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執行停止申立却下決定に対する抗告事件(原審・東京地方裁判所平成17年(行ク)第67号)
事件番号平成17(行ス)47
事件名執行停止申立却下決定に対する抗告事件(原審・東京地方裁判所平成17年(行ク)第67号)
裁判年月日平成17年7月15日
法廷名東京高等裁判所
判示事項厚生労働大臣から医師法4条4号所定の非違行為の存在を理由とする同法7条2項に基づく医師免許取消処分を受けた産婦人科医師がした,前記処分の取消しを求める訴えを本案とする前記処分の効力停止の申立てが,却下された事例
裁判要旨厚生労働大臣から医師法4条4号所定の非違行為の存在を理由とする同法7条2項に基づく医師免許取消処分を受けた産婦人科医師がした,前記処分の取消しを求める訴えを本案とする前記処分の効力停止の申立てにつき,行政事件訴訟法25条2項所定の「重大な損害」を生ずるか否かを判断するに当たっては,行政処分の執行等により維持される行政目的達成の必要性を一時的に犠牲にしてもなお救済しなければならない程度に重大な損害を避ける緊急の必要性があるか否かが勘案されるべきであり,同条3項において考慮すべき事項とされている「処分の内容及び性質」も,このような見地からの検討をもその考慮事項の1つとする趣旨の規定であるとした上で,前記処分の効力を停止することは,同人に医師としての活動を許容することを意味し,医師の業務は,国民の健康や安全に直結し,適格性を欠く者が従事することは本来許されない事柄であるから,このような処分の内容及び性質を踏まえた考慮をすると,執行停止の要件該当性については相当程度の疎明が必要になると解すべきであるところ,同人の行った非違行為は,それが事実であれば,いずれも医師としての適格性に重大な疑問を投げかけるものであり,他方,同人が前記処分によって収入が途絶して生活に困窮する事情もないことなどからすると,前記処分の効力停止を正当化するほどの「重大な損害」の疎明はされていないから,「重大な損害を避けるため緊急の必要」があるとはいえないとして,前記申立てを却下した事例
裁判日:西暦2005-07-15
情報公開日2017-10-19 20:06:12
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主 文
1 本件抗告を棄却する
2 抗告費用は抗告人の負担とする。
理 由
第1本件抗告の趣旨
1 原決定を取り消す。
2 相手方が抗告人に対して平成17年3月2日付けでした医師法7条2項に基づく医師免許取消処分の効力は,本案事件(東京地方裁判所平成17年(行ウ)第94号医師免許取消処分取消請求事件)の判決が確定するまで停止する。
3 申立費用及び抗告費用は相手方の負担とする。
第2 事案の概要
本件は,産婦人科を専門とする医師であり,産婦人科医院を開設していた抗告人が,医師法4条4号所定の非違行為の存在を理由として,相手方から平成17年3月2日付けで同法7条2項に基づく医師免許取消処分(以下本件処分という。)を受けたため,相手方を被告として,その取消しを求める上記本案事件を提起するとともに,これを本案として,本件処分の効力について,本案事件の判決確定までの停止を求めた事案である。 原決定は,抗告人の本件執行停止申立ては,行政事件訴訟法25条2項所定の重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに該当するとはいえないとして,本件申立てを却下したため,抗告人が不服を申し立てた。
そのほかの事案の概要は,原決定の理由欄の第2 事案の概要に記載のとおりであるから,これをここに引用する。また,本件抗告申立ての理由は,抗告理由書,反論書及び反論書(2)のとおりであるが,要するに,本件においては,抗告人は,本件処分により回復し難い損害を被ることになるから,行政事件訴訟法25条2項所定の重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに該当するものであって,これに該当するとはいえないとして本件申立てを却下した原決定は違法であり,申立ての趣旨記載の執行の停止が認められるべきであるというものと解される。これに対する相手方の意見は,その提出に係る意見書(1)に記載のとおりである。第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,抗告人がした執行停止申立ては,理由がないから却下すべきものと判断する。その理由は,次のとおり付加するほかは,原決定の理由欄の第3 当裁判所の判断に記載のとおりであるから,これをここに引用する。(1) 原決定7頁21行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。 抗告人は,重大な損害が生ずるか否かを判断するに当たって,処分の内容及び性質をも勘案するのは,本件のように,非違行為があったとされた時から約30年もの長きにわたり,地域医療に貢献してきた抗告人に対する処分には当てはまらない旨主張する。 しかしながら,本件処分が本件非違行為から約30数年も経てから行われたことについては,後記(3)のとおり合理的な事情があることに加えて,医師の業務が,国民の健康や安全に直結するものであり,適格性を欠く者がかかる業務に従事することが本来許されない事柄であることは,上記説示のとおりであるので,たとえ抗告人が地域医療に長年にわたり貢献してきたとしても,本件処分が濫用となるものではないというべきである。 したがって,抗告人の上記主張は採用することができない。(2) 原決定8頁15行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。 抗告人は,最低限の衣食住の確保のみでは医師としての資質を維持することはできず,また,抗告人の開設していた産婦人科医院であるAクリニック(本件クリニック)は,主に抗告人個人を信頼する患者により成り立っていたことなどから他の医師で代替できるものではなく,さらに,本件クリニックを一旦完全に閉鎖すると,再開することは実際には新規開設に等しくなることなどから,本案訴訟で勝訴した場合に抗告人が医師としての活動を再開することは困難であるから,抗告人は,本件処分によって,回復し難い損害を被ることになる旨主張する。 しかしながら,上記のとおり,医師免許取消処分である本件処分の効力を停止すべきかどうかを判断するに当たっては,医師の業務内容にかんがみ,処分の内容及び性質をも勘案する必要性があるものであって,本件においては,抗告人主張の上記事実を十分考慮してもなお,本件処分の効力停止を正当化するほどの『重大な損害』の疎明がされているということはできないから,抗告人の上記主張は採用できない。(3) 原決定9頁5行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。 抗告人は,本件非違行為の刑法的評価である傷害罪が不起訴処分になっているから,この事実を斟酌すれば,本件非違行為は『濡れ衣』である可能性が極めて高い旨主張する。 しかしながら,刑事事件について公訴提起をするかどうかという観点から不起訴処分がされたからといって必ずしも直ちに当該事実が存在しなかったということはできない上,本件においては,上記説示のとおり,本件非違行為の存否が争点となった損害賠償請求訴訟である別件訴訟において審理が尽くされ,本件非違行為に相当する事実がある旨の認定がされ,抗告人については一審において,勤務医らについては上告審においてその判断が確定していることに照らし,抗告人の上記主張は採用することができないものといわざるを得ない。 また,抗告人は,本件非違行為から27年ないし31年以上もの長期間が経過した後に医師の資格を失わせるという重大な処分をすることは,処分権の濫用になる旨主張する。 しかしながら,上記のとおり,本件非違行為の存在が確定された別件訴訟は,抗告人については一審において確定していたものの,勤務医らについては,医学鑑定を含む膨大な証拠調べを経た長期間の審理の後に平成16年7月13日にその敗訴が確定したものであり,この間,各患者に対する手術の適応の有無等についての主張立証の応酬がされていたことからすると,相手方が,抗告人に重大な影響を及ぼす本件処分をするかどうかを決定するに当たり,別件訴訟の審理結果をも見極めようとしたことにはそれなりの合理的な事情があったものと考えられること,また,医師免許の取消処分は,国民の健康や安全に直結する医師の業務について適格性を欠く者を排除する重要な意義を有するものであること等に照らし,抗告人の上記主張は採用の限りでない。(4) 原決定9頁10行目末尾に続けて

抗告人は,その他縷々主張するが,いずれも『重大な損害を避けるため緊急の必要』があるとはいえないことについての上記判断を左右する内容のものとはいえない。

を加える。2 よって,抗告人の本件抗告は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり決定する。
平成17年7月15日
東京高等裁判所第20民事部
裁判長裁判官

宮 崎 公 男

裁判官

上 原 裕 之

裁判官

今 泉 秀 和

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