判例検索β > 平成16年(行ウ)第10号
規則変更認証処分取消請求事件
事件番号平成16(行ウ)10
事件名規則変更認証処分取消請求事件
裁判年月日平成17年8月30日
法廷名水戸地方裁判所
判示事項1 宗教法人甲が,自己の被包括宗教法人であった宗教法人乙が当該被包括関係を廃止し,規則を変更したことにつき,知事がした認証処分が,宗教法人法28条1項2号が規定する「その変更の手続が第26条の規定に従つてなされていること」という要件が具備されていないことを看過してされたもので違法であるなどとしてした前記処分の取消請求が,棄却された事例 2 宗教法人「天理教」が,自己の被包括宗教法人であった宗教法人甲が,当該被包括関係を廃止して名称を「天理教水京教会」とする旨規則を変更したことにつき,知事がした認証処分が,宗教法人法28条1項1号が規定する「その変更しようとする事項がこの法律その他の法令の規定に適合」しているとの要件が具備されていないことを看過してされたもので違法であるなどとしてした前記処分の取消請求が,棄却された事例
裁判要旨1 宗教法人甲が,自己の被包括宗教法人であった宗教法人乙が当該被包括関係を廃止し,規則を変更したことにつき,知事がした認証処分が,宗教法人法28条1項2号が規定する「その変更の手続が第26条の規定に従つてなされていること」という要件が具備されていないことを看過してされたもので違法であるなどとしてした前記処分の取消請求につき,同法26条1項前段は,規則変更に関する宗教法人の意思決定手続を経ていることを要求するものであるところ,前記規則変更の手続として,宗教法人乙の前記変更前の規則により要求されている責任役員全員の同意は責任役員個々別々の同意ではなく,各責任役員が議決権を行使した結果としての宗教法人乙の意思であり,個々の責任役員が賛意の表明を撤回するとの意思表示をしたとしても,前記規則変更の意思決定は変更することができないというべきであり,同申請にかかわる事項は同法28条1項2号の要件を具備しているなどとして,前記請求を棄却した事例 2 宗教法人「天理教」の被包括宗教法人であった宗教法人甲が,当該被包括関係を廃止して名称を「天理教水京教会」とする旨規則を変更したことにつき,知事がした認証処分が,宗教法人法28条1項1号が規定する「その変更しようとする事項がこの法律その他の法令に適合」しているとの要件が具備されていないことを看過してされたもので違法であるとしてした前記処分の取消請求につき,同法28条1項1号の趣旨,目的は,宗教法人が設立にあたって同法14条1項2号の要件の具備の審査を経た規則を,設立後に変更することで,法人格を付与される宗教団体としては適切でない程度に不備で法令に違反するような規則をもつ宗教法人の出現を排除することにあると解されるので,当該規則の法令適合性をすべての法令との関係で厳格に審査しなければならないとすると,所轄庁に対し,同法の趣旨,目的を超えた審査を要求することになるとした上,所轄庁には,宗教法人の名称と同一又は類似の名称を他の団体に使用されない利益の侵害の有無のような実質的な審査をする権限も義務もなく,また,不正競争防止法2条1項1号,2号該当を理由として,規則変更について認証しないことは,被包括関係を廃止しようとする宗教法人と包括宗教法人団体との間の対等な競争関係の成立を許さない結果を招来し,同法の趣旨を逸脱するものというべきであり,同申請に係る事項は宗教法人法28条1項1号の要件を具備しているなどとして,前記請求を棄却した事例
裁判日:西暦2005-08-30
情報公開日2017-10-19 20:03:38
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主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は参加費用を含め原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告が平成15年11月12日付総指令第93号で行った宗教法人天理教水京分教会の規則変更認証処分を取り消す。
第2 事案の概要
本件は,原告の被包括宗教法人であった被告訴訟参加人(当時の名称は,天理教水京分教会。以下,単に参加人という。)が,原告との被包括関係を廃止して天理教水京教会と名称を変更し,法人規則(本件規則)をその旨変更したことに関し,原告が,本件規則変更を認証する旨の本件処分をした被告に対し,本件規則変更は,①参加人の責任役員全員の同意,天理教甲府大教会代表役員の同意なしに行われたから,宗教法人法28条1項2号の手続要件に違反し,②参加人が原告との被包括関係廃止後も名称の一部に原告の名称を使用することは,原告の人格権を侵害し,また,不正競争防止法2条1項1号,2号に違反するから,宗教法人法28条1項1号の法令適合性の要件を欠くと主張して,これらを看過してされた本件処分は違法であるとして,その取消を求めた事案である。1 前提事実
(1)当事者
原告は,本件処分時まで参加人を包括していた宗教法人であり,被告は,参加人の所轄庁である。
参加人には,本件当時,3人の責任役員(うち1人は代表役員)がおり,Aが代表役員,BとCが責任役員であった。
(2)本件訴に至る経緯
① 参加人は,平成14年11月14日付で,原告との被包括関係を廃止する旨公告し,原告代表役員に対し,参加人が,同月10日,原告との被包括関係を廃止することを決定した旨通知した。
② 参加人は,平成15年5月6日付で,被告に対し,原告との被包括関係を廃止し,参加人の新しい名称を天理教水京教会とすることなどを内容とする本件規則の変更について認証申請(本件認証申請)をした。
参加人は,本件認証申請に際し,被告に対し,規則の変更の決定について規則で定める手続を経たことを証する書類(宗教法人法27条1号)として,平成14年11月10日付宗教法人天理教水京分教会責任役員会議録(甲第5号証。本件会議録)を提出した。
本件会議録の記載内容は,別紙写のとおりであり,代表役員A,責任役員B,同Cがそれぞれ署名,押印している。
③ 本件認証申請に先立ち,BとC(以下,2人を総称してBらともいう。)は,それぞれ平成15年1月24日付で,被告に対し,被包括関係廃止について十分な知識や認識がないまま本件会議録に印鑑を押したが,十分な説明を受けていたなら絶対に印鑑は押さなかった,規則変更の書類が提出されても受理しないよう求める旨記載した上申書(甲第6号証の1,2。以下,本件上申書という。)を提出した。また,同日,Bらは,連名で,Aに対し,もし被包括関係廃止について十分な説明を受け,内容を理解できていたなら,本件会議録には印鑑を押さなかったとして,規則変更認証申請書類を提出しないよう求める申入書を内容証明郵便(甲第7号証)で送付した。
④ また,原告は,被告に対し,原告訴訟代理人名の平成15年6月19日付申入書(甲第28号証)により,参加人から原告との被包括関係廃止にかかる規則変更認証申請が提出されることが予想されるが,変更後の本件規則における法人の名称の全部又は一部に天理教又は天理その他天理教と類似の表示が使用されている場合は,当該規則の変更を認証することができない旨の決定をするよう求めた。
⑤ 被告は,平成15年11月12日,本件処分をした。⑥ 原告は,平成16年1月8日,文部科学大臣に対し,本件処分の取消を求めて審査請求をしたが,同年4月27日,上記審査請求が棄却されたため,同年7月22日,本件訴を提起した。
(3)変更前の本件規則(本件旧規則)28条1項の定め
変更前の本件規則(本件旧規則)28条1項には,

この規則を変更しようとするときは,責任役員全員及び天理教甲府大教会代表役員の同意を得て,天理教代表役員の承認及び茨城県知事の認証を受けなければならない。

と規定されている。 なお,参加人は,本件規則の変更に際し,天理教甲府大教会代表役員の同意を得
ていない。
(4)宗教法人法の定め
① 宗教法人法26条1項前段は,宗教法人は,規則を変更しようとするときは,規則で定めるところによりその変更のための手続をし,その規則の変更について所轄庁の認証を受けなければならないとし,同項後段は,この場合において,宗教法人が当該宗教法人を包括する宗教団体との関係を廃止しようとするときは,当該関係の廃止に係る規則の変更に関し当該宗教法人の規則中に当該宗教法人を包括する宗教団体が一定の権限を有する旨の定めがある場合でも,その権限に関する規則の規定によることを要しないと定めている。
② 宗教法人法27条は,宗教法人が被包括関係の廃止に係る規則変更の認証を受けようとするときは,認証申請書及び変更しようとする事項を示す書類2通に次の各号の書類を添えて,これを所轄庁に提出し,認証を申請しなければならないと定めている。1号 規則の変更の決定について規則で定める手続を経たことを証する書類3号 宗教法人法26条2項の公告及び同条3項の通知をしたことを証する書類③ 宗教法人法28条1項は,所轄庁は,上記認証申請を受理した場合,次の各号の要件を備えているかどうかを審査し,同法14条1項の規定に準じ,当該規則の変更の認証に関する決定をしなければならないと定めている。
1号 変更しようとする事項が宗教法人法その他の法令に適合していること2号 変更手続が宗教法人法26条の規定に従ってされていること④ 宗教法人法28条1項が準ずべきものとする同法14条1項は,宗教法人設立に必要な同法12条所定の規則についての所轄庁による認証に関する規定であり,所轄庁は,同法13条の規定による認証申請に係る事案について,次の各号の要件を備えているかどうかを審査し,これらの要件を備えていると認めたときは当該規則を認証する旨の決定をし,これらの要件を備えていないと認めたとき又は受理した規則及びその添付書類の記載によってはこれらの要件を備えているかどうかを確認することができないときは,当該規則を認証することができない旨の決定をしなければならないと定めている。1号 当該団体が宗教法人であること
2号 当該規則が宗教法人法その他の法令の規定に適合していること3号 当該設立の手続が同法12条の規定に従ってされていること⑤ 宗教法人法14条に基づく審査資料について,同法13条は,当該申請に添付すべき書類として,次のものをあげている。
1号 当該団体が宗教法人であることを証する書類
2号 同法12条3項の規定による公告をしたことを証する書類
3号 認証の申請人が当該団体を代表することを証する書類
4号 代表役員及び定数の過半数に当たる責任役員に就任を予定されている者の受諾書
2 当事者の主張
(1)原告の主張
① 本件旧規則28条1項の手続要件の欠缺
本件旧規則28条1項が,参加人の規則を変更するときは,責任役員全員及び天理教甲府大教会代表役員の同意を得ることが必要であると定めているにもかかわらず,本件規則変更は,これらの同意なくされたから,宗教法人法26条1項前段のいう規則である本件旧規則28条1項が定める変更のための手続の要件を満たしておらず,宗教法人法28条1項2号の要件を欠く。これを看過してされた本件処分は違法である。a 責任役員中2人の同意の欠缺
(a)B,Cは,本件規則変更に同意していない。
Bらは,平成14年11月10日,参加人の当時教会長であったAから,本件会議録に印鑑を押すように依頼された。Aは,その際,Bらに対し,本件会議録について,自分が会長を辞めるために必要な書類であるなどと述べ,原告との被包括関係を廃止することについては一切説明しなかった。Bらは,従前,Aから,繰り返し,会長を辞めたいとの申出を受けており,同様の申出にうんざりしていたことから,軽い気持ちで本件会議録に印鑑を押してしまったのであり,仮に,被包括関係廃止について十分な説明を受け,内容を理解することができていたなら,本件会議録に印鑑を押すことはなかった。したがって,本件会議録は,責任役員全員の同意を得たことを証する書面としての効力を有しないというべきである。
(b)仮に,Bらが,本件会議録に押印したことにより本件規則変更に同意したと認められるとしても,Bらは,本件規則変更の認証申請前に,上記同意を撤回したから,本件処分当時,本件規則変更についての責任役員全員の同意は欠けていたというべきである。
Bらは,平成15年1月24日付で,Aに対し,前提事実記載の申入書(甲第7号証)により,規則変更認証申請書類を提出しないよう求め,なお,同日付で,被告に対し,前提事実記載の上申書(甲第6号証の1,2)により,規則変更の書類が提出されても受理しないよう求めた。したがって,Bらは,本件規則変更の認証申請前に,上記同意を撤回したというべきである。本件旧規則28条1項は,参加人の規則を変更するときは,責任役員全員の同意を得ることを要すると定めているのであり,責任役員中2人が上記同意を撤回した以上,本件処分当時は,責任役員全員の同意はない状態にあったというべきである。 被告は,先に行われた責任役員会の決定を撤回するためには,責任役員会でその旨議決する必要があると主張するが,まず,宗教法人法12条1項6号,18条4項は,責任役員会を宗教法人の必置機関とせず,責任役員会を宗教法人の意思決定機関として位置づける場合には,その旨規則に明定することを要求しているのであり,本件旧規則には,責任役員会に関する規定はなかったから,天理教水京分教会には責任役員会はなかったというべきである。また,責任役員全員の同意とは,個々の責任役員について,全員の同意があることを意味するから,各責任役員が単独で上記同意を撤回し得るというべきであり,責任役員全員で議決等する必要はないというべきである。
b 天理教甲府大教会代表役員の同意の欠缺
本件規則変更について天理教甲府大教会代表役員の同意がない以上,本件旧規則28条1項の要件を欠くというべきである。
被告は,宗教法人法26条1項後段を理由として,上記代表役員の同意が不要であると主張するが,同条項が定めるのは,当該宗教法人を包括する宗教団体の権限を排斥することにすぎず,天理教甲府大教会は,原告とは別個の法人格を有する宗教法人であって,当該宗教法人を包括する宗教団体には該当しないから,天理教甲府大教会代表役員の同意を要することは,宗教法人法26条1項後段に抵触しない。② 本件規則変更の法令適合性の欠缺
本件規則変更により変更しようとする事項には,参加人が,原告との被包括関係廃止後も,名称の一部に原告の名称を使用することが含まれている。しかし,参加人が原告との被包括関係廃止後もその名称の一部に原告の名称を使用することは,原告の人格権を侵害し,また,不正競争防止法に違反するから,変更しようとする事項が法令に適合しない違法なものであり,宗教法人法28条1項1号の要件を欠く。これを看過してされた本件処分は違法である。
a 人格権侵害
ある宗教団体が多年にわたって特定の名称を使用し,その名称が直ちに当該宗教団体を指すものとして社会一般に広く認識されている場合に,新しい宗教団体がその名称と同一又は類似の名称を使用して宗教活動を行うことは,宗教活動の相手方に誤認,混同を生じさせ,従前から当該名称を使用してきた宗教団体の宗教活動の妨害となるほか,同宗教団体の信者にも精神的苦痛を与えるから,宗教団体の名称権は,宗教的結社の自由を保障した憲法20条1項の趣旨からしても,強い法的保護に値する権利というべきである。
天理教という名称は,世界的に著名であり,これまでに唯一の例外を除けば,過去に天理教から分派,離脱した宗教団体を含めて,原告やその関係者が名称使用を許諾する団体以外の者が当該名称を使用している例はないから,天理教の名称は,原告及びその包括下にある教会の呼称として定着した名称であることは明らかであって,当該名称は法律上の保護に値するというべきである。
本件規則変更後の参加人の名称である,天理教水京教会は,一般人はもとより,天理教関係者であっても,天理教の一般教会と識別することができない。参加人は,本件規則を変更することにより,天理教の教義を否定し,信仰の対象を変更したのであるから,参加人が天理教という名称を使用することには相当性がない。参加人が天理教水京教会との名称を使用すれば,天理教の教義を広める原告及びその被包括法人の活動が妨害されるおそれが高い一方,参加人に天理教の名称を認めないとしても,特段の不利益が生じるとは考えられない。
したがって,参加人が天理教水京教会という名称を用いることは,原告の人格権に対する重大な侵害となり,違法というべきである。
b 不正競争防止法違反
不正競争防止法は,不正競争によって営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがある者に差止請求権を認めている。ここでいう営業とは,事業者間の公正な競争を確保するという法目的に照らして広く解すべきであり,宗教法人の宗教活動も同法の営業に含まれると解すべきである。そして,参加人が原告との被包括関係を廃止した後も,その名称の一部に原告の名称を使用することは,同法2条1項1,2号の差止要件を満
たすというべきである。
したがって,参加人が天理教水京教会という名称を用いることは,不正競争防止法に違反し,違法というべきである。
(2)被告の主張
① 宗教法人法26条1項が要求する規則変更の手続要件の具備 本件規則変更は,責任役員全員の同意があり,また,天理教甲府大教会代表役員の同意は不要であるから,宗教法人法26条1項が定める手続要件を具備しており,宗教法人法28条1項2号の要件に欠けるところはない。よって,本件処分は適法である。a 責任役員全員の同意の存在
(a)宗教法人法26条1項前段が,宗教法人は,規則を変更しようとするときは,規則で定めるところによりその変更のための手続をしなければならないと定めているのは,規則変更に関する宗教法人の意思決定手続を経ていることを要求するものであり,同法27条が,規則の変更の決定について規則で定める手続を経たことを証する書類(同条1号)の添付を義務づけているのは,所轄庁において,上記意思決定がされていることを審査する資料を定めているものと解される。そして,天理教水京分教会における規則で定める手続である本件旧規則28条1項が,この規則を変更しようとするときは,責任役員全員・・・の同意を得なければならないと定めているのは,規則を変更するには,各責任役員が議決権を行使し,その結果,全員が当該規則変更に賛意(同意)を表すれば,宗教法人の意思として,当該規則変更が決定されるという手続を定めるものであることが明らかである。(b)本件認証申請に際し,規則の変更の決定について規則で定める手続を経たことを証する書類として提出された本件会議録によれば,水京分教会が本件規則変更につき,責任役員会なる会議体において,各責任役員が議決権を行使し,その結果,全員の責任役員が原告との被包括関係の廃止と本件規則変更に賛意(同意)を表し,水京分教会の意思として,本件規則変更を行うことを決定したことが明らかである。したがって,上記資料により,本件規則変更が宗教法人法26条の規定に従ってされていることが証明されており,本件規則変更は,同法28条1項2号の要件を満たしている。 なお,原告は,Bらが本件会議録の内容を理解しないまま署名,押印したと主張し,本件会議録の成立を否認するが,本件会議録の内容が原告との被包括関係の廃止に関するものであることは一見して明らかであり,Bらは,宗教法人の責任役員の立場にあったのであるから,書面の内容も確認せず,理解できないまま署名押印するなどということはあり得ないことである。
(c)以上のとおり,水京分教会の意思として,本件規則変更が決定された以上,個々の責任役員が,先に議決権行使として行った賛意の表明(同意)を撤回するとの意思表示をしたからといって,本件規則変更の意思決定を変更することはできず,水京分教会が本件規則変更を行わないとする場合には,改めて,その旨の意思決定をする必要がある。したがって,原告主張の申入書等の存在は,本件認証申請の審査対象である本件規則変更の決定について水京分教会の規則で定める手続を経たことに対して何ら影響を及ぼすものでない。
(d)なお,被告が,水京分教会において,改めて,本件認証申請を撤回する旨の決定がされたかどうかついて,添付資料等に基づく形式的審査を超えて,実質的審査をすることは,宗教法人内部の紛争や被包括関係廃止に至った事情等について立ち入って審査することになり,所轄庁が宗教法人の意思決定という内部問題に干渉し,宗教団体の宗教活動の自由等を侵害する事態を招くおそれがあるから,許されない。b 天理教甲府大教会代表役員の同意の要否
本件旧規則28条1項は,本件規則の変更について,天理教甲府大教会責任役員の同意を要件としている。しかし,天理教甲府大教会等の原告が包括する一般教会が宗教法人になろうとするときは,原告の代表役員の承認を受けなければならず(宗教法人天理教規則36条),また,一般教会の代表役員は,原告の代表役員によって任命されるとされていることからすれば(同規則40条),天理教甲府大教会は,原告の意思によって極めて強い影響を受ける団体であるといえるから,本件規則の変更について天理教甲府大教会代表役員の同意を要件とすることは,宗教法人法26条1項後段に該当するというべきであり,したがって,本件規則変更につき天理教甲府大教会責任役員の同意は不要である。② 本件規則の法令適合性
所轄庁の行う規則変更の認証は,宗教法人の申請する規則が法定の要件を満たしているとの判断を表示するものであるが,宗教法人法の定めや関係規定の制度趣旨からすれば,所轄庁の審査義務の範囲は,受理した規則及び添付書類に基づく形式的審査の範囲にとどまるものと解すべきである。
すなわち,宗教法人の設立に関して,宗教法人法14条1項の規定が設けられた
のは,宗教法人が法人格を取得するにあたり,所轄庁が審査に名を借りて,宗教団体の宗教活動又は宗教上の結社の自由に干渉したり,これを侵害することがあってはならないため,所轄庁の書面審査に基づく規則の認証によって宗教法人が設立されるべきものとしたと解することができる。そして,同法28条1項が,規則変更の認証に関して同法14条1項の規定に準じて決定しなければならないとしている趣旨は,規則の変更についても,宗教法人の設立の場合と同様,法人から提出された申請書及び添付書類等の資料に基づいて審査すれば足り,それ以上に,規則変更の理由やその無効事由といった実質的事項についてまでの審査をする義務はないとの制度を採ったものというべきである。また,同法28条1項1号は,規則変更の認証の要件の一つとして,変更しようとする事項が宗教法人法その他の法令の規定に適合していることを挙げているが,その趣旨は,甚だしく不備で法令に違反するような規則を有する宗教法人を排除することにある。そして,法令違反の疑いがあるにすぎない場合であっても,同号所定の要件を具備していないとして当該規則の変更認証を拒否することは,所轄庁が審査の名を借り,宗教団体の宗教活動又は宗教上の結社の自由に干渉したり,これを侵害するという事態を招くおそれがあるし,当該規則の法適合性を極めて厳格に審査しなければならないとすることは,所轄庁にあらゆる法令の調査や解釈を要求するものであり,不可能を強いるものである。
したがって,所轄庁は,宗教法人法28条1項1号所定の要件に関して,当該規則に一義的に明白な法令違反があるか否かを書面審査すれば足りるというべきである。 本件規則の変更は,原告との被包括関係廃止後の名称を天理教水京教会とするというものであるが,宗教法人法上,他の宗教法人と同一又は類似の名称を使用することを禁止する規定はなく,このような名称使用が一義的に明白な法令違反があるということはできない。したがって,本件規則の変更には,一義的に明白な法令違反はないから,宗教法人法28条1項1号の要件を具備するとした被告の判断に誤りはない。(3)被告訴訟参加人の主張
① 責任役員全員の同意の存在
B,Cは,本件規則の変更について内容を理解した上で同意したものであり,その後,上級の会長に責められてやむなく申入書等に署名押印したにすぎない。② 天理教甲府大教会代表役員の同意の要否
原告は,これまで被包括団体の離脱に関して,大教会代表役員の同意がないことを理由にして裁判で争ったことはなく,各所轄庁の認証も,大教会代表役員の同意なしで行われてきた。
包括団体としての天理教という宗教団体は,単位団体としての教会(大教会,分教会等)を包括し,構成要素として内包しており,構成要素としての単位団体である教会は,包括団体としての天理教の部分を構成している。特に,大教会は,教団本部の直属教会として教団組織にとってなくてはならない存在であり,教団組織の重要な一部を構成している。本部直属の大教会は,分教会を本末関係によって支配,統制し,監護する関係にあるのである。したがって,天理教における大教会は,宗教法人法26条1項にいう包括する宗教団体の組織そのものにほかならず,被包括関係の廃止について大教会代表役員の同意は不要というべきである。
第3 当裁判所の判断
1 被告の審査権及び審査義務の範囲について
(1)前提事実記載のとおり,宗教法人法28条1項は,所轄庁は,規則変更の認証申請を受理した場合,同項1号,2号の要件を備えているかどうかを審査し,同法14条1項の規定に準じ,当該規則の変更の認証に関する決定をしなければならないと定めており,ここで準ずるとされている同法14条1項は,宗教法人設立に必要な同法12条所定の規則についての所轄庁による認証に関し,所轄庁は,同法13条の規定による認証申請に係る事案について,同法14条1号ないし3号の要件を備えているかどうかを審査し,これらの要件を備えていると認めたときは当該規則を認証する旨の決定をし,これらの要件を備えていないと認めたとき又は受理した規則及びその添付書類の記載によってはこれらの要件を備えているかどうかを確認することができないときは,当該規則を認証することができない旨の決定をしなければならないと定め,同法13条は,上記添付書類を定めている。(2)宗教法人の設立について,宗教法人法12条ないし14条が上記のように規定した趣旨は,憲法上保障される宗教活動の自由及び宗教上の結社の自由に鑑み,宗教法人が法人格を取得するにあたり,所轄庁が審査に藉口して宗教団体の宗教活動又は宗教上の結社の自由に干渉したり,これを侵害するようなことがあってはならないことから,公権力の関与を極力抑制し,所轄庁の書面審査による規則の認証の限度にとどめようとするところにあると解される。したがって,当該申請を受理した所轄庁は,受理した規則や添付書類の記載によって,当該申請に係る事案が同法14条1項各号所定の要件を具備しているかどうかに
ついて審査する権限を有するにとどまり,これを超えて立ち入った実質的審査を行う権限は有しないし,また,その義務もないと解するのが相当である。
(3)宗教法人法14条1項に準ずるとされる同法28条に基づく規則変更の認証における審査権限及び審査義務の範囲も,上記と同趣旨に解すべきであり,所轄庁は,受理した規則や同法27条に定める添付書類の記載によって,当該申請に係る事案が同法28条1項各号所定の要件を具備しているかどうかを審査する権限及び義務を有するにとどまると解するのが相当であり,上記添付書類が証する事実それ自体が真実でないことを合理的に疑うべき事情や上記添付書類の成立自体の真正を合理的に疑うべき事情等が認められない限り,所轄庁は,上記限度を超えた実質的審査を行うことはできず,また,その義務もないというべきである。
(4)以下,上記見地から,本件規則変更が宗教法人法28条1項各号の要件を具備しているかどうか,ひいては本件処分に審査義務違反が認められるかどうかについて検討する。
2 宗教法人法28条1項2号の要件該当性及びその審査について(1)責任役員全員の同意の有無について
① 宗教法人法18条1項は,宗教法人には,3人以上の責任役員を置き,そのうち1人を代表役員とすると定め,同条4項は,責任役員は,規則で定めるところにより,宗教法人の事務を決定すると定め,同法19条は,規則に別段の定めがなければ,宗教法人の事務は,責任役員の定数の過半数で決し,その責任役員の議決権は,各々平等とすると定めている。これらの規定は,責任役員を宗教法人の事務に関する最高意思決定機関とすることを定めるものであり,事務に関する意思決定について,責任役員は,議決権行使の形で関与するものである。そしてまた,責任役員の議決が予定されているところからみて,責任役員が一堂に会して,お互いに自由に意見を述べあい,意見を調整して,最終的な宗教法人としての意思を決定することが宗教法人法の予定するところであるということができる。したがって,責任役員会を置くかどうかに関わりなく,責任役員は,宗教法人の議決機関の権能と職責を有するというべきである。
② 宗教法人法26条1項前段が,宗教法人は,規則を変更しようとするときは,規則で定めるところによりその変更のための手続をしなければならないと定めているのは,規則変更に関する宗教法人の意思決定手続を経ていることを要求するものであり,同法27条が,規則の変更の決定について規則で定める手続を経たことを証する書類(同条1号)の添付を義務づけているのは,所轄庁が,上記意思決定がされていることを確認,審査するための資料として,上記書類を定めているものと解される。
③ 宗教法人法の前記各規定の趣旨に照らすと,天理教水京分教会の規則変更手続について,規則で定める手続である本件旧規則28条1項が,この規則を変更しようとするときは,責任役員全員・・・の同意を得なければならないと定めているのは,宗教法人法19条にいうところの別段の定めを定めたものであり,天理教水京分教会の規則を変更するには,各責任役員が議決権を行使し,その結果,全員が当該規則変更に賛意(同意)を表することにより,同教会の宗教法人としての意思として,当該規則変更が決定されるという手続を定めるものと解するのが相当であり,これと別個に,責任役員の個々別々の同意が必要であるとする趣旨ではないと解される。
④ 本件認証申請に際し,参加人が被告に提出した規則の変更の決定について規則で定める手続を経たことを証する書類としての本件会議録(甲第5号証)によれば,本件規則変更につき,水京分教会の責任役員全員が議決権を行使し,責任役員全員が原告との被包括関係の廃止と本件規則変更に賛意(同意)を表し,水京分教会の意思として,本件規則変更を行うことを決定したことが文面上明らかである。原告は,Bらが本件会議録の内容を理解しないまま署名,押印したと主張し,本件会議録の成立を否認するが,当時,原告が被告に提出した本件上申書には,Bらが,責任役員でありながら,宗教法人の根本に関わる被包括関係について,十分な知識や認識がないまま本件会議録に印鑑を押したとか,十分な説明を受けていたなら絶対に印鑑は押さなかったなどと記載されているにすぎず,本件上申書の記載は,これを受け取った被告において,本件会議録の成立自体の真正を疑うべき事情を述べるものということはできないのであり,むしろ,被包括関係廃止に係る本件認証申請を巡る原告と参加人との間の紛争を窺わせる内容となっている。したがって,本件規則変更の認証の所轄庁である被告が,Bらが,本件会議録作成当時,あるいは本件認証申請当時,真実,原告との被包括関係を廃止したいとする意思を有していたかどうかについて実質的に審査することは,抑制的であるべき所轄庁の審査範囲を逸脱するものであり,また,本件上申書の提出により,参加人の意思決定手続に瑕疵があるものとして,添付書面の記載上,宗教法人法28条1項各号所定の要件を具備しているかどうか確認することができないとして,本件規則変更について,認証することができない旨の決定を
することは,包括,被包括の関係を有する宗教法人相互の関係について,一方に偏する結果を招来しないとも限らないのであり,被告に認められた権限を超える結果となるおそれがある。したがって,被告が,本件上申書の提出にもかかわらず,本件処分をしたことは,宗教法人法の前記趣旨に適合したものというべきである。
⑤ 原告は,本件旧規則28条1項が定める責任役員全員の同意の意味を責任役員の個々別々の同意の趣旨に解した上で,後にこれを撤回したから,本件処分当時は,参加人の責任役員3人のうちの2人の同意が欠けるに至っていたと主張するが,責任役員全員の同意の意味は,前示のとおりであって,水京分教会の意思として,本件規則変更が決定された以上,個々の責任役員が,先に議決権行使として行った賛意(同意)の表明を撤回するとの意思表示をしたからといって,本件規則変更の意思決定を変更することはできず,水京分教会が本件規則変更を行わないとする場合には,改めて,水京分教会としてその旨の意思決定をする必要があるというべきであり,したがって,原告主張の申入書等の存在は,本件認証申請の審査対象である本件規則変更の決定について水京分教会の規則で定める手続を経たことに対して何ら影響を及ぼすものでない。(2)天理教甲府大教会代表役員の同意の要否について
原告は,本件規則変更について,天理教甲府大教会代表役員の同意がないから,上記同意を得なければならない旨規定する本件旧規則28条1項の要件を満たしておらず,宗教法人法28条1項2号の要件を欠くと主張するが,甲第29号証(宗教法人天理教甲府大教會規則)によれば,同規則には,原告の教規,規則中,天理教甲府大教会に関係がある事項に関する規定は,同教会についてもその効力を有すること(32条),同教会の代表役員には,原告の教規,規程により,同教会の教会長に就任した者をあてること(7条1項),同代表役員が辞任しようとするときは,原告の代表役員の承認を得なければならないこと(同2項),同教会が規則を変更したり,合併,解散をする際にも原告の代表役員の承認を受けなければならないこと(29条,30条)が定められていることが認められる。これらの規定に照らせば,原告が,天理教甲府大教会やその代表役員に対して,極めて強い支配力,影響力を有していることは明らかである。
宗教法人法26条1項後段は,被包括関係の廃止が,信教の自由の原則に内在する宗教上の結社の自由及びその活動の自由に関わる事柄であることから,これに関する当該宗教法人の意思を包括宗教団体が拘束すべきでないとする趣旨に出たものであり,その趣旨に照らせば,原告と前記関係にある天理教甲府大教会代表役員の同意を必要とする本件旧規則28条は,宗教法人法26条1項後段が定める当該宗教法人を包括する宗教団体が一定の権限を有する旨の定に該当し,本件規則変更について,天理教甲府大教会代表役員の同意を得ることは要しないというべきである。
(3)以上のとおりであるから,本件規則変更は,宗教法人法28条1項2号の要件を具備しており,被告が本件処分をしたことに審査義務違反はないというべきである。3 宗教法人法28条1項1号の要件該当性及びその審査について(1)そもそも,宗教法人法28条1項1号は,規則変更の認証要件の一つとして,その変更しようとしている事項が宗教法人法その他の法令の規定に適合していることをあげているが,その趣旨,目的は,宗教法人が,設立にあたって,同法14条1項2号の要件の具備の審査を経て規則の認証を受けながら,設立後に規則を変更することにより,法人格を付与される宗教団体としては適切でない程度に不備で法令に違反するような規則をもつことになるのを防止し,上記のような規則をもつ宗教法人が出現するのを排除することにあると解される。仮に,所轄庁が,当該規則の法令適合性をすべての法令との関係で厳格に審査しなければならないと仮定すると,所轄庁に対し,あらゆる法令の調査や解釈を要求する不可能を強いることになるのみならず,規則変更の認証申請について法令適合性を要件とし,所轄庁にその審査を要求した趣旨,目的が前記のとおりであることからすると,所轄庁に対し,法の趣旨,目的を超えた審査を要求することになってしまうのであり,また,法令違反の疑いがあるというだけで,同法28条1項1号所定の要件を具備していないとして,その規則の変更の認証を拒否することは,所轄庁が審査に藉口して宗教団体の宗教活動又は宗教上の結社の自由に干渉したり,これを侵害する事態を招くおそれがあるのであって,制度の根本趣旨に反することになる。
(2)原告は,参加人が原告との被包括関係廃止後もその名称の一部に原告の名称を使用することは,原告の人格権を侵害し,不正競争防止法2条1項1号,2号に該当する違法なものであるから,本件処分は,宗教法人法28条1項1号の要件を備えない規則の変更を認証したものとして違法であると主張する。
しかし,まず,人格権侵害との主張について検討するに,宗教団体(原告)の名称と同一又は類似の名称を他の団体に使用されない利益が法的に保護される場合があること自体は認められるけれども,宗教団体の名称は,教義,宗教上の理念,信条を端的に表現
するものとして,それらと深く関わるものであるから,当該名称を使用しようとすることが,上記利益を侵害するものであるかどうかを判断するには,立ち入った実質的審査が必要になることが明らかであり,所轄庁にこのような実質的審査権がないこと,したがって,審査義務もないことは前示のとおりである。また,仮に,被包括関係廃止にかかる規則変更の認証申請を受けた所轄庁が,宗教法人法28条1項1号の要件を審査するに際して,実質的審査をすることなく,包括宗教法人がその名称について有する利益を考慮して,申請者の名称中に包括関係にあった宗教法人の名称が含まれることを理由として,被包括関係の廃止を含む規則変更申請について認証しないことは,一方に偏した扱いとして,申請者の信教の自由,宗教上の結社の自由に甚大な影響を及ぼすものであって許されないというべきである。 また,不正競争防止法違反との主張についてみるに,原告が援用する同法2条1項1号,2号は,対等な営業者間の競争が存在することを前提として,その中の不公正な競争のあり方を規制することを目的とした規定であり,被包括関係を廃止するために宗教法人の規則を変更しようとする宗教法人から規則変更の認証申請を受けた所轄庁が,規則の変更について,宗教法人法28条1項1号所定の要件を審査するにあたって,不正競争防止法2条1項1号,2号該当を理由として,規則変更について認証しないことは,被包括関係を廃止しようとする宗教法人と包括宗教法人団体との対等な競争関係の成立を許さない結果を招来することになるのであり,対等な営業者間の競争が存在することを前提とする不正競争防止法が予定した以上の効果を生ずることになるから,法の趣旨を逸脱するものというべきである。
(3)以上のとおりであるから,本件規則変更は,宗教法人法28条1項1号の要件を具備しており,被告が本件処分をしたことに審査義務違反はないというべきである。 水戸地方裁判所民事第2部












裁判長裁判官

松 本 光一郎

裁判官 上 原 卓 也
裁判官 岸 野 康 隆

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