック・オプションに係る経済的利益に対する所得税の課税について,被告は,措置法29条の2のような明文の規定がない以上,ストック・オプションに係る権利の行使時において,ストック・オプションに係る株式の時価と予め定められた権利行使価格との差額に相当する権利行使益について,給与所得として課税すべきであり,仮に上記権利行使益が給与所得に該当しないとしても,雑所得として課税すべき旨主張するのに対し,原告は,このような場合に,権利行使時における権利行使益が課税の対象となること自体は是認しつつも,ストック・オプションの権利行使益は一時所得に該当する旨主張する。
(3) そこで,本件権利行使益の所得区分について判断する必要があるところ,前記法令の定め等(1)のとおり,給与所得が

俸給,給料,賃金,歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与にかかる所得をいう。

と規定されているのに対し,一時所得は,給与所得を含む8つの所得類型以外の所得であることがその要件の一つとしてされており,さらに雑所得が,その他の所得類型のいずれにも該当しない所得をいうものとされていることに照らせば,本件権利行使益の所得区分を検討するに当たっては,まず,給与所得に該当するか否かを検討したうえで,給与所得に該当しない場合に,一時所得に該当するか否か,さらには雑所得に該当するか否かを検討すべきである。
2 本件権利行使益が給与所得に該当するか否かについて
(1) 給与所得の要件について
所得税法28条1項に規定する給与所得,すなわち俸給,給料,賃金,歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与にかかる所得とは,雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいうものであり,給与所得に該当するか否かの判断に当たっては,給与支給者との関係において何らかの空間的,時間的な拘束を受け,継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり,その対価として支給されるものであるかが重視されるべきであると解される(前掲最高裁判所昭和56年4月24日第二小法廷判決)。
そこで,上記のような考え方に沿って,本件権利行使益が,雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付に当たるか否かを具体的に検討することとする。(2) 本件権利行使益が雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付に当たるかア 被告は,本件権利行使益について,原告がストック・オプション付与契約に基づいて予約完結権を行使したことにより,付与会社に対する株式引渡請求権が発生し,付与会社が予め定められた権利行使価格により株式を引き渡す義務を負うことにより,当該株式の時価と権利行使価格の差額に相当する含み益が原告に無償で移転されたものと把握したうえで,このような経済的な利益は,原告による労務の対価に当たる旨主張する。
イ そこで,原告の得た本件権利行使益が原告による労務の対価として使用者から受ける給付に該当するというためには,そもそも本件権利行使益が使用者からの給付に係るものでなければならないから,まず,本件権利行使益が,被告の主張するように,米国インテル社からの給付に係るものであるか否かを検討する。a 本件権利行使益は,いずれも,原告が日本インテル社に在職中に米国インテル社から同社のストック・オプション制度に基づいて付与された本件ストッ
ク・オプションを行使して得たものであることは,前記のとおりである。b ストック・オプションを付与する旨の契約は,当然のことながら,それによって従業員等に対して直ちに具体的な権利行使益の発生までを約束するものではなく,実際にストック・オプションを行使することによって当該株式の時価と権利行使価格との差額に相当する含み益が発生するか否かは,当該株式の時価が権利行使価格を上回るか否かによって決定されるものであり,また,具体的にどれだけの額に相当する権利行使益が発生するかは,当該株式の時価が権利行使価格をどの程度上回るかによって定まるものである。
そのため,従業員等は,付与会社からストック・オプションを付与されたとしても,その後,権利行使が可能となった時点以降において客観的に当該株式の時価が権利行使価格を上回ることがなければ,実際に経済的利益を享受することはできないし,客観的にはそのような状況が生じたとしても,従業員等自身がさらなる株価の上昇を期待して権利行使の時期を逸した場合には,同様の結果となるものである。
そして,このようなストック・オプションの権利行使による経済的利益の発生の有無及び具体的な利益の額を左右する株式の時価は,当該企業の業績のみならず,企業の将来の収益力,金利,為替,国内外の景気の動向,政治や社会の情勢,投資家の動きなど,多様な要因に基づいて形成されるものであって,多分に偶発的な要素にも左右されるものであり,かつ,絶えず変動するものである(甲30ないし33)。
これに対し,本件ストック・オプションは,日本インテル社の全株式を保有するインテルインターナショナル社について,その全株式を保有する米国インテル社(以下,このような関係を前提として,日本インテル社を子会社,米国インテル社を親会社ということがある。)の株式に係るものであるところ,ストック・オプションを付与された従業員等が子会社に提供する労務等と親会社の業績との間は,これを集団的に観察したようなときには一定の関係が存する場合があることは否定できないものの,株価に影響を与える親会社の業績と個々の従業員等の子会社に対する労務の提供との関係という面でみれば,その関係は著しく間接的かつ希薄化されたものであるのが通常であって,個々の従業員等の子会社に対する労務の提供を,前述の諸要因と同様に,親会社の株式の時価を形成する要因の一つとしてあげることは困難である。
そこで,ストック・オプションの権利を行使する者は,このように,株価が多様な要因に基づいて変動することを前提として,株価の動向を予測しながら,自らの判断において,権利行使の時期を選択し,実行するのが一般的であると考えられる。そのため,仮に付与会社から同一内容のストック・オプションを与えられたとしても,これを行使して得られる現実の権利行使益は,これを行使する者ごとに異なるものであり,個々の具体的な権利行使益発生の有無及び享受する権利行使益の額は,前述のとおりの多様な諸要因によってその時々に形成された株式の時価及び行使者自身の判断による権利行使の時期という,多分に偶発的,一時的な要因によって定まるものである。
c したがって,原告に生じた本件権利行使益は,それが米国インテル社から付与された本件ストック・オプションを行使して得られたものであったとしても,その具体的な経済的利益の額が上記のような諸要因によって形成された株式の時価の変動と原告自身の権利行使の時期に関する判断とに大きく基因するものであることを捨象し,これをもって米国インテル社から原告に対して与えられた経済的利益であると評価することは,相当でないというべきである。
d(a) ところで,本件においては,被告は,前記のとおり,原告が付与会社から取得した経済的利益は本件権利行使益であると主張するものであるが,念のため,原告が付与会社から供与されたストック・オプション自体が経済的利益であり,その利益の額が本件権利行使益に相当すると解する余地があるか否かについても検討しておくこととする。
(b) この点については,ストック・オプション自体が将来の期待権として経済的価値を有することは当事者間に争いがなく,人の担税力を増加させる経済的利得はすべて所得を構成するものとするいわゆる包括的所得概念の下では,このような期待権も経済的利得である以上,所得を構成するとみる余地があることは否定できない。
被告は,権利確定主義を根拠として,ストック・オプションに係る経済的利益が権利行使時において初めて確定する以上,それ以前に所得税を課税す
ることはできず,その課税対象額も権利行使時において評価されるべきであると主張するが,いわゆる分離型の新株引受権付社債を発行した後,ワラント部分を買い戻して従業員等に支給する,いわゆる擬似ストック・オプションの場合,ワラント部分の権利はストック・オプションと同様に一種の形成権と解され,譲渡が制限される(甲42)にもかかわらず,支給時において当該ワラント自体の価額相当部分に対し給与所得として課税されることに照らせば,形成権自体について経済的利益の実現が認められないとしたり,譲渡制限により経済的利益が実現できないことを理由に,ストック・オプション自体の価値に対して付与時に所得税を課税する余地がないとは解されない。
また,法的な権利の確定という観点からは,少なくとも一定期間の就労等の停止条件が成就して権利行使が可能となった時点には,ストック・オプション自体の権利が確定したものということができるから,この時点で所得税を課税することも理論的には可能と考えられるところである。
ちなみに,相続人が被相続人の有していたストック・オプションを相続した場合,相続時における株価と権利行使価格との差額について相続税を課税する扱いとされていること,ストック・オプションのような特定の有価証券,商品等を一定の価格で買い受ける権利(コール・オプション)については,その価格をブラック=ショールズ式等の方法により算定することが可能であること(以上の事実は当事者間に争いがない。)に照らせば,当該権利に係る経済的価値の評価が困難であることを理由として,権利行使時以前に所得税を課税することができないとはいえない。
(c) しかしながら,付与会社から労務の対価として供与されたストック・オプション自体に経済的価値があり,それが課税の対象となるとしても,その経済的価値は,付与会社から労務の対価として提供された時点において,当該株式の価格変動の可能性を踏まえたうえで,将来の一定期間に行使することが想定される期待権の経済的価値として把握されるべきであって,その後に,企業の将来の収益力,金利,為替,国内外の景気の動向,政治や社会の情勢,投資家の動きなど,前述の多様な要因に基づいて形成された当該株式の時価と行使者自身の判断に基づく権利行使の時期によって定まった権利行使益の額をもって,付与会社が従業員等に供与したストック・オプション自体の経済的価値と評価することには,合理性があるとはいえない。
仮に,現実に得られた権利行使益をもって付与されたストック・オプション自体の経済的価値であると評価するとすれば,同時に同一の条件で付与されたストック・オプションであっても,その経済的価値は,株価の変動と行使者自身の判断による権利行使の時期などの事後的な要素によって異なった評価を受けることとなるが,これが不合理であることは明らかである。
ウ また,前記イの点を暫く措き,仮に,本件権利行使益が米国インテル社からの給付に係るものであるとした場合,それが,雇用契約又はこれに類する原因に基づき,使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受けた給付といえるか否かについても検討する。
a 前記のとおり,給与所得は,雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいうものであり,その判断においては,給与支給者との関係において空間的,時間的な拘束を受け,継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり,その対価として支給されるものであるか否かが重要な要素となると解される。
b(a) そこで,本件権利行使益についてみるに,原告が子会社に取締役として在勤していたのに対し,本件権利行使益が親会社から供与されたものであることは,前記前提となる事実のとおりであり,原告が親会社に在勤し,親会社に対して直接労務を提供した事実を認めるに足りる証拠はない。
(b) 一方,原告は,親会社におけるストック・オプション制度に基づき,原告と親会社との間で締結されたストック・オプション付与契約により,本件ストック・オプションの付与を受けたものであるところ,本件プラン(前記前提となる事実(1)ウ)の内容に照らせば,原告がインテルの社員又は社外取締役の職務に一定期間とどまることが本件ストック・オプションに係る権利行使の条件とされているものと認められる。
しかしながら,このような条件は,被付与者である従業員等に対して子会社等に勤続するインセンティブを与え,もって優秀な人材を確保する趣旨から付されたものと解され,それによって,親会社との間で何らかの空間的,時間的
拘束に服することや継続的ないし断続的な労務の提供を義務付けるものとは解されない。
他に,原告が親会社との関係で,子会社への労務の提供が義務付けられていたことを認めるに足りる証拠はない。
(c) また,親会社が子会社に対する経営支配を通じて子会社の労働力を利用し,子会社従業員等の勤労の成果を得る関係にあるとしても,原告の子会社に対する労務の提供は,原告と子会社との契約に基づくものであり,また,上記の労務の提供とアメリカ合衆国の企業である親会社の業績との関連が著しく間接的で希薄なことからすれば,原告の子会社に対する労務の提供をもって,親会社に対する労務の提供と同視することも相当とはいえない。
c ちなみに,親会社・子会社という関係が存在することのみをもって,直ちに親会社による子会社従業員等への権利行使益の供与が,実質的に子会社がその従業員等に対して支払うべき報酬の一部であるということも困難である。 そして,本件の証拠によっても,子会社と親会社の間において,子会社従業員の報酬の一部として親会社が権利行使益相当額の経済的損失を負担する旨合意したり,子会社従業員の報酬の一部を親会社がストック・オプションにより補填する旨合意したりするなど,親会社が供与した本件権利行使益について,原告の勤務に対して子会社が支払うべき報酬の一部を実質的に親会社が支払ったものと評価できるような事情を認めることはできない。
d したがって,原告が,親会社に対して労務を提供する義務を負っていたものとは認められないし,現実に,親会社との間で,何らかの空間的,時間的な拘束を受けて継続的ないし断続的に労務を提供する関係にあるとか,原告の子会社に対する勤労が,親会社に対する労務の提供と同視すべきような事情も認められないから,仮に原告の勤務先以外の第三者である親会社から本件権利行使益の給付を受けたとしても,それが雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受けた給付であるとは認めることはできない。
e なお,被告は,従業員等の地位に基づく給付という広い意味での労務の対価性こそが,勤労性所得である給与所得の本質的な要素であって,そのような広い意味での対価性が認められる限り,勤労者がその地位に基づいて受ける給付は,原則として給与所得に該当するというべきであり,厳密な意味における役務提供の反対給付でなくても,広く役務提供に由来する給付であれば,給与所得に該当すると解すべきであり,本件権利行使益はこれに当たる,と主張する。 しかし,原告が親会社に対して労務を提供する義務が存したり,現実に,親会社との間で何らかの空間的,時間的な拘束を受けて継続的ないし断続的に労務を提供し,あるいは,原告の子会社に対する勤労を親会社に対する労務の提供と同視すべきような事情が,いずれも認められない本件の事実関係の下では,本件権利行使益の供与が従業員等の地位に基づく給付であると解することは困難であり,被告の上記主張は採用できない。
エ 以上のとおり,上記イ及びウのいずれの点からしても,本件権利行使益は,雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付に当たるとは認められない。(3) 小括
以上によれば,本件権利行使益が給与所得に該当するとの被告の主張は採用できない。
3 本件権利行使益が一時所得に該当するか否かについて
所得税法34条1項は,一時所得について,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しない所得と規定しているところ,本件権利行使益が給与所得に該当しないことは,前記2(2)エのとおりであり,その他の上記各所得区分のいずれにも該当しないことも明らかである。
また,本件権利行使益が,本件ストック・オプションに係る親会社の株価の変動及び原告自身の権利行使の時期に関する判断によってその発生の有無及び金額が決定付けられた,偶発的,一時的な性格を有する経済的利益であることは前記2(2)イb記載のとおりであるから,所得税法34条1項にいう一時の所得に該当するものというべきである。
さらに,本件権利行使益が労務その他の役務の対価としての性質を有しない
ことは前記2(2)エのとおりであり,資産の譲渡の対価に当たらないことは明らかである。
したがって,本件権利行使益は,所得税法34条1項所定の一時所得に該当するものというべきである。
4 本件権利行使益が雑所得に該当するか否かについて
所得税法35条1項は,雑所得について,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得と規定しているところ,本件権利行使益が一時所得に該当することは上記3のとおりであるから,本件権利行使益が雑所得に該当するものということはできない。
第4 結論
以上のとおり,本件権利行使益は,給与所得及び雑所得に該当せず,一時所得に該当することが認められるところ,このことを前提として,原告の平成10年分及び平成11年分に係る所得税について,総所得金額及び納付すべき税額を算定すると,それぞれ別表3の正しい額欄記載のとおり,原告主張の金額となる。 よって,原告の請求は,その余の争点について判断するまでもなく,いずれも理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官 市 村 陽 典
裁判官 森 英明
裁判官 丹羽敦子

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