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誤納金返還請求控訴事件(原審・徳島地方裁判所平成15年(行ウ)第21号)
事件番号平成16(行コ)34
事件名誤納金返還請求控訴事件(原審・徳島地方裁判所平成15年(行ウ)第21号)
裁判年月日平成17年5月30日
法廷名高松高等裁判所
判示事項地方税法700条の11の3第2項に定める軽油引取税の登録特別徴収義務者が,当該輸入軽油を同法700条の5第2号の課税済軽油と認めず同法700条の3第1項を適用して軽油引取税を課税することを前提とする更正処分は,同法700条の4第1項5号の適用がある限り同法700条の3第1項の適用の余地はないのにこれを適用した誤り及び二重課税の重大かつ明白な違法があり無効であるとしてした同更正処分に基づき納入した誤納金等の返還請求が,棄却された事例
裁判要旨地方税法700条の11の3第2項に定める軽油引取税の登録特別徴収義務者が,当該輸入軽油を同法700条の5第2号の課税済軽油と認めず,同法700条の3第1項を適用して軽油引取税を課税することを前提とする更正処分は,同法700条の4第1項5号の適用がある限り同法700条の3第1項の適用の余地はないのにこれを適用した誤り及び二重課税の重大かつ明白な違法があり無効であるとしてした同更正処分に基づき納入した誤納金等の返還請求につき,同法は,同一の軽油について重ねて課税が行われる事態を回避するため,先に行われた課税に優先権を認め,課税済軽油であることの都道府県知事の承認があったものについて以後の引き取りに対する課税が免除されるという制度を採用している(同法700条の5第2号)から,同法700条の4が同法700条の3第1項に優先して適用されるべきであるとはいえず,また,課税庁の負担及び特別徴収義務者には課税済軽油であることの確認できない軽油の引き取りを拒否する自由があることを考慮すれば,前記課税免除の制度が,二重課税の回避のために不十分,不合理な制度であるとはいえないから前記更正処分に違法はないとして,前記請求を棄却した事例
裁判日:西暦2005-05-30
情報公開日2017-10-19 20:09:42
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主 文
1 本件控訴を棄却する
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,1863万6806円及びうち1853万8406円に対する平成13年8月25日から,うち9万8400円に対する同年9月26日から各支払済みまで年4.5%の割合による金員を支払え。第2 事案の概要等
1 事案の概要
本件は,控訴人が徳島県徳島財務事務所長(以下事務所長という。)に対して軽油引取税の特別徴収義務者として軽油の引取りに係る軽油引取税の申告及び課税免除の承認申請をしたのに対し,事務所長が不承認処分と同処分を前提とする軽油引取税の更正処分をしたため,同更正処分に基づいて軽油引取税1853万8406円及び延滞税9万8400円の合計額1863万6806円を納入した控訴人が,上記更正処分は適用法条の誤り,二重課税,実質課税原則違反という重大かつ明白な違法があるから無効であると主張して,被控訴人に対し,不当利得返還請求として,上記納入金の合計額1863万6806円及びうち1853万8406円に対する納入の日の翌日である平成13年8月25日から,うち9万8400円に対する同じく同年
9月26日から各支払済みまで地方税法所定年4.5%の割合による還付加算金の支払を求めた事案である。
2 関連法令,争いのない事実等,争点及び争点についての当事者の主張 次のとおり補正し,後記3のとおり当審における当事者双方の補充主張を付加するほか,原判決事実及び理由第2の1ないし3記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決2頁8行目から9行目の括弧内を及び道路法7条3項に規定する指定市に対し道路に関する費用に充てる財源を交付するために,10行目の括弧内を法700条,4条4項2号に各改め,12行目から23行目までを次のとおり改める。
軽油引取税は,特約業者(元売業者〔軽油を製造することを業とする者,軽油を輸入することを業とする者又は軽油を販売することを業とする者で,法700条の6の2第1項の規定により自治大臣の指定を受けている者。法700条の2第1項2号〕との間に締結された販売契約に基づいて当該元売業者から継続的に軽油の供給を受け,これを販売することを業とする者で,法700条の6の4第1項の規定により道府県知事の指定を受けている者。法700条の2第1項3号)又は元売業者からの軽油の引取り(特約業者の元売業者からの引取り及び元売業者の他の元売業者からの引取りを除く。)で当該引取りに係る軽油の現実の納入を伴うものに対し,その数量を課税標準として,当該軽油の納入地所在の道府県において,その引取りを行う者に課する(法700条の3第1項)。 ウ 輸入軽油に係るみなす課税(2) 同3頁11行目の括弧内を法700条の10本文,1条1項9号に,12行目の括弧内を法700条の10ただし書,1条1項8号に各改め,16行目の特別徴収義務者の次に(法1条1項10号)を加え,18行目及び末行の各総務省令をいずれも自治省令に改める。
(3) 同4頁6行目の括弧内を法施行規則18条の11第2号に,24行目の事務所又は事務所を事務所又は事業所に各改める。
(4) 同5頁13行目の徳島県知事の権限を委任されているを徳島県知事からその権限の委任を受けているに改める。(5) 同6頁2行目の認めず,の次に平成13年7月24日,を加え,21行目の次に改行して次のとおり加える。
(5) 控訴人は,平成13年9月19日,徳島県知事に対し,上記不承認処分に対する審査請求をしたが,同知事は,平成14年10月30日,控訴人の審査請求を棄却する裁決をした(甲9)。控訴人は,その後,徳島地方裁判所に対し,上記不承認処分の取消しを求める訴訟を提起したが(平成14年(行ウ)第24号事件),第1審係属中に訴えを取り下げた。 なお,控訴人は,本件各更正処分については,審査請求期間を徒過したため,その取消しを求める訴訟を提起していない(平成17年3月10日の当審第1回口頭弁論期日における控訴人の陳述)。 (6) 同7頁3行目の括弧内を法700条の14第1項5号に,8行目の括弧内を法700条の30第2項に各改める。
(7)同8頁13行目から14行目の法700条の30の次に第2項を加える。
(8) 同9頁25行目及び10頁15行目の各知事をいずれも道府県知事に改める。 3 当審における当事者双方の補充主張
(1) 控訴人の主張
ア 納税義務は,その成立のために必要な要件である課税要件が充足されたときに,法律上当然に成立するのであり,その成立のために,納税義務者又は税務官庁による特別の行為を必要とするものではない。そして,こうして成立した納税義務の履行又はその請求のためには,納税義務の確定を必要とするところ,この確定とは,原則として納税義務者又は税務官庁による,成立した納税義務すなわち抽象的納税義務の主観的確認を意味し,賦課課税方式においては,課税庁の賦課決定処分が確定を行う行為であり,申告納税方式においては,納税義務者に第一次的判断権が認められ,納税義務者の申告行為によって確定する。申告納税方式においては,申告に誤りがあり又は申告が行われない場合には,課税庁の更正又は決定が行われるが,これも既に
成立している納税義務を確定するにとどまるものである。
したがって,輸入業者の事務所又は営業所所在の道府県の課税庁においては,輸入業者が所定の申告納付をしないときは,輸入業者に対して決定をするかしないかの選択の自由はなく,直ちに法700条の30第2項により賦課決定処分をなすべく一義的に義務づけられているのであり,かかる処分をすることなく漫然と放置することは違法である。そして,本件輸入軽油にあっては,輸入業者が輸入した時点で輸入業者に軽油引取税の納税義務が発生し,徳島県知事は,当該輸入業者が申告納付しない場合には,法700条の30第2項に基づく賦課決定処分をしなければならないのであるから,かかる処分をすることなく控訴人に対し本件各更正処分を行ったことは違法というべきである。
イ 現在の我が国における石油製品の取引は,精製元売業者・元売業者・特約業者が特約店契約を締結してその系列の業者間で行う系列取引と,このような系列とは無関係に行われる系列外取引とがあり,後者は業者間転売(略して業転)又はスポット取引と呼ばれているものであり,本件輸入軽油の取引はこの業転に属するものである。そして,前者に対する課税の根拠を定めたのが法700条の3であり,後者に対する課税の根拠を定めたのが法700条の4であって,両者は,軽油のそれぞれ異なる流通形態を課税対象として規定し,相俟って課税に遺漏なきを期したのである。
このように,法700条の3と法700条の4は,それぞれ固有の適用場面を有しており,それが同時・並列的に適用されることはない。そして,輸入軽油については,流通過程に乗る前段階,すなわち輸入業者に対して課税すべきものであって,その後の流通過程に介在する特約業者に課税する余地はなく,その意味において法700条の4は法700条の3に先立って優先して適用されるべきである。
ウ 原判決は,課税庁は,法700条の3第1項の適用の際に課税済軽油(法700条の5第2号)であるか否かを判断すれば足り,さらに進んで法700条の4第1項5号の要件の充足の有無,すなわち,当該軽油が特約業者又は元売業者以外の者が輸入したものかどうかについてまで調査しなければならないものではない,と判示し,また,特別徴収義務者が課税済軽油に係る引取りについて課税免除の承認を受ける際には,当該軽油の数量,先に軽油引取税が課された状況及び軽油引取税が課された後の当該軽油の流通状況が記載された書面を提出しなければならないこと(法700条の11第4項,法施行規則18条の11第2号)からすれば,特別徴収義務者が軽油の引取りをする際には,上記の各状況を確認することが当然に要請されている
,と判示する。しかし,課税済軽油であるか否かを判断しようとすれば,結局,当初からの流通経路に介在した業者すべて(輸入軽油についていえば輸入業者以降の流通介在業者)を解明してその課税の有無を解明しなければならないから,原判決
の上記判示は,ひっきょう,単なる観念論にすぎない。また,法施行規則18条の11に定める特別徴収義務者の書類提出義務の点についていえば,申請届出といった私人のイニシアチブによって行政過程を開始させる法的仕組みの中には,申請者等に行政庁の判断に必要な情報を申請書に記載させたり,書類を添付させたりすることによって必要な情報を行政庁に提出させることとしている例が多いところ,これは,もっぱら行政庁が必要とする情報の収集の費用と手数を私人に負担させることによって
,行政庁による情報収集の費用を削減することを眼目とするものにすぎないのであって,およそ行政庁がある処分を行う場合に行政庁が自らその要件事実を調査・確定する義務があることは論を俟たない。法施行規則18条の11の趣旨も,このような意味において特別徴収義務者たる私人に必要な情報の収集に協力させるというものであって,これを根拠に特別徴収義務者に調査・確認義務があるというのは,明らかに法解釈を誤っている。
エ 軽油引取税は,揮発油税との課税の均衡から,昭和31年に道府県税として設けられた消費税の一種であり,その制度発足の当初は,主として特約業者の手を離れる段階で課税し,消費者に転嫁されるという分かりやすい仕組みであったが,炭化水素油を混和した混和軽油や製造軽油が出回り,軽油引取税の回避が横行したことから,これに対抗して数次にわたってもれなく課税することを可能にするための法改正を重ねた結果,次第に制度が複雑なものとなり,規定が錯綜して,解釈が固まっているとはいい難い状況となっている。そこで,ときに牽強付会ともいうべきものも含め,様々な解釈が入り乱れることとなった。
ところで,租税法の解釈原理として疑わしきは納税者の利益にということがいわれているところ,これは課税要件事実の認定について妥当するだけでなく,上記のように,法の規定が錯綜し,牽強付会ともいうべきものも含め,様々な解釈が入り乱れていて,いずれが合理的な解釈であるかその意味を把握できないような場合には,やはり解釈原理としても妥当するといわなければならない。原判決のような解釈をとることは,少なくとも輸入軽油に関する限り,法700条の30第2項の存在意義を失わせ,無意味なものにするというべきである。(2) 被控訴人の主張
ア 控訴人の上記各主張はいずれも争う。
イ 本件輸入軽油は,特約業者である控訴人から徳島県下の販売店が引取りをした軽油であるから,法700条の3第1項にいう特約業者からの軽油の引取りで当該引取りに係る軽油の現実の納入を伴うものに該当し,登録特別徴収義務者である控訴人が本件輸入軽油に係る軽油引取税について,申告・納付義務を負うのは正に当然である。
控訴人は,本件輸入軽油が現実に課税済み又は納税済みのものであったことの立証を一切しないまま,本件輸入軽油は法700条の4第1項5号の輸入軽油であるから,これを譲渡する者(すなわち輸入業者)に軽油引取税を課税すべきであって,本件輸入軽油については法700条の3は適用されるべきではないとの独自の見解を主張する。
しかしながら,法は,700条の3,700条の4によって同一軽油について納税義務者が複数発生することを前提に,700条の5で課税免除の制度を設けて二重課税の結果発生防止の措置を講じているのであるから,本件輸入軽油が法700条の4第1項5号に該当する軽油である旨の控訴人の主張は,法700条の3第1項所定の本来の特約業者からの引取りに対して課せられている納税義務についての控訴人の特別徴収義務を免れさせる理由とはならない。納税義務が複数発生して二重課税の危険を生ずることがあってはならない,又はあり得ないとする控訴人の主張は,脱税の防止,目的税としての適正な徴収を念頭において法が構築している軽油引取税の課税・徴収制度そのものを批判しようとするものであって,ひっきょう,立法政策
の問題に過ぎない。そして,現に本件において,二重課税は発生していない。 3 訴訟の経過
原審は,本件輸入軽油に係る軽油引取税の徴収及び納入の義務が控訴人にあることを前提とする本件各更正処分は違法ではなく,控訴人主張の無効事由は理由がないとして,控訴人の請求を棄却した。
これに対し,控訴人が原判決を不服として控訴を申し立てた。第3 当裁判所の判断
1 結論

当裁判所も,控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,次のとおり補正し,後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を付加するほか,原判決事実及び理由第3記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決11頁25行目の道府県の道路財源を道府県及び道路法7条3項に規定する指定市の道路に関する費用の財源に改める。 (2) 同12頁末行から13頁1行目の判断すれば足りの次に

(なお,当該軽油が課税済軽油であることは,課税免除の承認を受けようとする者において立証しなければならないと解される。)

を加え,6行目の当該軽油から7行目の不承認とした上でまでを本件各免除申請に対し,本件輸入軽油が課税済軽油である(法700条の5第2号)とは認められないとして不承認とした上で,控訴人に対しに改める。 (3) 同14頁10行目の法700条の30の次に第2項を加え,19行目の知事を道府県知事に改め,25行目の負うとすることは,の次に輸入業者が必ずしも当該課税庁の管轄区域内に事務所又は事業所を有するとは限らないことをも考慮すると,を加える。 (4) 同15頁6行目の

原告の上記主張は採用することができない。

控訴人の上記主張は,立法政策の当・不当を述べるものであって,採用することができない。

に,13行目の軽油でありを軽油であってに各改める。 2 当審における控訴人の補充主張に対する判断
(1) 控訴人は,納税義務は,その成立のために必要な要件である課税要件が充足されたときに,法律上当然に成立するのであり,成立した納税義務の履行又はその請求のためには,納税義務の確定を必要とするものの,この確定とは,原則として納税義務者又は税務官庁による,成立した納税義務すなわち抽象的納税義務の主観的確認を意味し,賦課課税方式においては,課税庁の賦課決定処分が確定を行う行為であり,申告納税方式においては,納税義務者に第一次的判断権が認められ,納税義務者の申告行為によって確定するのであり,申告に誤りがあり又は申告が行われない場合に課税庁の行う更正又は決定も既に成立している納税義務を確定するにとどまるものであり,したがって,輸入業者の事務所又は営業所所在の道府県の課税庁においては,
輸入業者が所定の申告納付をしないときは,輸入業者に対して決定をするかしないかの選択の自由はなく,直ちに法700条の30第2項により賦課決定処分をなすべく一義的に義務づけられているのであり,かかる処分をすることなく漫然と放置することは違法であるところ,本件輸入軽油にあっては,輸入業者が輸入した時点で輸入業者に軽油引取税の納税義務が発生し,徳島県知事は,当該輸入業者が申告納付しない場合には,法700条の30第2項に基づく賦課決定処分をしなければならないのであるから,かかる処分をすることなく控訴人に対し本件各更正処分を行ったことは違法である旨主張する。
しかしながら,法は,軽油引取税の徴収について,特別徴収の方法によらなければならないものとし(法700条の10本文),例外的に,特約業者及び元売業者以外の者が軽油の輸入をして,当該輸入に係る軽油を他の者に譲渡する場合のみなす課税(法700条の4第1項5号)等の場合には,申告納付の方法によるものとし(法700条の10ただし書),いずれの場合も,申告,すなわち前者にあっては特別徴収義務者による納入申告書の提出(法700条の11第2項),後者にあっては納税者による申告書の提出(法700条の14第1項5号)によって納付すべき税額が確定し,特別徴収義務者又は納税者は,その納入金を納入し又は申告税額を納付しなければならないものとする一方,課税庁は,当該納入申告又は申告に係る課税標準
量又は税額がその調査したところと異なるときは更正処分をすることができ(法700条の30第1項),特別徴収義務者又は納税者が納入申告書又は申告書を提出しなかった場合には,その調査によって納入申告し又は申告すべき課税標準量及び税額を決定することができるものとして(法700条の30第2項),納付すべき軽油引取税の税額の確定について,賦課課税方式ではなく申告納税方式を採用し,申告納税が行われない場合には,課税庁が賦課決定処分を行うことができるとしている。また,軽油引取税は,道路に関する費用の財源に充てるための目的税であって,軽油の消費量に比例した負担を消費者に求める趣旨で設けられたものであるが,課税の技術上の問題等から,軽油が製造元又は輸入元の手を離れて最終消費者の手に渡るまでの間に
おいて課税され,その後の流通過程において軽油価格に転嫁され,最終的には個々
の消費者によって実質的に負担されることを予定しているものであるから,同一の軽油についてはその流通過程で1回課税されれば足り,これについて再度軽油引取税を課税することは二重課税となるため,法700条の5第2号の規定を設けて引取課税に係る二重課税を防止しているのである。軽油引取税に関する法の上記各規定によって認められる軽油引取税課税の構造からすれば,本件輸入軽油について,輸入業者が当該軽油を輸入した時点で課税庁たる徳島県知事(からその権限の委任を受けた事務所長)に対し申告書を提出しなかったからといって,徳島県知事が当該輸入業者に対し,直ちに法700条の30第2号に基づく本件輸入軽油に係る軽油引取税の賦課決定
処分をなすべき義務を負っているとまで解することはできない。したがって,控訴人が事務所長に対し本件各申告を行ったことにより,結果的に本件各更正処分がなされたとしても,それは本件輸入軽油が課税済軽油であると認められなかったため,本件各免除申請が不承認とされた結果に他ならないから,事務所長が法700条の30第2項に基づく賦課決定処分をすることなく本件各更正処分を行ったことが違法ということはできない。
(2) 控訴人は,現在の我が国における石油製品の取引は,精製元売業者・元売業者・特約業者が特約店契約を締結してその系列の業者間で行う系列取引と,このような系列とは無関係に行われる系列外取引とがあり,前者に対する課税の根拠を定めたのが法700条の3であり,後者に対する課税の根拠を定めたのが法700条の4であって,両者は,軽油のそれぞれ異なる流通形態を課税対象として規定し,相俟って課税に遺漏なきを期したのであり,したがって,法700条の3と法700条の4は,それぞれ固有の適用場面を有しており,それが同時・並列的に適用されることはなく,輸入軽油については,流通過程に乗る前段階,すなわち輸入業者に対して課税すべきものであって,その後の流通過程に介在する特約業者に課税する余地はなく,そ
の意味において法700条の4は法700条の3に先立って優先して適用されるべきである旨主張する。
しかしながら,補正の上引用した原判決事実及び理由第3の1(1)説示のとおり,同一の軽油について重ねて課税が行われる事態が想定され得る場合に,このような事態を回避するための手段として,課税の根拠法条や課税客体間の優先順位をあらかじめ定めておくことも考えられるものの,法はこのような手段をとらず(優先順位については何ら規定が設けられていない。),先に行われた課税に優先権を認め,課税済軽油であることの道府県知事の承認があったものについて以後の引取りに対する課税が免除されるという制度を採用しているのである(法700条の5第2号)から,輸入軽油については,流通過程に乗る前段階,すなわち輸入業者に対して課税すべきものであって,その後の流通過程に介在する特約業者に課税する余地はないと
か,法700条の4が法700条の3第1項に優先して適用されるべきであるということはできない。そして,法がこのような制度を採用したことについては,検討の余地があるとしても,立法政策の問題であり,法の規定を無効とする根拠はなく,本件各更正処分の当然無効を来すわけでもない。
(3) 控訴人は,原判決は,課税庁は,法700条の3第1項の適用の際に,課税済軽油(法700条の5第2号)であるか否かを判断すれば足り,さらに進んで法700条の4第1項5号の要件の充足の有無,すなわち,当該軽油が特約業者又は元売業者以外の者が輸入したものかどうかについてまで調査しなければならないものではない,と判示し,また,特別徴収義務者が課税済軽油に係る引取りについて課税免除の承認を受ける際には,当該軽油の数量,先に軽油引取税を課された状況及び軽油引取税を課された後の当該軽油の流通の状況が記載された書面を提出しなければならないこと(法700条の11第4項,法施行規則18条の11第2号)からすれば,特別徴収義務者が軽油の引取りをする際には,上記の各状況を確認することが当然に要
請されている,と判示するが,課税済軽油であるか否かを判断しようとすれば,結局,当初からの流通経路に介在した業者すべて(輸入軽油についていえば輸入業者以降の流通介在業者)を解明してその課税の有無を解明しなければならないから,原判決の上記判示は,ひっきょう,単なる観念論にすぎず,また,法施行規則18条の11に定める特別徴収義務者の書類提出義務の点についていえば,申請届出といった私人のイニシアチブによって行政過程を開始させる法的仕組みの中には,申請者等に行政庁の判断に必要な情報を申請書に記載させたり,書類を添
付させたりすることによって必要な情報を行政庁に提出させることとしている例が多いところ,これは,もっぱら行政庁が必要とする情報の収集の費用と手数を私人に負担させることによ
って,行政庁による情報収集の費用を削減することを眼目とするものにすぎないのであって,およそ行政庁がある処分を行う場合に行政庁が自らその要件事実を調査・確定する義務があることは論を俟たないから,法施行規則18条の11の趣旨も,このような意味において特別徴収義務者たる私人に必要な情報の収集に協力させるというものであって,これを根拠に特別徴収義務者に調査・確認義務があるというのは,明らかに法解釈を誤っている旨主張する。
しかしながら,当該軽油が課税済軽油であるとして課税免除の承認を受けようとする者は,当該軽油が課税済軽油であることを立証しなければならないと解され,法700条の11第4項は,特別徴収義務者が納入申告書を提出する場合において,課税済軽油の数量については,自治省令の定めるところにより,登録特別徴収義務者は,当該登録に係る道府県知事が交付した免税証その他当該数量を証するに足りる書面を添付して道府県知事の承認を受けなければならないとし,同規定を受けて,法施行規則18条の11第2号は,当該書面には,当該軽油の数量(同号イ),先に軽油引取税を課された状況(同号ロ)及び軽油引取税を課された後の当該軽油の流通の状況(同号ハ)を記載することを要求していることからすると,原判決の上記判示部
分が単なる観念論にすぎないとか,法700条の11第4号,法施行規則18条の11第2号の規定が,単に特別徴収義務者たる私人に必要な情報の収集に協力させる趣旨であると解することはできない。
(4) 控訴人は,軽油引取税は,揮発油税との課税の均衡から,昭和31年に道府県税として設けられた消費税の一種であり,その制度発足の当初は,主として特約業者の手を離れる段階で課税し,消費者に転嫁されるという分かりやすい仕組みであったが,炭化水素油を混和した混和軽油や製造軽油が出回り,軽油引取税の回避が横行したことから,これに対抗して数次にわたってもれなく課税することを可能にするための法改正を重ねた結果,次第に制度が複雑なものとなり,規定が錯綜して,解釈が固まっているとはいい難い状況となっているところ,租税法の解釈原理としての疑わしきは納税者の利益にという命題は,課税要件事実の認定について妥当するだけでなく,上記のように,法の規定が錯綜し,牽強付会ともいうべきものも含め,様々
な解釈が入り乱れていて,いずれが合理的な解釈であるかその意味を把握できないような場合には,やはり解釈原理としても妥当するといわなければならず,原判決のような解釈をとることは,少なくとも輸入軽油に関する限り,法700条の30第2項の存在意義を失わせ,無意味なものにするというべきである旨主張する。 控訴人主張の疑わしきは納税者の利益にとの命題が本件においていかなる意味を有するのか必ずしも明確とは言い難いが,その点はともかく,上記命題は,課税要件に該当する事実の認定については妥当するものの,租税法の解釈原理としては成り立たないと解すべきであるから,控訴人の上記主張は採用することができない。
第4 結語
よって,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
高松高等裁判所第2部
裁判長裁判官 水 野 武
裁判官 熱 田 康 明
裁判官 島 岡 大 雄
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