取り消す
判示要旨:本件は、被控訴人が控訴人に対し、被控訴人の配偶者は、①過重業務が原因で免疫力が低下し、その結果劇症型心筋炎を発症し、死亡した、②そうでなくとも、被控訴人の配偶者が過重業務により治療機会を喪失したために劇症型心筋炎を発症し、死亡したと主張して、業務起因性を認めずに療養補償給付等を不支給とした労働基準監督署長の決定の取消しを求めた事案につき、①については、過重業務による免疫力の低下が心筋炎を発症させるウイルス感染を生じさせた事情の一つとなった可能性は否定できないが、その他の事実を総合すると、被控訴人の配偶者の免疫力が低下していたものとまでは認め難いし、その上、過重業務によりウイルス性心筋炎を発症し劇症化するとの経験則が存在するとも認めることもできないから、業務起因性が認められるとする主張は採用できないとし、②についても、そもそも治療機会を喪失したとは認められないし、より早い時期に治療が開始されたとしても、劇症型心筋炎の発症を防ぎ得たと認めることはできないから、業務起因性が認められるとする主張は採用できないとして、業務起因性を認めて上記労働基準監督署長の不支給決定を取り消した原審判決を取り消した事案である。